どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

カッパどっくり・・神奈川

2022年11月13日 | 昔話(関東)

            神奈川のむかし話/相模民俗学会編/日本標準/1977年

 

 いくら飲んでも減らない「カッパどっくり」の行方は?。

 

 茅ケ崎の働き者の五郎左ヱ門が、畑仕事を終えて帰る途中、川のそばで馬が暴れていました。

 馬の飼い主が「助けてくれ! カッパだ。カッパだ。カッパが出たんだ!おれの馬をとっちまう!」と騒いでいます。カッパが馬の尻に、がぶりと食いついていました。馬は痛いのと恐ろしいので、気が狂ったようにあばれています。五郎左ヱ門は大きな声でみんなを呼びました。ちょうどよいことに仕事を終えて、帰りかけていた村の人が、大勢かけつけました。村の人たちはカッパをつかまえ、縄でギリギリにしばりあげると、殺してしまえと大騒ぎ。

 カッパはすっかりおとなしくなり、泣いて、小さな声で助けてくれとうったえました。村の人たちは、すぐにでも殺してしまいそうなようす。五郎左ヱ門はおそるおそる、「カッパのやつも、もう悪さはしねえと言っているようだから、ひとつ放してやろうじゃねえか。」と、みんなにむかって言ってみましたが、村の人たちはなかなか納得しません。しかし、五郎左ヱ門が一生懸命たのみ、カッパも頭を地面にこすりつけて泣いてあやまったので、そのうち村の人たちも、放してやることにしたのです。

 その夜、「コトコト、コトコト」と戸口をたたく物音がし、五郎左ヱ門が眠い目をしばしばさせながらでてみると、先ほど助けてやったカッパが、またきているでは ありませんか。こんど見つけたら、ただではおかないといっておいたのにと、おもわず怒鳴りつけると、カッパはなにやら細長い物を、五郎左ヱ門の前に差し出すと、こう言いました。

 「これはカッパどっくりというものです。中にはうまいお酒がいっぱい入っています。いくら飲んでもへりません。でも、とっくりの底をポンとたたくと、もう普通のとっくりと同じになって、酒は出ません。」。カッパは、これだけのことをいそいで言うと、おじぎをして、にげるようにして、川の方に帰っていきました。それから五郎左ヱ門は、二度とカッパに会うことはありませんでした。

 

 カッパのくれたどっくりは、茅ケ崎のある村に残っているが、いまは一滴の酒も出てきません。だれかが、とっくりの底をポンとたたいたのでしよう。

 

 いくらお酒を飲んでも減らないとっくりがあったら、仕事がおろそかになるので、やはり話としておくのが、いちばんでしょう。


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