出産前に子の病気の可能性を告げられた妊婦の支援に取り組む林伸彦さん 「時の人」
2019年12月19日 (木)配信共同通信社
産婦人科医として働く傍ら、NPO法人「親子の未来を支える会」の代表として、出生前に子の病気や障害の可能性を指摘され、予期せぬ不安に直面した妊婦や家族を支援している。「妊婦の気持ちに寄り添い、あらゆる情報提供をして、ベストな判断ができるよう体制を整えたい」と語る。
赤ちゃんに何らかの生まれつきの異常が見つかる割合は25人に1人。超音波エコー検査の精度が高まり、妊婦健診で見つかる頻度は増えている。妊婦の血液から胎児の染色体異常を調べる新出生前診断では、陽性と判定された妊婦の多くが葛藤の末に中絶を選ぶ現実がある。
研修医時代、米国の病院でおなかの赤ちゃんの病気を治す胎児治療を学んだ。「早期に治療すれば進行を防げる病気もあると知った。まずは病気を告知された後の支援をしたい」と2015年に会を立ち上げた。
自分と同じ経験をした女性や家族に匿名で相談できるピアサポートサービス「ゆりかご」を16年に開始。患者会を紹介し、価値観が異なる家族が意思決定する際の支援も手掛ける。「病院でも患者団体でもない中立な立場だからこそ、橋渡しができる」。悩みに応じてスタッフが専門家を紹介する「胎児ホットライン」の20年開設に向け、冊子の作成や配布に奔走している。
「病気や障害があっても、子を温かく迎える社会の雰囲気が必要。落ち着いて選択肢を知り、どんな選択をしても後悔しないようサポートしたい」。茨城県出身。34歳。