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ルナティックな視線に恋して―――。 幾花にいろ「視野」 感想(快楽天 2016年12月号より)

2016-11-05 | 幾花にいろ
                                    
                                 人肌恋しい季節ですね。











幾花にいろさんの新作「視野」はその名の通りキャラの視線が印象的な一作だ
不安そうに、でも、寂しそうに壮人を見つめる文乃さんの視線/視野の矛先を眺めてるだけでキャラの感情が手に取るように分かる秀逸な漫画に仕上がってます
裸になって官能的に絡んだりその肢体を見せるシーンに至ってもどこか切実で他人を求める姿勢を崩さない文乃さんの相様を見ていると、
この文乃ってキャラの心・気持ちがセリフではなく、その眼差しや態度で伝わって来るのが
実に芸術的で奥深さを感じる事が出来る成人漫画に仕上がっていると思います。

やっぱり、
自分一人だけで楽しめる領域には限界があって
どこかで他人との触れ合いだったり通じ合う事を求めてしまっている自分がいるのも事実で
もっと単刀直入に書くと、みんな寂しいんだろうなあ、、、とは感じます
文乃さんはそこまでベタベタした関係性を望んでたワケじゃないだろうけど、
かといって、嫌なバイトを自分一人で乗り切れるほど孤独に慣れているワケでもない
ただ、側に居て欲しい
ただ、側で笑っていて欲しい・・・
本当に望んでたのはそんな些細な事だったのかもしれませんね

「自分のこと待っててくれる人がいる」
求めたのは、そんなシンプルな関係性
でも、そんな限りなく単純な望みだからこそ素朴で生っぽい切実さが感じられてイイな。と思いました
そういう空気感を出すのが巧い、というか・・・描かれてるのはガチな、今回もお世話になれるクオリティの濃密な官能描写である事は間違いないんですが
それと同時に、人肌を求める女性の気持ちの表現や不器用な相様含めてこの方の漫画は「なんかイイな。」って思える感覚に満ちてるんですよね
もうはっきり言っちゃうと「なんかイイな。」がたっぷり詰まってるギフトみたいなもんなんですよね
こういう言い方は感想書きとして失格かもしれませんが・・・笑
でも、不思議とほっこりと温かい気持ちになるような作用で充ちていると思う。



また、官能系の漫画だと女の身体のエロさに焦点が行きがちだが
本作では女性から見た・・・女性からの視野での「男のカラダ」の良さにも触れられている
女性の肢体を差してエロい身体、とよく言及しますが、ある意味男も男でセクシーさや官能さ加減では女とタメを張ってたりもする
ガッシリとしたアダルティックな手で撫ぜられて感じるオンナの悦び、、、にまで着手した作劇は正に創意工夫の賜物だと言える
この作者の性別は分からないんですが、男は男で不器用かつ不安げで、でも時に情熱的で
女は女で寂しげな目配せをしながらも、包まれてる時の多幸感に満たされていて・・・と
凄く男女の恋愛の、官能の機微を細やかに描けている気が(個人的に)していて
それもあって毎回毎回何度も読み返してしまうのかもしれません
前作とはまた違った毛色の(前作よりもちょっとネガティブかな笑)作品でしたが
今作は今作でまた「ならでは」の味があってとてもお気に入りですね
独特のセリフ回しも健在、、、でしたが、
個人的にはこの方の漫画の
「男も女も(あまり)余裕がない感じ」がある種の生っぽい手触りがあって大好きです
やっぱり、恋愛はお互い本気で不安の中でもがいてる感じが一番楽しい。
大味に惹かれつつも、愛する気持ちは強い壮人と、
細かな部分まで壮人を見て気に入ってる文乃さんと・・・
凄く良いカップルだなあ、って純粋に思えるのがイイですね
成人漫画の感想なのに、性的な部分にあまりノータッチなのが申し訳ないですが(笑
しかし、そういう細やかな日常的描写で魅せるのがこの作者の持ち味であり
デビューから数作で既に“にいろワールド”を確立させているのかもしれません。
今後も、個人的に、この作家さんの新作にはその都度注視して行きたい気分になりました。














自信が付いた?という、心境の変化をいちいち語らせずに表現している最後のコマもいいですね
しゃんとした姿勢で、しっかりと胸を張って・・・。恋愛小説にのめり込む姿も良い意味で単純で素敵でしたね。
そういうトコも「なんかイイな。」の極みで実に象徴的でした。