わたしのおかあさんは世界一びじん/ベッキー・ライアー・文/ルース・ガネット・絵 光吉郁子・訳/大日本図書/2010年
六歳のワーリャは麦の刈り入れのお手伝いをすることもありました。ワーリャは、お母さんのマーフィーのそばを離れることはほとんどありません。それでも、あつい日などには、ついていくのを わすれることがありました。
夏のさいごの取入れの日、ワーリャは、いつのまにか小麦畑の中で、すやすやねむってしまいました。やがて目を覚まし、おきてみると おかあさんは どこにもいません。大声で呼んでも返事はありません。あっちこっち 走り回っても やはりお母さんはいませんでした。
それでも どんどんかけていくと たちばなししている 人たちがいました。
そのままじっとして、女の人から声をかけられ、お父さん、お母さんの名前を聞かれますが、ワーリャは悲しくて、声も出ませんでした。しまいにやっと「わたしのおかあさんは、世界一びじん!」と言います。
それを聞いた村長さんらしい人は、村中の 美人の お母さんを呼んでくることにしました。村中の美人のお母さんがやってきますが、ワーリャのお母さんはいません。また悲しくなって、しくしくやりはじめると、そこへ一人の 女の人が いきせききってやってきました。顔は大きくて まんまるで、ずんぐりした 鼻の上に、ほそい 目が ちょこんと ついていました。ふたりは、おたがいの うでの なかに とびこみました。
「これが、あたしの おかあさんよ。だから、いったでしょ。わたしの お母さんは、世界一美人だって!」というワーリャに、村長さんは、ウクライナの有名な ことわざを くりかえしました。
「きれいだから、すきなのじゃない。すきだからこそ、きれいにみえるのだ!」
お母さんのマーファも いいました。「世の中には、目でしかみない 人も いるのよ。ワーリャが 目だけで なく、心でもみて くれるには とても、うれしいわ」
「私のお母さんは世界一美人」だといってもらえるお母さんは素敵です。
ともすれば外見で判断しがちですが、そうじゃないというのを教えてもらいました。