どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

北風ふいてもさむくない

2015年07月08日 | あまんきみこ
北風ふいてもさむくない  

   北風ふいてもさむくない/文:あまん きみこ 絵:西巻 茅子/福音館書店/2011年初版
 

 クリスマスのころ読みたい絵本。

 かこちゃんは、おかあさんにあんでもらった赤いマフラーでおでかけ。
 「北風ふいてもさむくない」とうたいながらいくと青いマフラーをしたきつねのこが。
 かこちゃんがきつねとあるいていくと、こんどはももいろ毛糸のマフウーをした、うさぎのこが。
 きいろい毛糸のマフラーをしたねずみのこも。

 うさぎがなにかちいさななきごえをききつけます。
 みんなでいってみると、大きな木のねっこのそばの家で、へびのこが、「さむいよう」「ふわふわのふとんがほしいよう」とないています。
 そこでみんなで、相談しますが・・・・。

 文も絵もこころあたたまります。

 みんなで相談したとき、かこちゃんがきつねの耳をつけて、ひそひそ。
 きつねが、うさぎの耳に、ひそひそ。
 うさぎが、ねずみの耳にひそひそ。

 ”ひそひそ”が、ひみつめいていますが、いいだしっぺのかこちゃんや動物たちのあたたかい思いやりが伝わってきます。     


すいかのめいさんち

2015年07月06日 | 絵本(日本)
すいかのめいさんち  

    すいかのめいさんち/作:平田 昌広 絵:平田 景/鈴木出版/2013年初版

 

 夏はやっぱりスイカ。

 ぼくが、一個まるまるがぶりやりたいと思っていると、さすがお母さんはよく見抜いていて”ひょっとして ひとりで たべようと 思ってない?”

 ひとりがだめなら、二つに切って、食べちゃおうと思ってにやにやしていると、やっぱりお母さんから一声。”わかっているの? みんなで わけて たべるんだからね”。

 おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、ぼく、いもうとが縁側に並んで”いただきまーす”と元気よく。そして、種とばし。

 とんだ種で、屋根にまでスイカがなって、カラスがびっくり(というのはぼくの夢)

 家族みんなでおいしそうなスイカを食べている場面がほほえましい。

        


アブラゼミ

2015年07月05日 | 紙芝居

     アブラゼミ/フォトかみしばい/監修 長谷川仁 構成・文 七尾純/あかね書房

 

 近くに虫集めに夢中になっていた子がいて、近頃あまり見かけない光景なので、ほほえましい感じでみていました。

 この紙芝居は写真で構成されていますが、絵本よりやや大きいので細部まで鮮明にとらえられていて、迫力満点です。

 そして、昆虫が好きな子にはピッタリ。
 楽しみながらセミのことがわかります。

 大分昔ですが、都内の駅近くの家で、セミが羽化するのを見たことがあり感動したことを思い出しました。

 じっさいの羽化のありさまをみてほしいところですが、そこまでいかなくても、こんな紙芝居で体験してほしいものです。

 ところで、次の質問に答えられるでしょうか

   ・セミが成虫になるまで、どのくらい
   ・セミの寿命はどのくらい
   ・鳴くのはオス、メスどっち
   ・セミの死がいはどうなる         


虔十公園林

2015年07月04日 | 宮沢賢治
虔十公園林  

      虔十公園林/作:宮沢 賢治 絵:伊藤 亘/偕成社/1987年初版

 

 いつも 木や鳥を見てうれしがっている虔十。子供たちから馬鹿にされていたのですが、雪の残る早春に家のうしろにあるまだ畑にならないで残っている運動場ぐらいのところに、杉の苗700本を植えたいと言いだします。虔十のお兄さんは杉を植えても成長しないと反対しますが、父親は虔十の言うとおりにさせてやります

 虔十と兄は、まっすぐ実に間隔正しく、苗をうえます。しかしまわりの人からは杉など育つわけがないと冷笑されます。

 しかし、杉林は子供たちの格好の遊び場になります。

 ある日、杉の北側に畑をもっていた平二が、自分の畑に影が入るから木を切るように虔十に迫り、断る虔十に手をあげます。

 子どもたちが並木道のような杉のそばでよろこんで遊んでいるのを、隠れて満足そうにみていた虔十ですが、やがて、平二も虔十もチフスで亡くなってしまいます。

 その後、町は急速に変貌し、畑や田がずんずん潰されていきますが、この並木道だけ残されて、やがて虔十公園林と名前がつけられ、いつまでも保存されることになります。

 この杉の並木道を遊び場として育った子供たちの中からは、検事や将校、海の向こうにちいさいながら農園をもった人などがでてくる。将校や子どもの遊びにラッパがでてくるのは時代背景をうかがわせます。

