日本時間の今夜午後11時から予定されているイエレンFRB議長の講演内容とおそらくメディアとの間で交わされるであろうインタビュー内容に耳目を集めている。大勢的には目先の利上げを示唆するような発言はないと思われるが、同じ発言でも市場関係者の受け止め方によっては、市場を動かす材料になる可能性はある。
しかし、米国の金融政策の方向性にのみ関心が集中するというのは、裏を返せばそれだけ他に目立った動きはなく、安定しているということでもある。英国のEU離脱騒動の後の金融波乱時に、手持ちのポジションを精算し、夏休みに入ったファンドが多いということもあろう。実際に、欧州系だが足元のポートフォリオは、キャッシュの比率を高めているとの話も聞いている。
こうした中で、25日の金市場も様子見の流れの中で前日に見られたファンドの手仕舞い売り(ポジション整理)を中心に売り優勢モードが続くことになった。レンジでいうと前日までの取引とは10ドルほど切り上がった水準での取引という印象。
ワイオミング州ジャクソンホールでの金融シンポジウムが25日から始まったが、FRB関係者では、主催者であるカンザス連銀のジョージ総裁がTVインタビューに応え、「労働市場の現状とインフレ率およびその予測をみると、動き出すべきだと思う」とした。同総裁は、いわゆるタカ派で知られる人物。利上げを主張し、金利据え置きを決めた7月のFOMCでも一人反対票を投じている。
ただし、そんなジョージ総裁だが、「9月の会合時にどんな状況になっているのか、何かが変わるかどうか、見守るしかない」として、現時点では利上げを支持しているが、「9月の次回FOMCまでの経済指標によっては考えは変わるかもしれない」としている。また、「われわれが高い金利を必要とするようになるとは思わないし、景気を冷ます必要があるとは全く思わないが、正常化を続けるプロセスを開始するのが適切だと考える」としている。
タカ派で知られる総裁の昨日の発言内容から感じるのは、FRB全体のこの先の利上げ継続スタンスの後退ではないかということ。もう年内2回という見通しは消えており、適正な金利水準を探る話し合いがこれから中心に上るのではないだろうか。イエレン議長の話も、そういったものに落ち着くのではないだろうか。従って金市場が大きく売りで反応するような内容にはならないと思われるが、果たしてどうなるか。