1点集中型で市場の注目を集めていた1月の米雇用統計における賃金(平均時給)上昇率。報じられているように、結果は前年比2.9%の増加と2009年6月以来、8年7ヵ月ぶりの伸びとなるサプライズに。好調な米国経済のネックとなっていたインフレ率の鈍さだったが、いよいよ完全雇用状態から賃金上昇への連携が起き始めたとの見方が一気に高まり、国債は売られ金利は急騰となった。
すでに上昇基調を強めていた米長期金利は、一時は2.853%と4年ぶりの水準まで急騰。さすがにドルも反発となった。
FRBの利上げ方針に投影される賃金上昇になるのか否かと注視していた金市場は、予想以上の上昇に売られた。しかし、急落というわけではなく、静かに下げ基調が続くという展開に。
NYの昼前には1330.10ドルまで見たものの、そこから反発に転じ、いったんは1340ドル手前まで買い戻され結局1337.30ドルで終了ということになった。前日比では10.60ドル安となる。その後の時間外取引でも、いったんは1340ドルにタッチしたものの売り直され1335ドルで終了していた。
10ドル程度の下げは、通常の範囲内といえるもので、金利上昇の割には大きな動きとならなかったのは、まず主要通貨に対するドルの戻りが鈍いこと。さらに株式市場の下げの大きさが、金市場のサポート要因となったとみられる。
米金利の動向に敏感なのが金。その金よりも今回の金利上昇に敏感に反応したのが、報じられているように急落状態となったNY株式市場だった。前日比124ドル安で取引を開始したNYダウは、その後目立った反発を見せることなく終日下値追いの動きを続け、結局前日比665ドルの大幅安で終了。
もともと調整らしい調整を経ることなく駆け上がってきただけに、売りの口実に金利上昇がなったという点はあろう。上昇過程で見られていたモメンタムが、2日は日足で見られたというところだ。
長期金利の急騰は、需給要因の変化を察知した債券市場内のセンチメントの揺らぎという点もあろう。それが、一方に傾いたポジション(取引)の急激な巻き戻しによる荒れた動きにつながった。というのも、1月31日に米国財務省が発表した2~4月の米国債発行計画が420億ドルの増加となっていたことがある。昨年10月に始まった2018会計年度は、借り入れ必要額が前年比で8割増しの9550億ドルになるとの予想があり、増額はそれを裏付けることになった。
足元の金利の急伸には、先行きの財政赤字の急拡大を映した“悪い金利上昇”という側面を感じさせるものがある。素直にドル高に反応しない要因ではないかと。
株式市場は、“良い”も“悪い”も関係なく、金利の急伸が暗示するのは、(政策金利を含め)想定を超える前倒しの上昇が起きるのではという解釈となったのだろう。株式市場関係者がいうところのイールドスプレッドの縮小=割高 ⇒株下落という展開に。
米長期金利の急騰の割にドルの反発も限定的なものに終わっているのは、たとえば同じようにドイツ債金利も上昇していることがある。ドイツの連立協議からも目が離せない。それよりも何よりも、NY株の調整がどの程度で収まるか。こればかりは、今夜以降の相場に訊(き)く以外あるまい・・・という感じだ。
いずれにしても、現時点で金が大きく売られるような感じはしない。ちょっとした“騒ぎ”の中で、金は通常の値動き。まぁ、慌てなさんな!という感じ。
法律により義務付けられている議会証言で、日程が未定だったもの。