・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ようするに《ペレアスとメリザンド》は、
男女の三角関係の話し、と言ってしまってよいようです。
その関係・成り行きについて、少々考えてみたく思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【1幕1場】で、ゴローは森の水辺にてメリザンドに出会う。
一人きりの彼女を心配して、ついて来るよう促す。
【2幕1場】でのペレアスとメリザンドの会話では、メリザンドが
「ゴローが私にキスしようとしてきた」と証言します…が、
そのようなシーンはここでは一切描かれていませんので、おそらくは、
【1幕1場】が終わって二人が退場した後の出来事ということになるのでしょうか?
【1幕2場】は、ゴローがメリザンドを連れて王国に到着する知らせ。
メリザンドはゴローの2番目の妻となります。なぜならゴローには息子である少年イニョルドがいるから。
【1幕3場】で、ペレアスとメリザンドは初めて顔を合わす。一見、特別なことはないよう!?
【2幕1場】、ペレアスはメリザンドを連れて公園にある「盲人の泉」へ。二人っきり。
ゴローとの関係について問うペレアスが、二人のことを気にしているのは明白でしょう。
メリザンドは「ゴローにキスしたくはなかった」と言う…
ここで注意すべきは、
二人はこの時点ではまだお互いが好き合っていることを「知らない」という事実があることです。
お互いが好き合っていることが分かるのは【4幕4場】にて。これはなかなかドラマティック!
よって、【2幕1場】での二人のやりとりは、心の裏で何を思いながらの会話なのか…
実に微妙な心理が表現されているところとなります。
メリザンドが、ゴローにもらった大切なはずの指輪を投げて遊び、そして
「P:落ちちゃう、気を付けて!」というペレアスの忠告も空しく、
本当に水の底へ落としてしまい…
「M:無くなってしまった…」と…
ペレアスが慰めて「きっとまた見付かる、あるいは他の指輪でも」と言うと、
「M:新しい指輪もいらない、無くなってしまった…」と言い張るメリザンド…
そして「さて、どうしましょうかしら?」と開き直るような!?メリザンド…
悪びれている様子が無いのは、その時の和音が「G、C、F」という、
あまりにもスッキリとした、臨時記号の全くない音達ゆえに、
ドビュッシーが、彼女の天然無垢さを表現しているよう、解釈できましょう。
…メリザンドは、意図的に指輪を無くしたのかも…!?
それでも「M:ゴローに指輪のことを聞かれたらどうしよう…」というメリザンド…
それにペレアスが答えるは「真実を、真実を!」
これ…どういう意味深な内容が含まれているのか!?興味深く思われます。
「真実」とは、単純には、指輪を落としてしまったということなのか、それとも
深読みするならば、ペレアスとメリザンドが相思相愛であることなのか…!?
…これはなかなか象徴的な言葉かもしれません…
【2幕2場】は、狩で落馬し傷ついたゴローとメリザンドのやり取り。
ちなみに、馬が突如として暴れだしたのは正午の鐘が鳴った時とのこと…
この「正午」もキーワードのようで、その他には、
前場にてメリザンドが指輪を落とした時、ペレアスは正午の鐘を聞いていたとのこと…
そしてもうひとつのは、【3幕1場】にてメリザンドの独唱の最後「私は日曜の正午の生まれ」…
すなわち「正午」は、メリザンドの時間ということ!?しかし、
それが不吉に思えてならないのは、ネガティヴな事件が起こるばかりだからでしょうか…
すなわち、そもそも全てが出自を含めて、悲劇…ということ!?
場内の一室におけるベットの上で休むゴローと、介抱しようとするも拒まれるメリザンド…
ゴローのマイペース、メリザンドの悲しげで幸せではないという様子…
ゴローは「G:ペレアスのことでは!?」と疑ってはみるものの、
メリザンドの「M:ペレアスとは片言話すだけ。彼は私のことが好きではないよう」
という言葉を真に受けてか!?「彼は変り者で若いから、気にしないよう」話を収めるゴロー。
指輪が無いことに気付き怒り、「ペレアスと一緒に探しにゆけ!」と言い放つゴローには、
その時、二人の相思相愛を疑う気持ちは無かったということになるのでしょうか…?
それとも単なる怒り任せの出任せ?
