音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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■本をよみ直してみるということは ~ 吉田秀和著『現代の演奏』より抜粋

2011年08月28日 | 吉田秀和

吉田秀和著 『現代の演奏』新潮社より抜粋


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本をよみ直してみるということは、
そこに何がかいてあるかをもう一度たしかめるというのとは、
ちょっとばかり違うことなのだ。

それは、忘れた知識を改めて教えてくれることとも、
また私たちが考えついたり、考えつけなかったりすることに、
改めて強い注意をよびさますこととも、ちがう。

それは、そこにある文章にもう一度ふれ、
改めて考え直す機会をもつということである。

つまり、そこに書いてあるその表現の力に
もう一度ふれることである。

本というものは、
そこにある考え、ある感じ方がのべられているというだけのものではなくて、
ある考え、ある感じ方が、一つの特定の文体の形をとって、
その形に則してのべられている、そういうものである。

その考えは、文体とともに、
そこに生きている。

私たちは、ある考えをとりだし、
自分の言葉に直し、よんでいることが多い。
よんだあとは、なおさらである。
なんという本には、何々のことがかいてあったというふうに記憶している。

けれども、ある時、その本をよみ直してみると、
そこには、別の言葉が使われており、別の文章が立ち現れてきて、
私たちに再考をうながす。

私たちは、もう一度、
そこのところを、前後のページとあわせて、
もう一度、じっくりよみ直すことになる。
時としては、その本全部をよみ直す羽目になる。

私たちは、新しいよみ方を知る。それはつまり、
自分を新しくすることである。

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