魔女のパン/オー・ヘンリー ショトストーリーセレクション 千葉茂樹・訳/理論社/2008年
リドル家の下宿人マゴーワンと薬剤師のアイキーは、ロージーという娘にぞっこん。
アイキーは内気な性格で引っ込み思案とおそれから彼女への思いをとじこめ、打ち明けることはできませんでした。
ある日、マゴーワンは、ためしてみたい薬があると相談をもちかけます。今夜ロージーと駆け落ちして結婚することになったが、彼女の気が変わらないか心配していたのです。そしてもう一つ、親父さんが、一緒に外にでるのを許してくれないというのです。
アイキーは特に危険なしに二、三時間ぐっすり眠りこける薬を処方し、液体に溶かして飲ませるよう注意を与えて、マゴーワンにわたしました。その一方下宿屋の主人リドルをよびだし、マゴーワンとロージーの駆け落ちの計画を明かしてしまいます。
マゴーワンはアイキからみれば恋の略奪者。
ロージーがほれ薬ならぬねむり薬で眠り、父親のリドルがあらかじめ知らされてショットガンをかまえて待っているとなれば、アイキーのライバルは、もう袋のネズミ、失敗はまちがいありません。
ところが次の日、アイキーがマゴーワンにあうと、彼は勝利の笑みを浮かべ、喜びに顔をてらせながらアイキーの手をにぎります。
マゴーマンは、彼女を目の前にし、「あの娘を本気で自分のものにしたいんなら、彼女のような育ちのいい娘に、いかがわしい薬なんかつかっちゃだめだ」、そして義理の息子として父親に愛されたいと思って、すきを見て、ほれ薬を親父さんのコーヒーに入れていたのです。