【2幕3場】では、ペレアスとメリザンドが二人で
闇夜の洞窟へと指輪を探しに行くシーン。そこに居るのが
3人の目の見えない乞食達…
この物語で頻繁にあらわれる「盲目」という事にも、意味はありそうです…
盲目の乞食達…老アルケル王が失う視力…「盲人の泉」…
登場人物はみんな、心の盲人ということ!?
そういえば、オペラ冒頭の【1幕1場】の最後、
ゴローが「私も迷子だ」と言う、その言葉も意味深なように
思い出されました…
メリザンドとの出会いを機に、彼女も、ゴローも、ペレアスも、
関係者(アルケル王、ジュヌヴィエーヴ、少年イニョルド)皆
何かを見失って、幸せではなさそう…という…!?
「迷子」とは、そんな境遇を象徴する言葉!?
【3幕1場】
このオペラで最も有名な「塔」のシーン。
メリザンドが塔の窓辺にて髪を手入れしているところ、下にペレアスがやってくる。
ペレアスは、自分が旅に出なければならないことを伝え、
その前に、なんとかメリザンドに近付きたい、手を触らせて!と懇願…
メリザンドも応えようとするも、塔の上下で、二人が手を触れあうことは出来ず…
しかし、長い髪の毛が落ちると、それはペレアスの元に到達…
ペレアスは、髪と好き勝手に戯れる…
「M:離してください」となんどもせがむメリザンド、でも、
「P:一晩中はなさない」と言われ、ついには「ペレアス、ペレアス」と呼ぶメリザンドに、
私は、彼女の心境の変化(恋の前進!?)を解釈します。
音が官能的で、そしてうっとりと遅いのです…
この髪を通じての逢引きの現場は、メリザンドの夫ゴローに見付かってしまい、
二人は「貴方達は子供のようだ!なんたる子供だ!」と叱られてしまいます…
【3幕2場】では、ゴローがペレアスを誘って、城の陰湿な地下室へと行く様が不吉にも描かれ、
「P:息苦しいから出よう」と言うペレアス、続く【3幕3場】では風景が一転して海の見える城外へ!
ペレアスは安堵し喜びを歌います。一方のゴローは、先の二人の逢瀬を咎め、そして
メリザンドのお腹の中には赤ん坊がいることを打ち明け、これ以上、
繊細な彼女に近付き惑わすようなことがあってはならないと、忠告します…
【3幕3場】では、ゴローの小さな息子、少年イニョルドが初登場(今回は欠席…)。
イニョルドに、普段のペレアスとメリザンドの様子を問い詰めるゴロー…
しかし、浮気の決定的な証拠は何一つ得られず…
(なぜなら二人が好き合っていることはお互いまだ知らないのだから)
更には、イニョルドを肩車して、城の部屋の中に二人でいる
ペレアスとメリザンドの様子を報告するよう、強います…
いくらイニョルドが「二人は何もしていない、たた佇んでいるだけ」
と言っても、ゴローは信じないで、二人の様子を更に問い詰める…
怖がり、痛がるイニョルドは、実に可哀そう…
ゴローの疑心暗鬼は、既にすっかり出来上がってしまっているよう…
【4幕1場】
いよいよ出発が明日に迫るペレアスは、メリザンドに
以前二人で行った「盲人の泉」で待ち合わせる約束をこじつけます。
【4幕2場】
塔のシーンや、イニョルドから聞いた話の自分勝手な誤解をするゴローは、
疑心暗鬼に駆られてか、酒に酔ってか!?
メリザンドに罵詈雑言を浴びせかけます…
「G:おまえに触られたくはない、あっちへ行け!」
「G:剣はどこだ!?渡せ!ただ切り味を調べたいだけだ…」
「G:何を震えている!?お前を切るなんて使い方はしない…」
「G:この大きな目は何を物語る!?」
「G:偉大なる無垢…なんたる偉大さ!」
「G:手を渡せ!あぁ!その手は暑過ぎる!あっちへ行け!胸糞悪い!」
酷い言葉の連続…ついには髪を掴まえて、
右へ左へ、前へ後ろへ、跪かせ…
そして「私は老いぼれのように笑っている!」と言って…
落ち着きを取り戻しても、「大したことはない、なるようになる」
と不気味に言い捨てて去るゴロー…
「M:彼はもう私を愛していない…私は幸せではない!」とメリザンド…
【4幕3場】は、こちらも無垢な少年イニョルドの独奏…
舞台には現れない羊飼いを相手に、無邪気に戯れる様は、逆に痛ましくもある…嵐の前の静けさ!?
