どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

どろんこ こぶた、ルシールは うま

2020年12月14日 | 絵本(外国)

 どちらも、ほのぼのとしたアーノルド・ローベル作です。

    どろんここぶた/アーノルド・ローベル・作 岸田衿子・/文化出版局/1971年

 

 お百姓さんとのこぶたが何よりも好きだったのは、やわらかーい どろんこの中にすわったまま、沈んでいくことでした。
 ところがある日、お百姓さんのおばさんが家のなかも、うし小屋、うま小屋、とり小屋もおおそうじ。そしてぶた小屋もおおそうじして、こぶたを お風呂に入れてしまいました。 どろんこもなくなり「こんな うち、ぴかぴかすぎて、つまらないよ」と、こぶたは、よるになると とことこ逃げ出します。

 こぶたは、沼を見つけよろこんでいましたが、トンボやカエル、かめ、へびに じゃまものあつかいされて、沼を抜け出し、また、とことこあるいていきます。

 大きな町について、どろんこをみつけ、どろんこのなかに すわったまま ずずずーっと しずんでいくと だんだん かたくなっていきます。こぶたが どろんこだと思ったのはセメントでした。

 町のひとが、どんどんあつまってきて、こぶたを みています。道端でセメントづけになったぶたなんて、だれもみたことがありません。そこへ、こぶたをさがしにきたお百姓の夫婦がとおりかかり、消防夫さんが四人がかりで、こぶたを救出。

 車で家に帰る途中、嵐になって雨がざあざあ。ぶた小屋の前には、どろんこの沼。こぶたはまた、だいすきな どろんこのなかに すわりこんで しずかに、ずずずーっと、しずんでいきました。

 

 おばさんには悪気はありませんでしたが、こぶたくんにとっては、だいすきな どろんこがなくなって、大迷惑。好きな場所にいられるのが一番でした。

 絵も落ち着いた色合いです。

 

    ルシールは うま/アーノルド・ローベル・作 岸田衿子・訳/文化出版局/1974年

 

 うまのルシールは、ときどき、みずたまりに 顔を映してみて、「わたしって、ぱっとしない うまね。どろだらけなんだもの。」と、悲しくなりました。

 お百姓のおくさんも、「すてきな うまだねえ。ルーシーは。だけど、ぱっとしないし、きたないねえ」と、町にいって買い物をします。

 おくさんがルーシーに買ったのは、ピンクのばらのついたぼうし、きれいな赤いくつ、まっしろなかわいいドレス。

 お百姓さんは、「あまり りっぱすぎて、もう 畑で 鋤を ひっぱって もらえないよ」と、かなしそうです。

 ルーシーは、こぶたから「きみ、からだに くっつけて いる、その へんな ものはなんだい」ときかれると「わたしは もう 貴婦人なんだから、そばにちかよらないで。」と、つんと すまして言いました。

 それからは、ルーシーは畑仕事をせず、部屋の中に座って、おくさんと一緒に おちゃをのみながら ラジオを 聞いています。でも、ぼうしは、くすぐったいし、赤いくつで、足は痛くなるし、ドレスは あつくて、ルーシーは外に出て、お百姓さんと いっしょに はたらきたいなあと 思いました。

 ある日、パーティがひらかれ、たくさんの おきゃくさんがやってきますが、一人が差し出した花束をルーシーは食べてしまいます。

 おきゃくさんたちが、お茶を飲んだり、クッキーを食べたり、大声でおしゃべりしていると、ルーシーは、だんだんむしゃくしゃしてきました。ドレスをふんで やぶり、おきゃくさんにぶつかって、たおしてしまいました。おまけに、ぼうしがさがってきて、ティーポットを壊すし、クッキーをこぼしてしまいました。それから「わたしは 貴婦人じゃないわよ。わたしは うまよ!」と、さけぶと、五人ものおきゃくさんを つきとばして かけて、かけて 畑にとびこみました。かけているとき、ドレスはどこかへ。ピンクのばらと、ぼうしをばんごはんに食べました。

 「わたしは、ふつうの うまに なれて うれしいわ。」


 ルーシーは、なにもしなくても、働くことがすきで魅力的な馬。すこしだけ遠回りしますが、もとのままが一番と気がついたようです。