音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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◆2010年ショパン国際ピアノコンクール終了・結果発表、優勝者は

2010年10月25日 | ◆一言◆
2010年、
クラシック業界にとってのビッグイベント、合わせて、
作曲家本人の「生誕200年」という記念すべき年に重なって開催された
「ショパン国際ピアノコンクール in ワルシャワ(ポーランド)」が終了しました。


数多くの世界に活躍するピアニスト達を
半世紀以上に渡って送り出してきた
歴史深く存在感の大きなこのショパンコンクール、
今年2010年の優勝者は、
マルタ・アルゲリッチ以来の女流ピアニスト、


ユリアナ・アヴデーヴァYulianna Avdeevaさんとなりました。


優勝候補予想には名の上がっていなかった彼女、
結果発表の現場、その後の世の中の反応は様々とも伝わってきます・・・

しかし実際の彼女の演奏を、
コンクールのホームページにある動画記録にて聴いてみますと、(今回の
ショパンコンクールの全奏者の全演奏が全て視聴可能なのは画期的です!!
http://konkurs.chopin.pl/en/edition/xvi/video/archive
いつまで見られるのでしょう・・・)

彼女は、
●立派に、プロのピアニストとして出来上がっている実力(大半の
 このコンクールの出場、がそうでしょうが)、
●スラリと首が座り、余計ないやらしい動きの無い洗練された印象のある所作、
●ショパンの音楽・楽譜がよく勉強されているからこその
●抑揚に富む・歌心・そしてルバートある演奏などは、
これからショパンコンクール優勝者として活躍するピアニストたる
充分の可能性を有した人であることが分かる気がいたします。

さらにもうひとつ思い浮かぶことは、
彼女の「途切れぬ集中力」というものも、
世界を股に欠けて活躍することを義務とされる
「ショパンコンクール優勝者」として
信頼に足るものであった、という要素も
審査には加味されていたかもしれまれん。

「途切れぬ集中力」
ここに、クールな仮面の下に脈々と流れる
「ロシア女性の底知れぬ強さ」というものが
垣間見られる気もします・・・


2位には二人の奏者が名を連ね、
一人は20歳のルーカス・ゲニューシャスLukas Geniušas(ロシア・リトアニア)、

1位のアヴデーヴァに似て、
アグレッシヴになり過ぎることのないショパンの演奏(一般的に
アグレッシヴになり易い曲の箇所を敢えて抑えるのが彼の特徴!?)は、
このコンクールの受賞者たる大切な資格を有していると
言うことができるのかもしれません。

もう一人は、前回2005年の当コンクールにも出場していた今回2度目のチャレンジ、
オーストリア人のインゴルフ・ヴンダーIngolf Wunder 。

すでに世界中で演奏活動を展開している実力派ピアニストとして、
更なる「ハク」を付けることとなりました彼は、
コンクールの人気投票で堂々の一位、
ファイナルの協奏曲では、
会場のスタンディングオベーションを得たとのこと!!

魅力あるピアニストであることは、
間違いなさそうです。


それにしても、
入賞者・あるいは選にもれた奏者・
あるいはステージに進出できなかった奏者の中にも
魅力あるピアニストは、実に大勢いたことでしょう。


準決勝から決勝に至る過程で、
実に多くのロシア系・東ヨーロッパ系の奏者が名を連ねました。

誰もが優勝してもおかしくないような実力の持ち主だらけ!?
今コンクールを機に、もしかすると
21世紀ピアニストの「ロシア5人組」なる呼ばれ方をしてもいいような
凄い人達が現れたようにも感じられます。

Ms Yulianna Avdeeva Russia
Mr Lukas Geniušas Russia/Lithuania
Mr Daniil Trifonov Russia
Mr Nikolay Khozyainov Russia
Mr Miroslav Kultyshev Russia

(ファイナル進出のロシア系奏者一覧)


優勝してもおかしくない実力、
あるいは、優勝者アヴデーヴァの名が予想にあがらないほど
魅力・実力ある奏者が名を連ねていながら、
彼らがNo.1を得られなかったのは、
このショパンコンクールの「ショパン」たる性格を尊重した結果と
やはり言えるのかも知れません。

ショパンの音楽が荒々しく奏されるとき
よく言われるのは、「ショパンはリストではない」という・・・

1810年生まれのショパン、
1811年生まれのリスト、
両者の性格を端的に現した文章を、
愛読書E.フィッシャー著『音楽観想』から抜粋してみます。



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大きな集会、喧騒な公の場所を、彼は好まなかった。
彼の神経はどんなに些細な刺激に対しても、
あまりにも敏感に、またあまりにも強烈に反応したから、
彼はずいぶんつらい想いを耐えしのばねばならなかった。
そして、
聴衆が彼にはただときおり共感するにすぎないのに反して、
力強く、華麗な巨匠リストが彼のポロネーズを演奏すれば
爆発的な拍手喝采を博するのを
彼はただ憂鬱げに見まもっているより
どうしようもなかったのである。



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いやはや・・・
2010年のショパンコンクールは、とにもかくにも、終わりました。

コンクールを、「生もの」として扱い・愉しむ過程、
今日の世界では、インターネットを通じて、各自のパソコン画面で
緊張感あるコンクールの生演奏を視聴できるという環境が整い、
コンクールの最中は、様々なコンテスタントの演奏を聴きながら、
どんな素晴らしい演奏か(あるいは、素晴らしくない演奏か!?・・・この
「批判的な耳」を人が持つのもまた事実でしょう・・・(悲しいかな自分も含め))
を期待しながら、世界中の人々が耳を傾けます・・・


しかし、
終わってしまうと、結果の順位を念頭に置かずして、
各奏者の演奏を聴くことが難しいのは、
人としての正直なところなのかも・・・とも思われます。

もちろん、
先入観・肩書きにとらわれず、
その時・その場の「音楽そのもの」を愉しむ・聴き取る能力は大事。

とはいえ、
音楽・演奏という、
目には見えず、形にも残らない現象を
順位付けし、誰が勝る・誰が劣るなどと評価するのは
決して簡単なことではありません。


ショパンコンクールという、特別な舞台。

最高潮のプレッシャーを受けるその場に全力を尽くさんと立った
世界中から集まった大勢のピアノ奏者に敬意を表しつつ、
祭りは終わり、
再び、「音楽そのもの」を純粋に愉しむ「日常」へと
私は戻っていきたいと思います。











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