岐阜のむかし話/岐阜児童文学研究会編/日本標準/1978年
カミナリさまのところでも人手不足のようで・・。
田植えもすんでお伊勢参りにでかけた、キン、ゴン、サンという三人の男が、道にまよって宿をたのんだのは、ひとりでいたおくさんのところ。
夕食に、お皿におかれた、まるいものを食べようとすると、かんでもかんでも食えない。何かと聞くと、泣く子のヘソを取ってきたものをにしめにしたものという。おくさんのだんなは、カミナリさま。三人は、えらいところに泊まったとふるえておったら、夜中になって、バリバリッという音がして、黒いふんどしで現れたのはカミナリさま。
三人が、頭を下げてじっとしていると、カミナリさまが、「よく来てくれた。きたついでに、たのみたいことがある」という。「じつは、こちらはまだ田植えのさかりで、お百姓が雨をまっている。何とかして雨をふらせてやりたいが、どうにも人手不足で、思うようにふらせらねえ。手伝ってくれないか?」
つぎの朝、カミナリさまは、「キンはいなずまを引け」「ゴンは、キンがいなずまを引いたら太鼓をたたけ」「サンは手桶に水を持っとって、水をまいてくれ」という。
キンがいなずまをひくと、ぴかぴかっ。ゴンが、たいこをたたくと、ドンドンドンゴロドロッ。サンは水まき。すると下では、「それ! ようだちさまが雨をくださったで、この機をはずさんように田植えのしたくだ」と、大騒ぎ。
キンが、こりゃおもしろいと、いなずまを引きながら、ひょいひょいひょい歩くうちに、雲を踏み外して、ドサーッと、落ちてしまった。その勢いで、火事が起こってしまった。「こりゃかなわん。くそかしょんべんをかけてやれ」と、大騒ぎ。
昔から、カミナリさまの火事は、なにか不浄なものをかけると火が消えるという。
お伊勢参りに出かけた三人の名前が、キン、ドン、サンなので、名前に引っ掛けたものがでてくるとおもったら、スルー。もっとも、カミナリさんのところへいくのが、三人というのも めったにありません。