クリシュナのつるぎ・秋野発巨矢・文 秋野不矩・絵・絵/BL出版/2022年
カンサという王さまの圧政に苦しんでいた人びとが、天の神ヴィシュヌに毎日いのりつづけると、ヴィシュヌの神さまは、デーヴァキーという女のひとのからだにやどり、地上に生まれ出ることにしました。
ある日、王さまのところへ、ふしぎな占いのおじいさんがやって、「王さま、あなたはほろぼされます。デーヴァキーという女の産んだ子どもに きっと、ほろぼされますぞ!」と予言。予言を聞いた王さまは、すぐにデーヴァキー探し出させ、石の牢屋に閉じ込めてしまいます。
デーヴァキーと夫が獄中で赤ちゃんを産むと、「カンサ王を、ほろぼすのは、その子であるぞ!」という神の声。それとどうじに父親の足の鎖が、はらりととけ、父親は赤ちゃんを抱いて、嵐のなかへ、そっと逃れ出ました。父親はいっぴきのオオカミ、頭が七つつもある大蛇に助けられ、まっぷたつにさけた川をわたり、ゴークラというところへつきます。
一方、牢屋のなかでは、デーヴァキーの胸に、女神マーヤーが化身した ひとりの赤ちゃんがだかれていましたが、カンサ王は、いきなり赤ちゃんを石畳にたたきつけようとします。しかし、赤ちゃんは、王の手をするりとぬけて、「なんじをほろぼすものは、ゴークラにいるぞ!」と笑って、煙のように消えてしまいます。
カンサ王は、ゴークラにいる赤ん坊を皆殺しにするよう命令し、逃げ遅れたたくさんの子どもが捕まってしまいました。
デーヴァキーの赤ちゃんは、無事に助かりクリシュナとなづけられて、すくすくとおおきくなりました。やんちゃな少年から、娘たちをとりこにする美しい青年に成長したクリシュナ。むすめたちの あこがれになったクリシュナは、自分のからだをいくつにもわけて、むすめたちの、ひとりひとりとあそびました。
やがて、クリシュナは、頭が百十もある大蛇をたいじし、雨で家も人も牛も どんどん流されるとゴーヴァルダナという山を小指一本でもちあげ、それを傘のようにさして、雨を止めます。また森が大火事のときは、燃えさかる炎を、一息でのみこみました。
十八歳になったクリシュナは、いよいよカンサ王と対決します。
クリシュナの青い肌、カンサ王の赤の衣装、そして茶色の肌が いずれも鮮やか。
インドの人々に最も親しまれ、愛されているクリシュナ神の物語。対決があっけないのが残念。
なんどかインド各地を旅したという秋野親子の合作です。二人はすでに亡くなられているので、2022年発行に疑問を持ったのですが、1969年に岩崎書店発行の加筆復刊というので納得しました。