米FDA、新型コロナ治療法として回復患者の血漿を緊急使用許可
2020年9月10日(木)米国食品医薬局は8月23日、新型コロナウイルス感染症の回復患者の血漿を治療薬として使う緊急使用許可を出した。治療効果に関するエビデンスが不足している中、今後のワクチンの承認にも影響を与えそうだ。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬として、回復患者の血漿(けっしょう)を広範に緊急使用することが、米国で承認された。しかしながら、治療効果を示す証拠は限られている。
ホワイトハウスが「画期的」だと大々的に宣伝するこの治療法は、現在闘病している患者に回復患者の血漿を提供するものだ。今年の早い段階から、中国やオランダで試みられている。米国食品医薬局(FDA)によると、米国でも研究の一環としてすでに7万人以上に投与されており、医療費が免除される場合もあるという。
仕組みはこうだ。回復患者の血漿にはウイルスの排除に役立つ抗体が含まれている。特に感染初期に血漿が投与された場合に死亡率が低下する可能性があることが、いくつかの研究によって示唆されている。FDAは、この治療法に緊急使用許可を出した際にこうした可能性に言及し、回復期血漿を「有効性の見込める」治療法だと見なしている。しかし、FDAは同時に、回復期血漿を新たな「標準治療」として認定できるまでには至っていないと述べている。
FDAは、公衆衛生の緊急時においては、薬剤の効果を示す決定的な証拠がなくとも、「効果があるかもしれない」薬剤の広範な使用を承認する権限を持っている。今年の3月には、2つの抗マラリア薬に緊急使用許可を与えたが、6月に撤回した。その理由についてFDAは、2つの薬剤(ヒドロキシクロロキンとクロロキン)には効果が見込めず、ヒトの心臓に副作用を生じたためだと説明した。
米国内での血漿療法の取り扱いに批判的な医師もいる。医師には臨床試験以外での投与が何万件も許可されているため、治療効果に関する決定的な証拠を集めるのが困難になっているというのだ。有効性の証明には、ある患者に血漿を与え、別の患者には偽薬を与えるような比較試験が欠かせない。今回出された緊急使用許可では、個々の患者に血漿を投与する際に、4月以降必要とされていた書類が事実上廃止された。血液センターは、新型コロナウイルス感染症の回復患者からの献血を積極的に募っている。