吉田秀和著 『現代の演奏』新潮社より抜粋
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音楽は
響きだけででき上がっているのでなく、
意味の芸術でもあるのであって、
不協和音が協和音に解決するとか、
重要な調性から、別の調性に転じたあとで、またもとに戻るとか、
その他のことは、
完全に感覚と感情の言語に移されているもののもつ意味上の出来事なのである。
つまり、それは、
言語のすべてと同じように、
響きであって、同時に意味であるところの
二重の性格をもつ。
その意味の世界での変移は、
当然、音のもつ響き具合にも反映してくる。
そういう点で、私のことでいえば、私は、
自分の耳の理解する力は当然歴史的に限定されたものではあるけれども、
その範囲内で、響きと意味との調和に到達している演奏を、
まず、肯定する。
いや、好きなのである。
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