赤い酋長の身代金/オー・ヘンリー ショトストーリーセレクション 千葉茂樹・訳/理論社/2008年
公園のベンチで、新聞を利用して一夜を過ごそうとしているソーピーにとっては、冬将軍の挨拶状は至極迷惑。
今年もその時期がやってくると、ブラックウエル島刑務所が、彼の別荘地。
慈善団体や自治体の施設もあるが、慈善でほどこされる寝床には、いつも入浴の義務がついてまわり、パンをひとつもらうたびに、根掘り葉掘り質問されるのは、ソーピーの誇り高い魂にとって耐えがたい苦痛。
法律のお世話になって刑務所にはいるほうがまし。
まずは高級レストランで、散々おいしいものを食べて、金がないと宣言すること。上着は見苦しいものではなく、うまくいくと目論見どおりいくかも。ところがすり切れたズボンとぼろぼろの靴のせいで、入店お断り。
それではと、きらびやかに陳列されたショーウインドウに敷石を投げつけるが、駆けつけた警官は、窓ガラスをこなごなにした人間が、いつまでも現場にいるはずがないと、路面電車に乗ろうと走っている男をおいかけはじめます。
気取りのないレストランで、ステーキ、パンケーキ、ドーナツとパイを食べて、無銭飲食を告げると、ふたりのウエイターから店から放り出されてしまいます。
ショーウインドウの前に立つ、品のいい服を着たおしとやかな若い女性を「女たらし」をよそおって、遊びに誘うと、「ええ、いいわよ」と彼女は楽しげ。「ビールをたっぷりおごってちょうだい、わたしも 声をかけようとおもっていたんだけど、おまわりがみているんだもの」
女をふりはらってにげだし、やってきたのは讃美歌がながれてくる教会。
そこでソーピーに不思議な変化が。退廃的な日々、恥ずべき欲望や枯れてしまった希望、破綻した才能や生きる原動力になっているあさましい動機などをふり返って、恐怖を感じたのです。
なんとしても泥沼からはいあがり、なんとしても自分をしっかりとりもどそうというというソーピー。
明日は仕事をさがそうとすると、だれかがソーピーの腕をつかみます。ごつい顔の警官でした。
何もしないソーピーに治安判事は、三か月の禁固刑を命じます。
わざと捕まろうとしても捕まらず、人生をやり直そうと決意したとたんに刑務所おくりになるのは、人生そのものかも。
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