音楽家ピアニスト瀬川玄「ひたすら音楽」

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◆モーツァルト《トルコ行進曲》に、あの魅力的な和音「ジャーマン・シックス」を見付ける

2008年11月18日 | 音楽(一般)
モーツァルトの《トルコ行進曲》
といえば、
きっと誰もが知るクラシック音楽における有名曲だと思います。



その《トルコ行進曲》を、先日レッスンにて
生徒さんと楽譜を見ながらご一緒していたら、
なんと、
クラシック音楽における
ある「魅力絶大な和音」が、
モーツァルト自身の指示・書き込みにより
それが示唆されていることを見付けたのです。



それは、上の譜例の丸で囲ったところ。

この和音を下から見ると
 ― F(ファ)A(ラ)Dis(レ♯)C(ド)となり、
この和音には、ある名前がつけられており、
それは

【German Sixthジャーマン・シックス】と呼ばれるものです。


ほんのちょっと音楽和声の話にお付き合いいただきたいのですが、
この【ジャーマン・シックス】をインターネットで調べてみると、
これは
【VI度の和音】
この《トルコ行進曲》の調性であるa-moll(イ短調)でいうと、
 ― F(ファ)A(ラ)C(ド)に、
【増六度が加わったもの】
ここでいえば
 ― Dis(レ♯)
という合わせて四つの音からなる和音が【ジャーマン・シックス】
であるという説明が多く見つかりました。

この増六度が特徴的だからこそ「シックス」という名称が
ここに付いていると理解してよいでしょうか。


ちなみに、
私がドイツ留学にて
和声学の師匠から教わったこの【ジャーマン・シックス】の姿は、
【ドッペルドミナント】
a-moll(イ短調)でいうと、
 ― H(シ)Dis(レ♯)Fis(ファ♯)
という音に【7と9】という音が付き、
 ― A(ラ)C(ド)
さらに複雑なことに、
【根音が省略】され、そして最後に、
【第5音が下方変異】されたものが【ジャーマン・シックス】である
と習ってきました。

まとめて言うと、ようするに
 ― Dis(レ♯)F(ファ)A(ラ)C(ド)
という和音になるわけですが・・・


いずれにしろ、
【ドッペルドミナント】という和音は、
音楽において非常にインパクトの強い
魅力ある和音なのですが、それがさらにレヴェルアップして
【ジャーマン・シックス】と呼ばれる特殊な和音になっていることについて、
クラシック音楽を志す人たちであれば、
この魅力は是非とも会得しておきたいものです。


この和音は、
クラシックの星の数ほどあるレパートリーにおいて
少なからず、色々なところで見受けることができるものです。


今回、
モーツァルトの《トルコ行進曲》において見付けた
【ジャーマン・シックス】に特別驚いたのは、
モーツァルト自身の手により、この和音に(さらに言えば、
「この和音にのみ」と言っても間違いではなく)

「f(フォルテ)」
という強弱記号がつけられているという事実なのです。

(★ちなみに、譜例はNMA(新モーツァルト全集)のもので、
 今日のモーツァルト原典版における
 最も信頼のおける楽譜といえましょうから、
 この「f」という指示が
 モーツァルトの手によるものであることを
 疑う必要はないでしょう)



わざわざこの【ジャーマン・シックス】の和音に
「f」と書き加えるモーツァルト・・・



モーツァルトは、もちろん、
当たり前といえば当たり前なのですが、
この和音が【ジャーマン・シックス】であることを知っており、
その活力を十二分に意識していたということが
ここに証明されているといってもよいでしょう。


モーツァルトは知っていたのです、
【ジャーマン・シックス】という和音の魅力を・・・


ちなみに、
ベートーヴェンだって、ブラームスだって、
  
さらには過去にさかのぼってJ.S.バッハだって

この【ジャーマン・シックス】を使っています。


そして、我々にとって重要なことは、
これらの大作曲家達が「当然」のごとく知っている
この【ジャーマン・シックス】という和音の魅力を、
しっかりと受け止められるられるよう、
「知識」と「感性」と「技術」を持って、
伝統あるクラシック音楽の広く深い世界を
掘り下げてゆくことなのだと思う今日この頃なのでした。



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