【4幕4場】
ペレアスは「盲人の泉」にてメリザンドを待つ…
「P:最後の夜」という言葉に始まるこの場面は、やはり不吉…
会うべきではなかったのでは!?いや、会って話をすべきか!?混迷のペレアス…
ついにメリザンドが現れ、ペレアスは彼女を日陰の方へ、人目についてはならないから、
しかし、メリザンドはそれを拒否し、明るいところに居たい、と…
メリザンドが遅れてきたのは、ゴローが眠る(悪夢にうなされていたよう)のを待って、
しかも、衣が引っかかって破けてでも走ってきたとのこと…
ペレアスは、自分がなぜ遠くへ行き、そして二度と帰っては来ない理由を告げます。
突然にメリザンドにキスをし「P:君が好きだ」と告白…
すかさず「M:私もあなたが好き」という返事…
自分の耳を疑うペレアスの興奮!
「P:一体、それはいつから!?」
「M:あなたに最初に会ったその時から…」
二人の愛はこの瞬間に完全に成立した、と言えるのでしょうか。
二人は好き合っていた、しかしそれを知らずに時を過ごしていた…
メリザンドが妊娠していることを思うと、数か月という時が過ぎていることが分かります…
そしてついに、お互いの気持ちを確かめ合うに至ったのです…
今度は「P:貴女の顔がハッキリみたい、明るいところへ出よう」というペレアスに対して
「M:いや、暗いところにいましょう、その方が寄り添っていられる…」
先ほどとは意見が逆転している二人…
すると、城の門が閉まる音が聞こえてくる…
そうなると二人は戻ることができず外に取り残されてしまうことに!しかし
メリザンドは言います、「M:その方がよい、その方がよい!」
ペレアスも「P:そうか、もう戻る必要はない」と納得…
「M:私たちの後ろに誰かいる…」
「P:誰もいないさ、見て、僕たち二人の影があんなにも遠くで抱き合っている…」
「M:私たちの影の一番先のところに彼がいる」
「P:誰が?」
「M:ゴローが…」
「P:ゴローが!?」
「M:剣を持っている…」
「P:僕らを殺そうとしている…メリザンド、ここを離れて」
「M:いや、離れない!」
「P:殺されてしまうよ!」
「M:その方がよい、その方がよい!」
二人は夢中で抱き合う
「P:おぉ!おぉ!星々が落ちてくる!」
「M:私も!私も!」
「P:もう一度!もう一度!頂戴!頂戴!」
「二人で:全てを!全てを!全てを!」
ゴローが二人に襲いかかり、ペレアスを刺す
ペレアスは泉のふちに倒れて、メリザンドは恐怖にかられて逃げ出す
今回の公演では、ここで終わり…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【5幕】もあるのですが、ここでは塔の一室にて
倒れて動けなくなったメリザンドを、
アルケル王と医師、そしてゴローも加わり、
皆で和解するシーンとなります…
ゴローは謝罪し、メリザンドは恨んでいない、赦しています、と。
メリザンドは赤子を生み、そして死んでしまう…
悲しい物語です…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
最後に、この三角関係をまとめてみますと、
ゴローとメリザンドが出会い、結婚した。
メリザンドとペレアスが、惹かれ合っていた。
ゴローはそれに気づき始め、疑心暗鬼に駆られる…
だけど、ペレアスとメリザンドはお互いの気持ちを知らないで過ごしている…
それまで、二人は一線を越えてはいないということに…
最後の【4幕4場】で、愛を打ち上げ合う二人は
ついに口づけをし、抱き合ったりする。
それをゴローは見ている。予想していたように…
そしてペレアスを刺し、殺害に至る…
ゴローの、二人に対する疑惑は、正しくもあり、また間違ってもいた、
ということになりましょうか。
そしてペレアスとメリザンドの二人は、
最後の最後、ようやく愛を確かめ合えた!その直後に、
死をもっておしまいとなってしまうという…
…愛の悲劇、ということでしょうか…
♪
ようするに《ペレアスとメリザンド》は、
男女の三角関係の話し、と言ってしまってよいようです。
その関係・成り行きについて、少々考えてみたく思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【1幕1場】で、ゴローは森の水辺にてメリザンドに出会う。
一人きりの彼女を心配して、ついて来るよう促す。
【2幕1場】でのペレアスとメリザンドの会話では、メリザンドが
「ゴローが私にキスしようとしてきた」と証言します…が、
そのようなシーンはここでは一切描かれていませんので、おそらくは、
【1幕1場】が終わって二人が退場した後の出来事ということになるのでしょうか?
