音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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連載5《op.110》 たった一拍にみっつもの指示

2006年09月09日 | 《31番op.110》
ベートーヴェン《ピアノソナタ31番op.110》I楽章、
4小節目のややこしさ(!?)、面白さを、引き続き
検証してみたいと思います。


4小節目、第2拍目の和音には、

◇フェルマータ
◇tr(トリル)
◇松葉印の「<>(クレッシェンドとデクレッシェンド)」

という三つもの指示が絡み合っております。


これらの指示を、演奏者にとっての「義務」として
捉えるのでは音楽の魅力が半減してしまうでしょう。
「音楽の内的な要求」としっかり汲み取ってあげて
この音楽の持つ極上の美しさを味わいたいものです。

しかしそれでも、音楽の美しさに到達するためには、
不断の現実を必要とします。これの指示を、全て正確な表現で
演奏するコツを考えてみましょう。


上声部(ソプラノ、あるいは弦楽四重奏なら第1ヴァイオリン)が

●ある程度長めの時間(フェルマータ)を取って(およそ5拍分の時間を
今の自分は感じます。通常のフェルマータよりは断然長いですが)
●ある程度の音量も伴って膨らんでは縮むように(しっかりと
松葉印「<>」を実践)
●それに伴ってtr.(トリル)もゆっくりから初めて速度を増し、
そして音の減衰にしたがって再び遅くしていき
●下の3声部の音は継続していることを忘れず(上声部ひとりぼっち
になってしまうと、音が貧弱になってしまう恐れがあります)

このように演奏すると、
その音楽の持つ効果がたち現れるのではないか、と思うのですが。



ところで、
この《op.110》に先立ちこれにそっくりの箇所がありまして、
それはベートーヴェンのピアノソナタのうち、最大にして最難ともいわれる
《ソナタ29番op.106“ハンマークラヴィア”》の第1楽章、372小節目です。


☆こうした楽曲同士の類似点が見つかることで、
後期ソナタ群の密接な結びつきを垣間見ることができるのは
非常に興味深く面白いことだと思われます。
つづく


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