亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

金ETF残高急増中、20年7月以来の規模に

2022年03月24日 21時01分27秒 | 金市場

ロシアがウクライナに侵攻を開始してから本日24日で1カ月を迎える。ロシア側の民間施設をも含めた攻撃が激化する一方で、ウクライナ側は徹底抗戦を続けている。軍事専門家の間では、すでにロシアがウクライナを掌握するのは難しいとの分析が増えているとされる。思惑通り進展しない軍事攻勢に対しロシア側が生物・化学兵器の使用をも選択肢に入れたとの見方も流れるなど、停戦交渉も頓挫している。停戦に関し市場の一部にあった楽観論も消えている。当初は停戦協議開催というだけで、株式市場などはプラスで反応していたが、今や現実を直視ということになっている。

23日のNY金は、このところ上昇が加速した米10年債利回りがNY時間外のアジアからロンドンの時間帯に上昇基調を維持したこともあり、上値は重かった。NY時間に入って以降、米債利回りが総じて低下すると、ウクライナ危機長期化に伴う安全資産としての観点からの買いが膨らんだ。午後に入ると原油の上昇を嫌気するかたちで株式市場の下げが拡大する中で、いわゆる「質への逃避(flight to quality)」様の買いが続いた。1937.30ドルで通常取引は終了したが、その後の時間外取引で上値を伸ばし1948.80ドルと節目の1950ドルに接近し、1944.20ドルで終了となった。本日24日の取引は、やや売りが先行する流れでNYの早朝までは1940ドルを挟んだ取引を続けたが、通常取引開始に向け1950ドルに突っかける動きとなっている。

 

先週を中心に原油の乱高下の影響を受ける形で金も派手な値動きとなったが、その裏側で金市場には静かな資金流入が見られている。

金ETF(上場投信)の残高が、今月に入り急増しており、3月18日までの14営業日で世界全体で重量ベース138.1トンの増加を見ている。このまま残高を維持するだけでも、月間ベースではドル建て金価格が過去最高値を記録する直前の20年7月の163.9トン以来の規模となる。地域別では北米が77トン、欧州58.3トン、アジア1.3トン、その他1.3トンとなっている。欧州が先導する形で増加し、ここにきて米国などの増加が目立っている。最大銘柄「SPDR(スパイダー)ゴールド・シェア」の残高は今月に入り23日までで60.67トンの増加で1087.66トンとなっている。これは21年2月26日以来の規模となる。 安全資産と目される米国債だが、米連邦準備理事会(FRB)が(米国債や住宅債券の)保有資産縮小を含む引き締め策の加速に着手する中で、値下がりリスク(利回りは上昇)があることも、インフレ高止まりとともに一部の資金を金ETFに向かわせていると思われる。金融市場にとって“一部の”資金だが、金市場には需給に変化をもたらす大きな資金流入となる。

先週末のマネックス証券のオンラインセミナー、今週のラジオNIKKEI マーケットトレンドPLUSともに、強気を語ったが果たしてどうなるか。。

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