ベートーヴェンがロ短調h-mollのことを「Schwarze Tonart黒い調性」と呼んだ理由が解った気がしました。ロ短調に現れる至福!?を思わせる「ナポリの和音」はドミソCEG。清らかなハ長調の響き。しかしロ短調において、これは稀に現れる経過でしかなく、これ儚い夢の如く!?
ロ短調において、せっかくの美しい「ナポリ」が、ドミソCEGというハ長調の響きで現れたとしても、それはほんの束の間でしかなく、音楽は再び暗く痛切なロ短調へ戻ります・・・清らかな光を目の当たりにしながらも、元の世界へ帰らねばならない・・・それは辛さをより一層強くさせる効果があるよう、思いました
今ふと記憶が甦りました。シュナイト・バッハ合唱団での《ロ短調ミサ曲》、シュナイト先生は冒頭の《Kyrie》で、何度も「テーマのナポリを大事に!」と指導されていました・・・ロ短調における「C(ド♮)」の音・・・その清らかな残酷さを、今宵なぜか感じております・・・