吉田秀和著 『現代の演奏』新潮社より抜粋
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〈名手と呼ばれるこれらの例外的存在がなかったら、
一つの文明社会がどんな物になるかは想像もつかない。
名手たちの仕事や影響がなかったら、
音楽会の聴衆を形作っているこれら教養ある選良たちが
どうして出来上がるのか想像に困難だし、
またこの聴衆がなかったら、
音楽的創造が、つまり作曲家の芸術が、
一体どうなってしまうものやら考えもつかない。〉
この文章の重さが、私には突然感じられてきた。
ごめんなさい。
私は、大袈裟な言い方は、したくない。だが、
重い文章というものが、本当にあるのである。
文章というものは、時に、
本当に重大な責任をのせているものである。
そうしてデュアルメのこの文章は、
ある一つの文明社会の形態と内容の存続にかかわる、
重大な点を示唆している。
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