どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

雪窓

2015年07月27日 | 安房直子
             雪窓/白いおうむの森/安房 直子/偕成社/2006年/1972年初出


 冬、おでん屋台というので、猛暑日が続くいまではなく、冬に読みたいお話です。

 「おでん・雪窓」とかかれたのれんの屋台のおやじさん。
 大分前におくさんを、少し前に娘の美代を6歳で病気で亡くしています。
 時代は少し前、救急車もよべず、熱を出し、火の玉のようにあつい子どもを背負って、満月のつきあかり森や峠をさっささっさとかけぬけ、村の医者の家に着いたときは、背中の美代はつめたくなっていたのです。

 ひとりでおでん屋台をいとなんでいるおやじさんのところに、たぬきがやってきて、そのままおやじさんの手伝いをすることに。
 さびしかったおやじさんは、お客がいなくなると、たぬきと酒をのみながらすっかり気分がよくなっていきます。
 雪のどっさりとつもったある晩。かくまきを頭からすっぽりかぶった女のお客。どことなく亡くなった美代ににています。おやじさんがどこからきたか尋ねると、いつか美代をおぶってでかけた峠をこえた野沢村からきたといいます。
 おでんをきれいにたべおわると娘はかえっていきます。しかし手袋を忘れていきます。
 またきますといった娘ですが、10日も20日たってもあらわれません。
 忘れていった手袋を娘に届けようと、おやじさんとたぬきは、野沢村へでかけます。

 屋台をひきながら野沢村にでかけるふたりの前に、天狗や子鬼がでてきたり、子鬼たちに、ひきかえ券をおくれといわれて、たぬきが笹の葉をあつめてきて配るところに、美代が木の葉を皿にしたり、かるた、舟、雪うさぎの耳にして遊ぶ光景がうかんできます。

 ふと、3.11のとき、子どもや奥さんがなくなり、一人残されたお父さんの情景もうかんできました。
 
 雪がしんしんとふる夜に読むと、おやじさんの娘を想う気持、娘のおやじさんを想う気持ちがつたわってくるような、じんとくるお話でした。

 ここにでてくるのは、やっぱりおやじさんという表現がぴったりです。そして屋台にあらわれる娘は、かくまき姿というのも印象にのこります。
 絵本だったら雰囲気がでると思いますが、読んでかくまきのイメージがわく人は、ちょっぴり古い方でしょうか。