スリクシェばあさん/黒いお姫さま/ドイツの昔話/ウイルヘルム・ブッシュ・採話 上田真而子・訳 佐々木マキ・絵/福音館書店/2015年初版
スリクシェばあさんの鼻は、とびきりよくきく鼻で、村のどこでなにを焼いているのか、なにを煮ているのかいっぺんにかぎつけてしまいます。
ある日、ウサギを焼くにおいをかぎつけ、おかみさんにちょっと味見をしようともちかけます。おかみさんは断りますが、ちょっぴりといいながら、一口、二口食べるうちに、すっかりたいらげることに。
おかみさんが途方にくれていると、スリクシェばあさんは、夢でもみたんでしょというように知恵をつけます。
次にウズラを焼くにおいをかぎつけて、おかみさんのところにでかけ、これもすっかりたいらげてしまいます。
ウサギもウズラも食べ損ねたお百姓は、おかみさんにからかわれているらしいと、木のむちを三本つくって、寝室にもっていきます。
やがて、夜になるとおかみさんの寝ているベッドにいって、髪の毛をきりおとし、木のむちが折れるほどひっぱたいてから、家の外に追い出してしまいます。
あくる朝、おかみさんがにこにこしながら、百姓のところにコーヒーをもっていくと、百姓が髪をみせるようにいうと、おかみさんの髪はふさふさ。百姓はやっぱり夢だったのかと思います。
じつは、お百姓のおかみさんは、百姓がはらをたてているのをみて、前の晩にスリクシェばあさんを自分のベッドに寝かせていたのです。
このお話、上田真而子さんが訳していますが、そのまま、語りのテキストに適しているようです。
とくにおかみさん、おばあさんの会話の部分は絶妙です。