 この話で、父親は、これまで何一つ頼んだことがなかった虔十のために、杉苗を買うことを許し、兄は苗植えの手助け、町がひらけていくなかで、虔十のたった一つの形見だと残してくれた身内の存在が欠かせません。


 絵は、紙彫ということですが、技法にもさまざな方法があって、楽しませてくれます。

 印象に残るのは、杉の苗を植えている虔十を見下ろしている、きせるをくわえた大きな平二と、月のしたで横たわっている涅槃像のような虔十の姿です。

 この公園の名付け親は、ここで遊んで、いまはアメリカの大学で教授になっている若い博士ですが「ああ全く、たれがかしこく、たれがかしこくないかはわかりません。ただどこまでも十力の作用は不思議です。ここはもういつまでも子供たちの美しい公園です。どうでしょう。ここに虔十公園林と名をつけて、いつまでもこの通りを保存するようにしては。」と提案します。 

 十力というのはなじみがないが、ネットで検索すると二つのものがある。一つは、仏がもつ10種の智力。
 処非処(理と非理を弁別する)、業異熟(業と因果を知る)、静慮解脱等持等至(三昧などの深浅を知る)、根上下(衆生の資質を知る)、種種勝解(衆の望みを知る)、種種界(衆生の本性を知る)、遍趣行(衆生が諸世界へ赴く行因を知る)、宿住随念(自他の過去世を思い起こす)、死生(衆生の死後善悪などを知る)、漏尽(涅槃に至る方途を知る)などの各智力。

 もう一つは、菩薩がもつ10の力。
 深心力・増上深心力・方便力・智力・願力・行力・乗力・神変力・菩提力・転法輪力など。 


空にうかんだお城・・フランス

2015年07月02日 | 昔話(ヨーロッパ)

       空にうかんだお城 フランス民話/山口智子・訳/岩波書店/1981年初版


 この話のなかに、空中に4本の金のくさりでぶらさがったお城がでてくる。
 多分、こうした状況は、日本の昔話にはでてこない。

 すぐに、くさりはどこに固定されていたのが、疑問にうかぶが、このあたりが昔話らしいところ。

 少し年長になると子どもたちからアクションがありそうだが、子どももお伽噺とこころえているので素直に受け取って、不思議な世界をうけとめてくれそう。

 冒頭に、一人の若者と三人姉妹がでてきて、この三人姉妹が魚の王さまと鳥の王さま、ねずみやハツカネズミの王さまと結婚。

 若者は、この王さまから金貨と、古ぼけたたばこいれをおくられる。
 お金はつかえばなくなる。
 お金目当で、友達となっていたみんなは、お金がなくなると、しらんぷり。

 このあたりは、今も同じか。

 もとの家に帰って、見つけたのが、古いたばこいれ。
 このたばこいれは不思議で、ほしいものを何でも出してくれる。

 やがて、このたばこいれを利用して、お姫さまと結婚し、空中に浮かぶお城を出現させます。

 しかし、いいことは続かず、たばこいれは他人の手にわたり、お姫さまと城はどこかに消えてしまいます。
 やがて、若者は、お姫さまと城を探す旅に。30分は超えそうなお話。                 


いっしょにくらせなかったシカとヒョウ・・ブラジル

2015年07月01日 | 昔話(南アメリカ)

     いっしょにくらせなかったシカとヒョウ/ブラジルのむかしばなし/カメの笛の会/東京子ども図書館編/2011年初版


 シカが家をつくろうと、木の枝をきって地面にさして、次の日から仕事をはじめようと立ち去ります。

 次の日、やってくると、家のよすみに柱がたっています。シカが屋根の骨組みをつくって、翌日きてみると、板壁ができています。

 じつは、ヒョウも家を建てようと思って、シカのあとで、仕事をはじめていました。
 お互いに、神さまがてつだってくれていると思っていたのです。

 やがて家ができあがあり、おたがいに、この家にすむことに。
 よく話し合ってみると、神さまは家をたてるのにはなにひとつ手伝っていないことがわかります。
 同居生活をはじめたシカとヒョウ。

 ヒョウが狩りに出かけてもちかえったえものは、牡鹿。シカは気分が悪くなって食べられません。

 次にシカが狩りに出かけますが、狩りができないシカは、アリクイをうまくだまし、アリクイが仕留めたヒョウを持ち帰ります。今度はヒョウが食べられません。

 お互いに疑心暗鬼になった二匹は・・・・。

 お互いに神さまが家をつくるのを手伝ってくれていると思ったセリフ。

 シカは「ほかの動物の肉を食べたりしないし、だれにもわるいことはしないもの」
 ヒョウは「神さまがおれをたすけてくれたんだ。これもみな、おれが、この世でなんの役にも立たない、いきていてもしょうがないやつらだけを、しかも、自分が生きるのに必要なだけしか殺さないからなんだ」

 アリクイのことをもっと知る必要がありそうだ。