亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

ドル指数約3カ月ぶりの安値、金は反発

2020年06月05日 14時37分57秒 | 金市場
6月4日のNY市場の金価格は反発となった。欧州中央銀行(ECB)がこの日の理事会で政策金利を据え置く一方、債券購入プログラムの規模を予想以上に拡大したほか、買い入れ期間も延長したことを受け、ユーロが対ドルで約3カ月ぶりの高値を更新。これを受け主要6通貨で構成されるドル指数(DXY)が、同じく約3カ月ぶりの安値となる96ポイント台まで下落する中で金は買われた。またこの日は、前日まで連騰状態にあった株式市場が一服状態になったことも金市場をサポートした。NYコメックスの通常取引は前日比22.60ドル高の1727.40ドルで取引を終了した。

ECBは新型コロナ対策の緊急債券購入策の「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」の買い入れ規模を6000億ユーロ増額するとした。3月に7500憶ユーロ規模で導入され、4月から各国の国債の買い入れによる資金供給を続けてきた。今回の理事会を前に市場では5000憶ユーロの拡大が織り込まれ、域内景気の押し上げ期待からドイツ株を始め欧州株全般の上昇が目立っていた。結果は予想を1000憶ユーロ上回る増額で、これで1兆3500億ユーロとなる。あわせて2020年末としてきた買い入れ期間を6カ月延ばし2021年6月までとした。

理事会後の記者会見でラガルドECB総裁は、新型コロナウイルス感染拡大の抑制策が取られた結果、経済活動は急激に減速し、ユーロ圏経済は前代未聞の縮小に見舞われているとした。インフレ見通しと物価安定目標を踏まえ、行動しなくてはならないことで意見が一致しており、政策決定は全会一致とした。緊縮財政を基調にやってきたドイツの方針転換が、欧州の流れを変えそうな印象が強い。この日まで対ドルで7営業日連続で上昇してきたユーロはさらに買われ一時1.1362ドルと3月11日以来の高値を更新し8連騰に。

一方、この日発表された週次ベース(5月30日終了週)の米失業保険新規申請件数は187万7000件と3月半ば以降で初めて200万件を下回った。前週の数値は修正され212万6000件となった。依然として高水準が続いている。本日は5月の米雇用統計が発表されるが、失業率が19.7%、前月比の就業者数は800万人の減少が予想されている。トランプ政権は、追加の景気刺激策を策定中とされる。

なお金市場に関連し、5月末の金ETFのデータが発表された。全体の残高は年初来で623トン増加し、重量ベースの残高は3510トンと過去最大を更新。5カ月という区切りでも過去最大の増加となる。5月1カ月では153トン増で、北米102トン増、欧州44トン増、アジアその他7トンとなった。引き続きインド、中国などの実需の低下分を欧米投資マネーがカバーする構図が続いている。またこの資金流入が1700ドル台を維持している背景となっている。
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