Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

新音楽を浪漫する

2021-03-30 | 
指揮者オクサーナ・リニヴのイタリアデビュー無観客中継を観た。予想以上に素晴らしい内容だった。指揮する管弦楽団はボロョーニャの市立歌劇場の座付なので技術的にも期待していなかったが、中編成でソーシャルディスタンシングの楽団としてはとても健闘していて、素晴らしい美点も愉しめた。
4. Stagione sinfonica in streaming - Lyniv


一曲目のモーツァルトの小ト短調交響曲はリニヴの得意な作曲家の作品でもあるのだが、久しぶりに現代的な管弦楽で聴いて、嘗てのブルーノ・ヴァルター指揮の演奏をどうしても思い浮かべた。昨夏のザルツブルクではデビューのマルヴィッツ指揮をカール・ベーム指揮とどうしても比較してしまったのだが、やはり女性指揮者はその音楽的な特徴から嘗ての歴史的な流派などを簡単に乗り越えてしまう魅力がある。

マルヴィッツの場合も平素のその指揮を知っている者は一様に想像以上に上手く行ったという意外性への驚きの声が聞こえたが、今回のリニヴの指揮も予想以上に上手く運んでいたのではなかろうか。

特に二曲目のシューマンの交響曲二番は、たどたどしい英語で説明していたが、梅毒の作曲家が神経を逝かす迄の過程をそこに見る。まさしくトーマス・マンの「ファウスト博士」の内容の様なシューマンの幻想の世界をそこに語る。ピアノを使わない作曲とはどのように頭の中で鳴り響くか。

ロマンティックな作品をどのように演奏するかで様々な試みがあるが、古楽器風の音で演奏するとかもある。今回の演奏は、なんといってもその音響が素晴らしく、それだけでなく手元にあるジョゼッペ・シノポリがヴィーナフィルハモニカ―などを指揮したものを比較しても、そこまでの斬新な響きが出ていない。まさしく新音楽の響きがロマンの響きである。

2012年に亡くなったエリオット・カーターは決してネオロマンティズムの作曲家ではなかったが、その新音楽の響きの弦楽四重奏曲を書いている。今回のリニヴ指揮の座付管弦楽団が奏でた音は正しくそれに近い。彼女が一方でとても密な音を出させれるのはキリル・ペトレンコの許で学んだものに違いない。

そして何よりも上のシノポリの指揮に比較すると明らかにドイツ音楽のイディオムを身に着けていて、独墺ロマン主義の作品を演奏する時に最も重要なものではなかろうか。

彼女がティーレマンの指揮のLPで勉強したというのもこうしてみると決して外交的な辞令でもなく政治的に裏のある発言でもなくて、本当の話しではないかと思うようになった。

このように考えると、サイモン・ラトルを次期監督に指名したBR交響楽団であったが、その体制では到底世界の楽壇を先導することはないが、オクサーナ・リニヴが選ばれていたならばベルリンを先行するミュンヘンの楽壇になっていた可能性がある。

バーデンバーデンに電話した。カードで先行予約分の支払いを済ませた。キャンセル分は其の侭触れないでおいた。五月の公演について探ってみたが、どうもまだ決定的な情報はなさそうだった。決まり次第連絡すると言っても発売が4月9日になっているので、決定まで一週間ぐらいしかない。さてどうなる事やら。一週間ぐらいしかない。さてどうなる事やら。



参照:
夏時間明けに様子を窺う 2021-03-29 | 暦
九月のドイツよりも悪い 2020-11-26 | マスメディア批評
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする