どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

一枚うわて

2019年05月07日 | オー・ヘンリー

       人生は回転木馬/オー・ヘンリー ショトストーリーセレクション 千葉茂樹・訳/理論社/2007年


 オ・ヘンリー(1862~1910)の時代も今も、強盗、詐欺師の類はなくなることもない。

 ハナミズキの苗を、スモモ、サクランボ、桃といつわって一仕事した詐欺師のジェフが、うっかりその町に着いて、住民におわれて逃げた先でであったのが、強盗のビル。

 ビルも、目をつけた家の娘となかよくなり、家にいれてくれたらこんどは合鍵を作って強盗に入ろうとしたが、ほかの女の子と路面電車にのっているところを見られて、鍵をあけてくれるはずだったのに、へそを曲げた娘に大声をあげられ、散々苦労してにげかえっていました。

 このふたりがあったのが、リックス。シカゴにある豪壮な家具つき事務所を舞台に、フロリダ州の湖の底の土地を住宅地といつわって、資本家から散々ぼったくった男。この詐欺がばれて、くつ下とイギリス製のマリファナタバコ一ダースだけをもって、西部へ逃げざるをえなかった男でした。

 ある日、銀行から五千ドルをいただいてきたビルは、リックスには百ドルを気前よく、分け与えます。 そして詐欺をするにも元手が必要だろうとジェフにも分け与えようとします。しかしジェフは、汗水たらしてかせいだ金をまきあげるようなことはしない、有りあまった金をつかいたがってるまぬけどもからしかかせがない、強盗を尊敬できないと、ことわります。

 ビルは銀行強盗でえた金で、とばく場をひらくことに。ジェフは師匠のモンタギューから、金を借りて、町でたった一軒のトランプを売っている店に行って、全部買い占めます。そしてとばく場が開くのを待って、トランプを全部、その店に返します。ジェフはすべてのカードに印をつけておきました。

 ビルがトランプを買った店は、ジェフが印をつけてかえしたカード。勝負の結果はあきらかで、とばく場は閉店になります。

 ジェフは、とばく場で得た五千ドルを、年内にはまちがいなく五倍にあがると見込まれる金鉱山の株券に投資します。ところが、その株券はリックの会社のものでした。

 いずれもひとくせのありそうな面々。詐欺師のジェフのやり口も、インチキな薬を売りこんだりといろいろでてきます。

 今も高利がうたい文句の詐欺商法がはびこっています。儲け話にのりたくなりますが、考えるとそんなにうまい話があるはずがありません。しかし、儲けたいという心理がある間は、詐欺は、なくなることはなさそうです。


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