世界むかし話20 カナダの昔話/高村博正・篠田知和基:編訳/ほるぷ出版/1991年
カナダ・インディアンの昔話。
魔女が村人を、なんにんもころしてたべているというので、弟が兄たちの反対をおしきって魔女のところにでかけました。弟が魔女の手を引っ張ろうとすると、右手が女の体の中にはいってしまい、いくらひっぱっても抜けず、弟は刀で手を手首のところから切り落とし、やっと魔女からはなれることができました。
兄たちが弟の右手をとりかえしにいきましたが、魔女にはかないませんでした。さいごに末の妹がでかけ、自分の腕をつけ根のところまで魔女の体の中に入れ、すばやくさっとひきぬくと、その手には弟の右手がにぎられていました。とたんに魔女は死にました。
このあと急展開。
兄弟がリロエという湖にやってくると、いまにも赤ちゃんが生まれそうな大きなおなかをした女の人が、小屋の前にいました。岸の近くでは一人の男が二本の木の枝で水面をかきまわしていました。男はいくらやっても魚が逃げてしまうとしょんぼり。
男は背中に大きな刀をしょっていました。刀で女房の大きくなったはらをきりさいて赤ん坊をだそうとしても、きまって女房は死んでしまうというのです。
あきれた兄弟は、草の茎で網を作り、網で魚をとる方法と料理の仕方も教え、みんなでおいしく食べました。さらに男の妻に子どもが生まれそうになると、桜の木の皮でひもをつくって、赤ん坊をやさしくそっとひっぱりだしてやりました。子どもも母親も元気です。
兄弟たちは、こうしていろいろなことを夫婦に教えてやりますが、しかしどう考えても、男がなん人もの妻をころしてきたことをみのがすわけにはいかず、男を石にかえてしまいます。「この石を見て、あとにつづく人間たちが、正しい生き方をまなぶように。」というわけです。
カナダはイギリス、フランス系の移民が多い国ですから、当然昔話にも、ヨーロッパの面影があります。ただこの話は原住民の話です。前段と後段がまったくつながっていない話ですから、どうして収録されたのか疑問が残りました。