【1幕2場】は、ゴローがメリザンドを連れて王国に到着する知らせ。
メリザンドはゴローの2番目の妻となります。なぜならゴローには息子である少年イニョルドがいるから。
【1幕3場】で、ペレアスとメリザンドは初めて顔を合わす。一見、特別なことはないよう!?
【2幕1場】、ペレアスはメリザンドを連れて公園にある「盲人の泉」へ。二人っきり。
ゴローとの関係について問うペレアスが、二人のことを気にしているのは明白でしょう。
メリザンドは「ゴローにキスしたくはなかった」と言う…
ここで注意すべきは、
二人はこの時点ではまだお互いが好き合っていることを「知らない」という事実があることです。
お互いが好き合っていることが分かるのは【4幕4場】にて。これはなかなかドラマティック!
よって、【2幕1場】での二人のやりとりは、心の裏で何を思いながらの会話なのか…
実に微妙な心理が表現されているところとなります。
メリザンドが、ゴローにもらった大切なはずの指輪を投げて遊び、そして
「P:落ちちゃう、気を付けて!」というペレアスの忠告も空しく、
本当に水の底へ落としてしまい…
「M:無くなってしまった…」と…
ペレアスが慰めて「きっとまた見付かる、あるいは他の指輪でも」と言うと、
「M:新しい指輪もいらない、無くなってしまった…」と言い張るメリザンド…
そして「さて、どうしましょうかしら?」と開き直るような!?メリザンド…
悪びれている様子が無いのは、その時の和音が「G、C、F」という、
あまりにもスッキリとした、臨時記号の全くない音達ゆえに、
ドビュッシーが、彼女の天然無垢さを表現しているよう、解釈できましょう。
…メリザンドは、意図的に指輪を無くしたのかも…!?
それでも「M:ゴローに指輪のことを聞かれたらどうしよう…」というメリザンド…
それにペレアスが答えるは「真実を、真実を!」
これ…どういう意味深な内容が含まれているのか!?興味深く思われます。
「真実」とは、単純には、指輪を落としてしまったということなのか、それとも
深読みするならば、ペレアスとメリザンドが相思相愛であることなのか…!?
…これはなかなか象徴的な言葉かもしれません…
【2幕2場】は、狩で落馬し傷ついたゴローとメリザンドのやり取り。
ちなみに、馬が突如として暴れだしたのは正午の鐘が鳴った時とのこと…
この「正午」もキーワードのようで、その他には、
前場にてメリザンドが指輪を落とした時、ペレアスは正午の鐘を聞いていたとのこと…
そしてもうひとつのは、【3幕1場】にてメリザンドの独唱の最後「私は日曜の正午の生まれ」…
すなわち「正午」は、メリザンドの時間ということ!?しかし、
それが不吉に思えてならないのは、ネガティヴな事件が起こるばかりだからでしょうか…
すなわち、そもそも全てが出自を含めて、悲劇…ということ!?
場内の一室におけるベットの上で休むゴローと、介抱しようとするも拒まれるメリザンド…
ゴローのマイペース、メリザンドの悲しげで幸せではないという様子…
ゴローは「G:ペレアスのことでは!?」と疑ってはみるものの、
メリザンドの「M:ペレアスとは片言話すだけ。彼は私のことが好きではないよう」
という言葉を真に受けてか!?「彼は変り者で若いから、気にしないよう」話を収めるゴロー。
指輪が無いことに気付き怒り、「ペレアスと一緒に探しにゆけ!」と言い放つゴローには、
その時、二人の相思相愛を疑う気持ちは無かったということになるのでしょうか…?
それとも単なる怒り任せの出任せ?
