どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

二ひきのかえる

2014年09月23日 | 絵本(日本)


    二ひきのかえる/文・新美南吉 絵・渡辺美智雄/安城市中央図書館/2013年初版

 

 安城市が生誕百年を記念して創設した新美南吉絵本大賞を受賞した作品で、発行は安城市中央図書館。
 
 緑と黄色のかえるがなんともかわいらしい。
 
 いろのことでケンカをはじめた二匹のかえるですが・・・。
 冬の訪れを感じて、来年の春にケンカの決着をつけようと、土のなかにもぐって、冬を越すことに。
 春がきて、体の泥土をおとそうと池で、からだをあらうと、おたがいの色のあざやかさにおどろき、なかなおり。
 
 素朴な味がして、小さい子にはぴったり。

 29歳で、なくなった新美南吉。惜しい人ほど、若くして亡くなるのは悲しい。
          

    にひきのかえる/文・新美南吉 絵・鈴木靖将/新樹社/2013年初版

 絵本でも印象がまったく異なっていました。色合いが楽しい絵本になっていました。

 

 以下は、覚えるために全文を書き写したものです。

<二ひきのかえる>       
 
 緑のかえると黄色のかえるが、はたけのまんなかでばったりゆきあいました。
「やあ、きみは黄色だね。きたない色だ。」と緑のかえるがいいました。
「きみは緑だね。きみはじぶんを美しいと思っているのかね。」と黄色のかえるがいいました。
 こんなふうに話しあっていると、よいことは起こりません。二ひきのかえるはとうとうけんかをはじめました。
 緑のかえるは黄色のかえるの上にとびかかっていきました。このかえるはとびかかるのが得意でありました。
 黄色のかえるはあとあしで砂をけとばしましたので、あいてはたびたび目玉から砂をはらわねばなりませんでした。
 するとそのとき、寒い風がふいてきました。
 二ひきのかえるは、もうすぐ冬のやってくることをおもいだしました。かえるたちは土の中にもぐって寒い冬をこさねばならないのです。
「春になったら、このけんかの勝負をつける。」といって、緑のかえるは土にもぐりました。
「いまいったことをわすれるな。」といって、黄色のかえるももぐりこみました。
 寒い冬がやってきました。かえるたちのもぐっている土の上に、びゅうびゅうと北風がふいたり、霜柱が立ったりしました。
 そしてそれから、春がめぐってきました。
 土の中にねむっていたかえるたちは、せなかの上の土があたたかくなってきたのでわかりました。
 さいしょに、緑のかえるが目をさましました。土の上に出てみました。まだほかのかえるは出ていません。
「おいおい、おきたまえ。もう春だぞ。」と土の中にむかってよびました。
 すると、黄色のかえるが、「やれやれ、春になったか。」といって、土から出てきました。
「去年のけんか、わすれたか。」と緑のかえるがいいました。
「待て待て。からだの土をあらいおとしてからにしようぜ。」と黄色のかえるがいいました。
 二ひきのかえるは、からだから泥土をおとすために、池のほうにいきました。
 池には新しくわきでて、ラムネのようにすがすがしい水がいっぱいにたたえられてありました。そのなかへかえるたちは、どぶんどぶんととびこみました。
 からだをあらってから緑のかえるが目をぱちくりさせて、「やあ、きみの黄色は美しい。」
「そういえば、きみの緑だってすばらしいよ。」と黄色のかえるがいいました。
 そこで二ひきのかえるは、
「もうけんかはよそう。」といいあいました。
 よくねむったあとでは、人間でもかえるでも、きげんがよくなるものであります。