音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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◆《エリーゼのために》の弾き方(2) ~ 冒頭「ミレ♯ミレ♯ミ」の弾き方

2013年12月22日 | ベートーヴェン Beethoven
ベートーヴェン作曲《バガテル a-mollイ短調 WoO.59「エリーゼのために」》


冒頭の弾き方。

まず確認しておきたいのは、この音楽は「3/8拍子」であるということ。
すると、楽曲の始まりの音は「1拍目」ではないことは、楽譜を見れば実は一目瞭然で、当たり前のこの事実を音楽的に!よく意識しておくことは、実は「拍感を見失いやすい」という音楽的に危険な落とし穴を持った《エリーゼのために》のよい演奏をするための重要な問題といえましょう。

(使用楽譜:ウィーン原典版)

始まりのこの有名な「ミレ♯ミレ♯ミシレド」という旋律は、全て「アウフタクト(弱起)」と解釈すると、左手の伴奏が始まる第2小節の頭が、この曲に現れる「最初の大事な1拍目」という意味を見出だせることとなります。
ちなみに、連続する「ミレ♯ミレ♯ミ」の途中、最初の小節線の後(=第1小節の頭)を大事な「1拍目」と考えてしまうと、その後音楽は1小節毎に1拍目が重くなる癖がついて、音楽の流れを妨げてしまう危険があり、あまりお勧めしたくなく思います。

よって、「ミレ♯【ミ】レ♯ミシレド」は、間に「第1小節・1拍目」の「軽い」重みに注意することでこの曲の基本となる「三拍子感」を得つつ、フレーズの美しく大きな流れを得るために、この音達全てを大きなひとまとまりの「アウフタクト」ととらえることが、その先の音楽の流れがスムーズに進むためのコツとなりましょうか。

この音型は、今後何度もこの曲中に現れるものなので、場所によって些細な違いはあれど、音型のこの基本的な流れを把握しておくとは、《エリーゼのために》を弾くにあたっての重要なポイントと言って間違いないでしょう。

「ミレ♯ミレ♯ミ」という半音を行ったり来たりするこの音型は、すすり泣きのようにも思え、強い男!であるはずのベートーヴェンの内に潜む悲しみが垣間見られましょうか・・・
作曲年1810年4月27日という、月日まで!書き込まれて作曲されているこの作品は、ベートーヴェンが求婚!したと言われるテレーゼ・マルファッティ嬢に捧げられ、彼女の手にその楽譜があったものだそうです。40歳を目前にした結婚願望のある男が、どういう気持ちでこの若い女性に求婚し、この曲を贈ったのか!?


そしてそれだけでなく、ベートーヴェンはその数年前、1804年から07年にかけての大恋愛の経験があり、それは彼の創作活動にも少なからず大きな影響を及ぼしているようで、それは数々の名作《熱情ソナタ》や《ワルトシュタイン》、《交響曲「運命」》や《田園》、一連の《ラズモフスキー四重奏曲》などの名曲が数多く出現した「傑作の森」と呼ばれる時期と一致します。
「私の心臓は・・・死ぬまであなたのために打ちつづけるでしょう」とまで書いた恋文を送った相手(ここでは敢えて名前は伏せておきましょう、テレーゼの面目のためにも!?)との恋愛の破局は、一人の人間にどのような痕跡を残すのでしょうか・・・
その後、テレーゼ・マルファッティに求婚し、しかしこれも不首尾に終わる・・・でも案外ベートーヴェンは、この失恋に関してはわりと短期間で立ち直っているという情報もあるようです。

「ミレ♯ミレ♯ミ」に反映されたベートーヴェンの心境はいかに!?想像しながら演奏することは、この音楽の適格なイメージを膨らませるのに少なからず役立つことと思われます。








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