インドでの金の引き合いの強さ

ワールド・ゴールド・カウンシルから7－9月期の金の需給統計が本日午後2時に発表された。この時間は冬時間の米国東部時間の午前0時。世界一率で13日発表。

全体の需要は前年同期比で2％の減少の929.3トン。昨年は価格の急落を受けて4－6月期の実需買いが記録的な盛り上がりを見せたが、7－9月はやや下火になった経緯がある。その3ヵ月との比較で2％減ということに。

目を引いたのはインドの復活。昨年は経常収支の赤字を減らすために、貿易赤字を減らすことになり、原油に次いで金額ベースで2番目に多い「金」に目がつけられたのは、当欄を読んでいただいている皆さんならば知られた話だろう。輸入を抑えるために輸入関税が10％まで引き上げられた。それでも足らずインド中銀は7月になり「20：80ルール」として知られる輸入した金の20％は再輸出に回し、その証明が得られないと次の輸入は認めないという規制を追加した。さすがにこれは効いてインドへの輸入は9月は5トンにまで激減してしまった。現実には、密輸が増えたと見られるのだが。

いずれにしても、昨年7－9月期のインドの需要はそういった環境の中で161.6トンとなっていた（これでも多いけど・・）。で、今年は225.1トンで39％の増加となった。対して中国は182.7トンで前年の291.2トンから37％の減少となった。先週のラジオNikkei「マーケット・トレンド」では中国の買いは落ちているが、インドは買っているとしたが、それは現時点での話。7－9月期でインドは買っていたという実態が数字で示されたわけだ。インドの人々は行事の上でも金が必要なのです。正規輸入は（20：80ルールを考慮した）ネットでも毎月50トン程度まで復活しているとされる。インドの金需要は、腰が据わっているわけだ。


以下、市況

「金は方向感のない中で反落（ユーロ圏金融政策を巡る温度差）」

11月12日のＮＹ市場の金価格は方向感のない中で反落となった。米国関連で主な経済指標の発表がない中で、引き続きドル相場の強弱に影響される価格展開が続いている。ＮＹコメックスの通常取引は前日比3.90ドル安い1159.10ドルで終了した。

12日の金市場はＮＹ時間外のアジアの中盤さらにＮＹの通常取引開始後の2度、1170ドルに接近する局面が見られたものの基本的には1160～1165ドルの範囲内での取引となった。ウクライナ東部に再びロシア軍部隊が侵入したとの報道もあり、地政学的要因が意識されたもののレンジ内での取引に始終。通常取引の終了時に売り物に押され小幅反落となった。

このところ原油が下げ基調を続けているが、12日はサウジアラビアの先月の産油量の減少と伝えられたものの価格の下支えとはならなかった。ＷＴＩ原油は1バレル＝77.18ドルと、2011年10月以来の安値で取引を終了。指標となっているブレント原油も1バレル＝80.38ドルと、2010年9月以来の安値で終了している。一時は4年ぶりとなる80ドル割れも見ている。

12日は、　米エネルギー情報局（EIA）が月次の短期エネルギー見通しを発表。2015年の原油価格の予想を下方修正した。それによるとＷＴＩ原油は従来の1バレル＝94.58ドルから77.75ドルに引き下げ、ブレントも101.67ドルから83.42ドルに下方修正した。需要不足でデフレ傾向の強い経済環境を予見させるような内容に、金市場でも買い気が盛り上がり難い。

デフレ傾向といえば、12日はイングランド銀行（英中央銀行）が英国の成長率とインフレ見通しを下方修正して注目を集めた。また欧州中央銀行（ＥＣＢ）のドラギ総裁がローマで開かれた会合で、「中期インフレ期待が悪化した場合、もしくはこれまでに決定された措置が十分でないことが明らかになった場合、ＥＣＢは追加的な非標準的措置を実施する」と発言。ただし、金融政策の限界にも触れ、銀行による融資拡大や政府による構造改革の必要性を指摘している。

一方で、同じ日、ドイツ連邦準備銀行総裁でもあるECBのバイトマン理事は、ECBが大規模な国債買い入れに踏み切るとの観測を否定する発言を行い、ＥＣＢ内での温度差を感じさせた。ユーロ圏での今後の金融政策を巡る不透明要因は、この辺りの意見相違にある。（亀井幸一郎　2014年11月13日記）