天からふってきたお金/アリス・ケルジー・文 岡村和子・訳/岩波書店/1964年
ホジャが大事にしているヒツジをみて、アメフットが、「ざんねんですなあ。あすは、この世の終わりだというのに、こんなヒツジを役にたてないでしまうとは!」「だから、いまのうちに、このヒツジを蒸し焼きにして、食べてしまえば、世の終わりがきても、むだにしないですむというものです。」
ホジャは、しんじられませんでしたが、町中の連中も、「いまのうちに、やいてくってしまうのがいちばん」と、いかにもかなしそうなかおをしていうので、一大決心をします。あすの朝、「川岸で、ヒツジの肉をたらふくたべよう」。
友人をたくさん招待し、いよいよ焚火で準備。友人たちは、肉を焼いているうちにひと泳ぎしようと、着物を脱ぎ捨て、川で泳いでいました。
ホジャは、「いまにも、この世の終わりくるかもしれん。たった今かもしれんし、一時間後かもしれん。この世の終わり・・・この世の終わりだ」と、独り言。
ホジャが、なげきかなしんでいるのを耳にすると、泳いでいる連中もすこしばかりはずかしくなりました。ほんとのことを話そうと意見が一致しました。そうすれば、みんなでわらって、たのしいピクニックができるというものです。ところがどうしたことでしょうか、おいしいそうなやき肉のかおりにまじって、あまりかんじのよくない、きみょうなにおいがただよいはじめました。はらぺこだったみんなは、おおあわてで岸にはいあがり、ホジャのところへかけつけ、じぶんたちの服を着ようとしました。すると、草の上に服なんて、一枚もありません。服は、全部、焚火の上にのせられて、ぶすぶす燃えていたのです。みんなは、口をあんぐりあけ。ホジャを見たり、くすぶっている着物やくつのほうを、うらめしげにながれるばかりです。
ホジャは、にっこりわらって、「わしは、このあたりを、きれいさっぱりそうじしておこうとおもって、片づけたんだが、もうすぐ、この世の終わりがくるんなら、こんなものじゃまだってことに気がついたもんで、燃やしたわけさ。」。
みんなは、ホジャをだましたつもりでしたが、ホジャは ちゃんと仕返しをしました。だが、ホジャの大事なヒツジがどうなったかは不明です。