NY金は6営業日ぶりの反発となったものの、戻りは鈍かった。2カ月ぶりの安値を記録した前日の終値を時間外のアジアの時間帯からNY市場の終盤までプラス圏での取引となった。さらにおおむね1900ドルを越える水準での取引となった。上値は1912.20ドルまでがやっとという感じで、この高値示現後に前日比8.10ドル高の1904.10ドルで通常取引を終えた後の時間外に、再度1900ドル割れまで押し戻された。その後買い戻され1905ドル超で引けたものの、かろうじて1900ドル超えという印象。
ここにきてのドル独歩高がアルゴリズムの金売りを促しているとみられる。26日はユーロが対ドルで20年3月以来の安値を更新したことから、ドル・インデックス(DXY)は一時102.363まで上昇。そのまま高水準を維持し102.303と2年1カ月ぶりの高値水準を連日の更新。 ユーロ安が原動力だが、欧州経済へのウクライナ戦争の影響やFRBに比べ欧州中央銀行(ECB)の利上げは緩やかなものになるとの見方が、売りにつながっている。
この日は米長期金利が比較的大きく下げ、その面では金にはプラスだったが、さすがに102ポイント台となると「強いドルは弱い(ドル建て)金」の構図が浮上することになる。もっとも26日に目立ったのは米株安だった。ダウ30種は2.4%、809ドルの下落で3万3240ドルで終了。年初から8.5%の下落。1月5日のザラバの過去最高値からは10%の下げとなる水準。 年金基金など機関投資家が指標とするS&P500種は2.8%120ポイントの下げで4175.20と年初来12.4%の下げ。1月4日のザラバの過去最高値からは、13.4%の下げとなる。
この日3.94%ともっとも下げ率の大きかったナスダックは、今年に入り既に20.2%の下落となった。調整局面から弱気相場入りを示す20%を割り込んだ。昨年11月22日の過去最高値からは23%の下落率となる。昨年11月にピークを打った後も根強い押し目買いに高値を維持していたのがわかるが、それも終わりということだろう。
いずれも上下しながら水準を切り下げているのは、昨日書いたように戻り売りの流れに転じている。中国にて上海市に続き北京にもロックダウン(都市封鎖)を拡大する可能性が指摘され、世界景気の減速観測の高まりに従い企業業績への懸念が高まり株安が拡大したとされる。ただし、根底にあるのはFRBによる急激な引き締め方向への政策転換に対する警戒感と見られる。
FRBは年内に多くのメンバーが中立金利(景気を過熱も冷やしもしない程よい金利水準)と捉える2.5%を政策金利(FFレート)が上回ることを目指しているとされるが、セントルイス連銀のブラード総裁などタカ派は3.0とか3.5%という水準まで語り始めている。 ここにきて、中立金利は5%とするエコノミストも現れている。政策金利を5~6%まで切り上げる必要に迫られ結局、2023年には米国は深刻な景気後退に陥るという見立てもある。
まさにオーバーキルが現実のものになるというシナリオだが、寄せては返し、時に大波がやって来る足元の株安は、繰り返すほどにセンチメントを傷め続けている印象だ。戻り売りの米株に対し、金は押し目買いということだが、来週のFOMCを経た後の動きに注目したい。