【2幕3場】では、ペレアスとメリザンドが二人で
闇夜の洞窟へと指輪を探しに行くシーン。そこに居るのが
3人の目の見えない乞食達…
この物語で頻繁にあらわれる「盲目」という事にも、意味はありそうです…
盲目の乞食達…老アルケル王が失う視力…「盲人の泉」…
登場人物はみんな、心の盲人ということ!?
そういえば、オペラ冒頭の【1幕1場】の最後、
ゴローが「私も迷子だ」と言う、その言葉も意味深なように
思い出されました…
メリザンドとの出会いを機に、彼女も、ゴローも、ペレアスも、
関係者(アルケル王、ジュヌヴィエーヴ、少年イニョルド)皆
何かを見失って、幸せではなさそう…という…!?
「迷子」とは、そんな境遇を象徴する言葉!?
【3幕1場】
このオペラで最も有名な「塔」のシーン。
メリザンドが塔の窓辺にて髪を手入れしているところ、下にペレアスがやってくる。
ペレアスは、自分が旅に出なければならないことを伝え、
その前に、なんとかメリザンドに近付きたい、手を触らせて!と懇願…
メリザンドも応えようとするも、塔の上下で、二人が手を触れあうことは出来ず…
しかし、長い髪の毛が落ちると、それはペレアスの元に到達…
ペレアスは、髪と好き勝手に戯れる…
「M:離してください」となんどもせがむメリザンド、でも、
「P:一晩中はなさない」と言われ、ついには「ペレアス、ペレアス」と呼ぶメリザンドに、
私は、彼女の心境の変化(恋の前進!?)を解釈します。
音が官能的で、そしてうっとりと遅いのです…
この髪を通じての逢引きの現場は、メリザンドの夫ゴローに見付かってしまい、
二人は「貴方達は子供のようだ!なんたる子供だ!」と叱られてしまいます…
【3幕2場】では、ゴローがペレアスを誘って、城の陰湿な地下室へと行く様が不吉にも描かれ、
「P:息苦しいから出よう」と言うペレアス、続く【3幕3場】では風景が一転して海の見える城外へ!
ペレアスは安堵し喜びを歌います。一方のゴローは、先の二人の逢瀬を咎め、そして
メリザンドのお腹の中には赤ん坊がいることを打ち明け、これ以上、
繊細な彼女に近付き惑わすようなことがあってはならないと、忠告します…
【3幕3場】では、ゴローの小さな息子、少年イニョルドが初登場(今回は欠席…)。
イニョルドに、普段のペレアスとメリザンドの様子を問い詰めるゴロー…
しかし、浮気の決定的な証拠は何一つ得られず…
(なぜなら二人が好き合っていることはお互いまだ知らないのだから)
更には、イニョルドを肩車して、城の部屋の中に二人でいる
ペレアスとメリザンドの様子を報告するよう、強います…
いくらイニョルドが「二人は何もしていない、たた佇んでいるだけ」
と言っても、ゴローは信じないで、二人の様子を更に問い詰める…
怖がり、痛がるイニョルドは、実に可哀そう…
ゴローの疑心暗鬼は、既にすっかり出来上がってしまっているよう…
【4幕1場】
いよいよ出発が明日に迫るペレアスは、メリザンドに
以前二人で行った「盲人の泉」で待ち合わせる約束をこじつけます。
【4幕2場】
塔のシーンや、イニョルドから聞いた話の自分勝手な誤解をするゴローは、
疑心暗鬼に駆られてか、酒に酔ってか!?
メリザンドに罵詈雑言を浴びせかけます…
「G:おまえに触られたくはない、あっちへ行け!」
「G:剣はどこだ!?渡せ!ただ切り味を調べたいだけだ…」
「G:何を震えている!?お前を切るなんて使い方はしない…」
「G:この大きな目は何を物語る!?」
「G:偉大なる無垢…なんたる偉大さ!」
「G:手を渡せ!あぁ!その手は暑過ぎる!あっちへ行け!胸糞悪い!」
酷い言葉の連続…ついには髪を掴まえて、
右へ左へ、前へ後ろへ、跪かせ…
そして「私は老いぼれのように笑っている!」と言って…
落ち着きを取り戻しても、「大したことはない、なるようになる」
と不気味に言い捨てて去るゴロー…
「M:彼はもう私を愛していない…私は幸せではない!」とメリザンド…
【4幕3場】は、こちらも無垢な少年イニョルドの独奏…
舞台には現れない羊飼いを相手に、無邪気に戯れる様は、逆に痛ましくもある…嵐の前の静けさ!?
