巨人の花よめ スウェーデン・サーメのむかしばなし/菱木 晃子・文 平澤 朋子・絵/BL出版/2018年
副題に「スウェーデン・サーメのむかしばなし」とありますが、サーメとよばれる先住民はスカンジナビア半島北部を中心とした地域に住んでいるといいます。
寒くて厳しい大地で、大きな川のそばにネイネ・パッゲというサーメ人がたくさんのトナカイを飼っていました。ネイネ・パッゲには、ひとりむすめのチャルミという一人娘がいました。
チャルミはとても美しく、かしこい女の子で、あちらこちらから結婚を申し込む男がたずねてきましたが、チャルミは、いつもことわっていました。
ある日、チャルミは、トナカイの群れをおそったり、サーメ人のもっているものを力ずくでうばったりする山の上の巨人に目をつけられます。
巨人は、ときに容赦なく人々の命やくらしをおびやかす存在という意味で、自然の脅威の象徴ととらえることができるとあとがきにありました。
美しく賢いチャルミと巨人の知恵比べがはじまります。(といっても巨人は翻弄されるだけ!)
ネイネ・パッゲとチャルミ、結婚を申し込みにくる男たちの衣装の赤が鮮やかですが、コルトと呼ばれる民族衣装のようです。チャルミは金と銀をトナカイの荷にして10頭分もってくることを結婚の条件に出しますが、金銀の輝きも幻想的です。
大きく描かれた巨人は一つ目で迫力満点。北欧の昔話ではトロルがでてくるのが一般的ですが、この絵本では巨人です。
サーミ人と思われる民族のことが初めて文献上に現れたのは、紀元1世紀に古代ローマの歴史家タキトゥスによって著された『ゲルマーニア』においてで、ここではサーミという名前ではなく、フェンニーという名前で呼ばれているという。
もともと狩猟・遊牧を行なう民族であるが、チェルノブイリ原発事故以降、トナカイの汚染が進み、伝統的な放牧生活を送る事はいっそう難しくなってきて、いまは、ほとんどが定住生活を営んでいるといいます。
トナカイの主食が、放射性物質を吸収しやすいキノコや地衣類などであることから、特に汚染が進んだようだ。原発事故の影響がこんなところにも!
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