音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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◆大震災・被災地のことを思い、リサイタルのプログラムを変更しました ~ 6月5日 東京・成城ホール

2011年05月30日 | ◆一言◆
3月11日、
あの震災が起きる以前から、
この度の6月5日のソロ・リサイタルの開催は予定されていたのですが、

あの日を境に、
ここ、東京に住んでいる私にとっても
大きな変化を感じずにはいられず(・・・一人の日本人として!?)
当初は、
今年2011年、クラシック音楽業界にとっては
F.リストの生誕200年という記念年、そして、
昨年が生誕200年だった、リストにとってはライヴァル!?とも思われる
ショパンの作品を並べた、
「永遠のライヴァル!? ショパン&リスト」なぞという内容の
リサイタルのプログラムを考えていたのですが・・・
あの日を境に、
そのままの形では、演奏会をする気にはなれなくなってしまいました・・・


数日間、ピアノの音を出すことも憚られました・・・
こんな緊急事態に、たとえ自分にとっては仕事とはいえ
呑気に(!?)ピアノなぞ弾いていてもよいのだろうか!?と・・・

しかし、
震災から3日後くらいでしょうか、
マンションの上の住人の年配の方が、
普段どおりに練習を始められたのに、なんだか少し勇気をいただき、
「自分もピアノを弾いてみよう」という気になりました。

しかし、
いざ弾こうとしても、
弾く曲目が気になりました・・・

派手なリストの曲を演奏する気にもなれず!?


そこで思いついたのが、
J.S.バッハの音楽でした。


純粋・至極のハーモニーの世界に位置するバッハの音楽なら、
この状況下で演奏するのにも不謹慎ではないと思われ、
それが震災後、自分にとっては初めてピアノの音を鳴らした瞬間でした。


そして、
次に思い浮かんだのが、ラヴェルの音楽《亡き王女のためのパヴァーヌ》


津波で、大勢の方々が亡くなったのは
その時もう知っていました・・・
あの時知る限り、きっとすでに一万人以上、
そして今日知る限りでは2万人以上の死者と行方不明者!!・・・


その人々のことを思わずにはいられなかったのでしょうか、
《亡き王女のためのパヴァーヌ》が、
今の日本の人々の心を、そっと慰めてくれるかのような、
そんな気がしたのでした・・・


それに引き続き現れたのが、
同じくラヴェル作曲のピアノ組曲《クープランの墓》


この作品は、
フランス人ラヴェルが、あの第一次世界大戦が終わってから
(ラヴェル自身、祖国のために兵役に志願し、
 実際にトラックの運転手として戦場で働いたのだそうです)
大勢の知人・人々を偲んで、
計6曲からなる組曲のそれぞれに、亡き友人達の名前を付してつくったのが
この音楽《クープランの墓》なのです。



私個人にとっては、
ドイツ留学中の卒業演奏前に、師匠から
この曲の演奏を見送り、別のラヴェルの曲を演奏するようすすめられ
お蔵入りになってしまった曲・・・

その曲を、今、この東日本大震災の後、
多くの亡くなった方々、被災された方々を思うならば、
音楽家として・ピアノ弾きとしてこの曲を演奏しても
よいのではないだろうか、いや、すべきではないだろうか!?
と、強く思ったのです。


そして、
6月5日のリサイタルのプログラムは変更となりました。

生誕200年を記念してのリストの作品、
(でも、派手な曲は少なめ)
そして、
上記のラヴェルの作品達。


ピアノ演奏・音楽を通して、
会場にいらして下さる方々と、その音楽を共感し、人生を思い、
そして特に後半のラヴェルの作品では、
被災し亡くなられた方々の魂を思い、あたかも「慰霊祭」のようなつもりで、
一所懸命、演奏したいと思います。










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