音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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B.《ソナタ12番》I楽章に登場人物は「二人」!?

2006年06月16日 | 《12番op.26“葬送”》
ベートーヴェン《ピアノソナタ12番“葬送”》の終楽章において、
男女二人が大逃走をくりひろげることを、前回までの日記に書きました。

「男女」がキーポイントになっているということを、今まで日記で書いてきたのですが、その証拠を冒頭の1楽章にも見つけることができそうです。



1楽章は、Variation(変奏曲)の形をとっている楽曲でして、
冒頭ではテーマとなる楽想が奏でられます。
As-Dur(変イ長調)の朗々とした美しいメロディーです。

で、
この第一小節目から始まるメロディーが、すでに「男女」と考えられる
のではないか、と思ったのです。
それは「ユニゾン」で歌われるメロディー。


ユニゾンとは、同じ旋律が、
異なる声部で、あるいは異なる楽器で
同時に奏でられることを言うのですが、
高音と中低音で、同じメロディーが歌われている、この
1楽章のテーマは、冒頭にして、
二人の登場人物を示唆している、と考えられなくもありません。

男女が仲良く同じメロディーを歌う。
やがて、女声が一人になって歌い、男声がそれを下から支えるような
パッセージが続き、再びユニゾンに戻る。
次は、男声が先を歌い、女声が後に続いて、再びユニゾンとなって、
冒頭と同じ旋律に戻って、テーマ終了と・・・・。


「オペラ的」と言えるのかもしれません。オペラのデュオのような。


ピアニスト一人で演奏される《ピアノソナタ》が、
さまざまな登場人物や楽器編成といった異なる要素を、
人間一人で再現しようと試みる「ソロ」の音楽は、
ともすると「多重人格を操るおもしろさ」と見て取ることが
できるかもしれません。(まるで落語家のよう!?)

そして、それらの異なる性格・要素を、
声部を追って音楽を聴いていくことで、
色々と思わぬ発見があったり、そうすることでその音楽に納得いったり
(納得する、すなわち「なるほど!」という感情には
「嬉しい」という要素が含まれていると思われます)、
そうした過程が、
演奏者にとっても聴く人にとっても
音楽の面白さのひとつであるということができるかもしれません。


ベートーヴェン《ピアノソナタ12番》1楽章の男女の物語は、
この後どうなっていくのやら、明日の練習が楽しみです。



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