音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

♪クラシック音楽の伝統を受け継ぐ真の音楽芸術家を目指して活動しています♪ 「YouTubeクラシック音楽道場」も更新中♪

B.《ソナタ12番“葬送”》I楽章の物語(まとめ)

2006年06月18日 | 《12番op.26“葬送”》
余計な前置きかもしれませんが、
楽曲の解釈において、個人的なわがまま勝手な想像の世界に
落ち込まないよう、ベートーヴェンという大天才が書き残した
高い音楽性を誇る楽譜ととことんにらめっこしながら、
そこから湧き出る世界観を突き詰めてみようという姿勢
ではあるのですが、なにぶん、「私」という個人の域を
究極的には出ることができないというのが、
人間のサダメなのでしょうか。
「私見」ということを念頭にお読みいただければ幸いです。

   ―――――――――――――――――   

さて、
ベートーヴェン《ピアノソナタ12番“葬送”》第1楽章の
「男女」の物語を、自分なりにひとつ、さらに推し進めてみまして、
この変奏曲形式の楽章に、どうやらひとつの関連性のある物語を
見ることが出来るのではないか、と考えるに至りました。

この第1楽章は、
「テーマ」「第1変奏」「第2変奏」「第3変奏(短調)」
「第4変奏(再び長調)」「第5変奏と短いCoda」から成ります。
注目されるのは、1楽章全体を通して、主要な旋律線が
二つを超えることはないのではないか、思われるのです。それはすなわち、
登場人物は二人を超えないということに結びつくか・・・・と。

●テーマ
簡単に言えば「AABA」という形式でできているといえましょう。
冒頭のメロディー(主題)が、
すでに二つの声部のユニゾンで歌われることは、
先日の日記に書いたとおりです。


●第1変奏
アルページオの音型で、低い音域と高い音域が交互に現れ、
あたかも二つの声部が会話しているように、聴こえなくもありません。


●第2変奏(左手のオクターブ)
左手のオクターブが、テーマのメロディーが刻み続けられる変奏です。
この左手オクターブの音域は、男声を思わせる音域とであり、
よって、男声が主となっている変奏と考えられます。


●第3変奏
低い音域から歌われ始めるmoll(短調)のメロディーは、
前の第2変奏と同様、男声が歌い始めているようでもあり、
続いて、上の声部が加わって、二つの声部がユニゾンとなり歌われます。
・・・二人が共に悲しみ、重々しく歌っているかのよう・・・

なにが悲しいのでしょう?
英雄が死んでしまうことを予想して(3楽章“葬送”)
悲しんでいるのかも・・・!?


●第4変奏
「pp」で、まるでひそひそと内緒のおしゃべりをするように、
下の声部から歌い、それに上の声部が答えます。
中間「B」の部分では、たくさんの「sf」によって内緒話の域を超えて、
つい気分が高まって、大声で話をしてしまいます、すると、
左手の下降音階が「decresc.」を伴って現れ、まるで

「お~~~っと、静かにしなきゃ・・・」

と言って、再び「pp」に戻るかのようです。

なにを内緒話しているのでしょう?
執り行われる葬送行進(3楽章)は、世を欺く手段であって、
男女は秘密裏に、二人きりで世間から逃げ出そうという(4楽章)
秘密の打ち合わせなのかも・・・・?


●第5変奏
楽章冒頭のテーマが、沢山の装飾音を伴って美しく歌われ、
次第に装飾は速度を増していきます。

★ちなみに
「速度を増していく装飾音」という手法は、この《ソナタ12番》から
およそ20年も後になって作曲されることになる
《ソナタ30番op.109》の終楽章(これも変奏曲!)に見られるものです。
ベートーヴェンは、時代を超えて、同じような手法を使ったと
見ることができるかもしれません。
あるいは、この《ソナタ12番》で使った手法を、
さらに《ソナタ30番》で洗練させ、そこにおいて
ついには天空へと羽ばたくに至ったとか!?
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=116706190&owner_id=3835718
(↑4月の日記「大空を飛ぶ《op.109 3楽章 Var.VI》」)

●短いコーダは、右手の歌が、左手の合いの手に付き添われて
楽章の終わりへと向かいます。
まるで、
モーツァルトのオペラ《魔笛》において、
主人公のパミーノが、僧官に連れられて試練へと向かっていく、
そんなシーンが思い浮かべられるかもしれません。
(事実、ベートーヴェンはモーツァルトの音楽をよく知り、
よく勉強しており、《魔笛》のいくつもの主題を、《変奏曲》として
自分の作品にしています)

僧官に連れられて、1楽章が幕を閉じた・・・・
となると、
つぎの2楽章《Scherzo(スケルツォ)》は、
いよいよ「試練のとき」と考えることができましょうか!?


……………………………………………………………
より多くの方々に音楽の面白さをご紹介したく思い
音楽blogランキングへの登録をいたしております
上記↑のクリックにてご協力いただけたら幸いです 
……………………………………………………………

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« B.《ソナタ12番》I楽章に登場... | トップ | 抱負 今日のコンサートに向けて »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。