音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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連載6《op.110》 とっても美味しい独り舞台!?

2006年09月11日 | 《31番op.110》
ベートーヴェン《ピアノソナタ31番op.110》I楽章、
4小節目についての考察は、今回にて一応終了の予定です。


2拍目裏から3拍目にかけては、
(ちなみに拍は四分音符分と考えています)

いよいよ上声部の独壇場(!?)となります。
下3声はお休み。

3拍目頭の「小さな二つの音符」は、
その小さな始めの音符を拍の頭と考えて、少々時間を取ってあげると、
なんとも美しい効果が出てくるはずです。(ピアノの詩人ショパンが
このような装飾音の歌い方を好んで使っていると思うのですが)

さらには、この装飾音に彩取られて到達する3拍目の「ファ」の音は
「アポジャトゥーラ(イ音)」としての性格を有していることを
忘れたくはありません。すなわち、音そのものの性質上、
非常に表情豊かな力を持っているということです。

ひら~り ひらり
と舞い上がるように辿りついたこの「ファ」の音は
残りの二つの下降する音に導かれて、
ベートーヴェンの書いている「>」の通り、
ゆるやかに減衰させてあげることで、
続く5小節からの美しいアリアのような歌へと、
見事に美しく結びついていくはずです。


この部分はまさに、
第1ヴァイオリン奏者の「美味しい」聞かせどころ
といったところでしょうか。


◇◆◇◆


前回、前々回から続いた関連の記事をまとめてみますと、
この《ソナタ31番op.110》
I楽章の第4小節目は、
ベートーヴェンの音楽の随所に見られる特徴である「subito p」に始まり、
2拍目の「Tr.」「フェルマータ」「<>」というみっつの指示が入り乱れ、
そこから生まれる緊張感が開放されるかのような、3拍目以降の上声部の独り舞台となる、
このような
音楽的に非常に充実した様子を窺うことができるようです。

それはいうなれば、
後期のベートーヴェンの円熟した高い音楽性が
このたった一小節に込められていると
見ることができるようでもあります。

あまりにも美しい音楽です。


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