唐招提寺

2021-08-25 22:43:54 | 旅行記


所用で奈良に赴いたついでに、西ノ京へ。お目当ては唐招提寺。これまでに何度も訪れた寺院です。
写真家 土門拳のエッセイのなかで、唐招提寺の撮影話が登場します。土門拳は被写体に肉薄した画風が特徴的ですが、ここ唐招提寺の撮影に幾度も訪れるうち、仏像や建築の記録的な写真から離れ、その場にある雰囲気を捉えたくなったようです。

「全体がかもす雰囲気、鑑真という高僧が具現しようとした戒律の霊場としての、やや異国的だが唐風の大らかな雰囲気を三枚か四枚の写真のなかにどう伝えるかに苦労した。そして選んだものは、たそがれ近い午後の光だった。」

ちょうどそんな時間帯に居合わせることができた幸運に感謝しつつ、土門が感じたであろう雰囲気を追認しようと、ぼくも粘ったのでした。
土門のような写真は撮れるべくもないけれど、たそがれの薄日のなかで、この赤味を帯びた列柱が、たんなる柱の連なりではなく、懐深くあらゆる者の思いを迎え入れるために千二百年の歳月を刻みつづけてものであることは、やはり直感されるものです。
建築や空間が、たんに機能を果たすだけでなくて、何らかの表現を伝えようとして造られたのならば、その「本懐」が表わされる時間帯や光の諧調というのが、やはりあるのかもしれません。
さてさて、ぼくの拙作はどうか・・・。


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