「ドッペルドミナント」という和音は、
和声の基本のみっつ
「トニカ」
「ドミナント」
「サブドミナント」
からちょっと外れた特別な和音ということが出来るでしょう。
作曲家達は、ここぞという大事なところで、
様々な「ここぞ」という面白い手法を探し・見付け・使ったりするのでしょうが、
この「ドッペルドミナント」も
十二分にそうした威力を持った音楽的効果を有した和音ということができましょう。
ではなぜ、この和音が人に強い印象を持たせるのか!?
その具体的な理由が
ひとつ
あるように思えました。
ハ長調C-Durを例に取りますと、
「トニカ」は「ど・み・そ」
「サブドミナント」は「ふぁ、ら・ど」
「ドミナント」が「そ・し・れ」
となります。
さて、
「ドッペルドミナント」はというと、それは「れ・ふぁ#・ら」
という和音になるのです。
ここで確かめておきますと、
ハ長調においては、
基本的には「ふぁ#」という音は出てきません。
譜の頭には臨時記号はひとつも無いのがハ長調ですしね。
さて、
この「ふぁ#」という音、ハ長調の中に出てきたものとしてしっかり仲間に入れて考えてあげますと、
ことハ長調の中心となる音、すなわち
「ハ音(C)」
この音と「ふぁ#(Fis)」という音の相関関係を見てみますと、
これは「増4度」というインパクトの強い音程であることが分かります。
この「増4度」・・・なんと中世ヨーロッパにおける音楽理論において特別な名前が付けられておりまして、
それは
「音楽の悪魔(Diabolus in Musica)」
というのだそうです・・・
実際にこの音は、強い不響和音として聴こえます。
その理由は、倍音の構成上に無い音だから、
といえますでしょうか。
(もちろん、高次元においては存在しますが、それはだいぶ上の音の事)
ちなみに、「増4度」は、
「減5度」や「三全音」と呼ばれる音程と
同じ間隔になることを補足いたします。
この「増4度」、
例えば音の調律に際して、この音をすっきりキレイに調律することは、
平均律の調律法が出来るようになるまでは
難しいことだったそうです。
手軽に「増4度」を体験しようとするなら、
これを歌ってみようとしますと、案外
その音程を正確に取るのはなかなか難しいものと
感じられるのではないでしょうか。
話がすっかり「増4度」の方へいってしまいましたが、
本題の「ドッペルドミナント」には、
その調性内において、この「増4度=悪魔」
が出現するというのは間違いなく確かなことなのです。
ここに、
「ドッペルドミナント」という和音の特殊性・強さが裏づけされると
と考えてみることは出来るのかもしれません。
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