【4幕4場】
ペレアスは「盲人の泉」にてメリザンドを待つ…
「P:最後の夜」という言葉に始まるこの場面は、やはり不吉…
会うべきではなかったのでは!?いや、会って話をすべきか!?混迷のペレアス…
ついにメリザンドが現れ、ペレアスは彼女を日陰の方へ、人目についてはならないから、
しかし、メリザンドはそれを拒否し、明るいところに居たい、と…
メリザンドが遅れてきたのは、ゴローが眠る(悪夢にうなされていたよう)のを待って、
しかも、衣が引っかかって破けてでも走ってきたとのこと…
ペレアスは、自分がなぜ遠くへ行き、そして二度と帰っては来ない理由を告げます。
突然にメリザンドにキスをし「P:君が好きだ」と告白…
すかさず「M:私もあなたが好き」という返事…
自分の耳を疑うペレアスの興奮!
「P:一体、それはいつから!?」
「M:あなたに最初に会ったその時から…」
二人の愛はこの瞬間に完全に成立した、と言えるのでしょうか。
二人は好き合っていた、しかしそれを知らずに時を過ごしていた…
メリザンドが妊娠していることを思うと、数か月という時が過ぎていることが分かります…
そしてついに、お互いの気持ちを確かめ合うに至ったのです…
今度は「P:貴女の顔がハッキリみたい、明るいところへ出よう」というペレアスに対して
「M:いや、暗いところにいましょう、その方が寄り添っていられる…」
先ほどとは意見が逆転している二人…
すると、城の門が閉まる音が聞こえてくる…
そうなると二人は戻ることができず外に取り残されてしまうことに!しかし
メリザンドは言います、「M:その方がよい、その方がよい!」
ペレアスも「P:そうか、もう戻る必要はない」と納得…
「M:私たちの後ろに誰かいる…」
「P:誰もいないさ、見て、僕たち二人の影があんなにも遠くで抱き合っている…」
「M:私たちの影の一番先のところに彼がいる」
「P:誰が?」
「M:ゴローが…」
「P:ゴローが!?」
「M:剣を持っている…」
「P:僕らを殺そうとしている…メリザンド、ここを離れて」
「M:いや、離れない!」
「P:殺されてしまうよ!」
「M:その方がよい、その方がよい!」
二人は夢中で抱き合う
「P:おぉ!おぉ!星々が落ちてくる!」
「M:私も!私も!」
「P:もう一度!もう一度!頂戴!頂戴!」
「二人で:全てを!全てを!全てを!」
ゴローが二人に襲いかかり、ペレアスを刺す
ペレアスは泉のふちに倒れて、メリザンドは恐怖にかられて逃げ出す
今回の公演では、ここで終わり…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【5幕】もあるのですが、ここでは塔の一室にて
倒れて動けなくなったメリザンドを、
アルケル王と医師、そしてゴローも加わり、
皆で和解するシーンとなります…
ゴローは謝罪し、メリザンドは恨んでいない、赦しています、と。
メリザンドは赤子を生み、そして死んでしまう…
悲しい物語です…
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
最後に、この三角関係をまとめてみますと、
ゴローとメリザンドが出会い、結婚した。
メリザンドとペレアスが、惹かれ合っていた。
ゴローはそれに気づき始め、疑心暗鬼に駆られる…
だけど、ペレアスとメリザンドはお互いの気持ちを知らないで過ごしている…
それまで、二人は一線を越えてはいないということに…
最後の【4幕4場】で、愛を打ち上げ合う二人は
ついに口づけをし、抱き合ったりする。
それをゴローは見ている。予想していたように…
そしてペレアスを刺し、殺害に至る…
ゴローの、二人に対する疑惑は、正しくもあり、また間違ってもいた、
ということになりましょうか。
そしてペレアスとメリザンドの二人は、
最後の最後、ようやく愛を確かめ合えた!その直後に、
死をもっておしまいとなってしまうという…
…愛の悲劇、ということでしょうか…
♪