アンテナ, 田口ランディ, 幻冬舎文庫 た-12-7, 2002年
・名前はよく聞きますが、この著者の著作は初見。なるほどーこういう感じかー。ずいぶんと(怪しげな)勉強をよくされてますね(なんて言うとエラそうだけど)。小説で巻末に『参考文献』がつくなんて珍しい。
・男と女、狂気と正気、なんかの間の『壁』を感じる。『バカの壁』と某氏が名づけた壁。
・文庫版は改訂版。
・「精神科の臨床は哲学とは違うんです。人間の心は刺激してみないとわからない。理屈で予測することはできても、結果まで導き出すことはできない。何が効くのかわからない。」p.32
・「肝臓と腎臓、特に腎臓が疲れてるみたい。腎臓は不安の臓器なの。不安に最も反応する臓器。そして目は腎臓のシグナルなの」p.61
・「鬱の気質って地味だけどとても誠実で奉仕的なの。21世紀は鬱の時代かもね」p.62
・「SMについて哲学したいと思った。そこには人間存在の何かを解き明かす鍵があるのだと思った。」p.74
・「だいたい霊能力というのは、非常に不安定な能力ですので、天候、季節、コンディション、そういうものがすべて揃って、やっと少しだけ発揮される……という類のものです。コントロールできないんですよ、人間には」p.86
・「でも、きっと哲学はこの世界がとても奇怪でグロテスクであることをよりはっきりと、あっけなく見せてくれるように思います。この世界が……というよりも、言葉で表現しえる世界が……というべきかもしれません」p.96
・「哲学するというのは、自分がわからないことを自分なりに考えるということですから、考える時に人のことや世の中のことはこれっぽっちも頭にないに等しいです。もし人のために考えようとしたら、たぶんそれは哲学ではなく思想になってしまうんでしょう」p.97
・「そうかなあ、歪んでるかな。だったら歪んでない愛なんてあるのかしら。あらゆる愛は歪んでいる。だって愛って、しょせんは欲望を美化したものでしょ」p.99
・「苦痛が快感にひっくり返る瞬間、死がとても近くなる。みんなそのことを思い出すのが怖いんだと思う」p.101
・「あたしはフロイトを信じるね。性は生だよ。そして死でもある。人間はその生涯をセックスに支配されてる。生殖機能がスタンバイした時点で人間は発情する。そして、ほぼ死ぬまで発情している。業が深い生き物でしょ。どんなに偉そうにしてても、どんなに清純そうにしてても、実はみんな発情してて鼻血タラタラなの」p.102
・「ウソつきはいい質問者にはなれない。あんたはウソつきだ。なにか隠してる。でも自分が何を隠してるのかもわからないタチの悪いウソつきだ」p.107
・「好奇心という快楽だけが、肉体が退化した僕らに残された快楽なのかもしれない。」p.129
・「完全だ。内的な閉じた世界の中では、人間はパーフェクトになれる。現実感覚を喪失していくと、妄想が生まれる。人は妄想によって自分の内的世界に閉じこもる。そこは完全な世界だ。なぜなら、内的世界の中でなら人は神になれるから」p.170
・「確かに不思議な人物だと思った。彼の立ち居振る舞いは他の人間とどこか違う。 どこが違うのだろうと観察していて、ようやく東堂が両ききであることがわかった。彼は左右の手を同じ配分で使うのだ。だから彼の手の動きは左右均等で、まるで千手観音のような広がりを作り出す。たいがいの人はいつも左手を使っていないのだ。」p.303
・「ええですか。この世界で怪しいことは全部、人間の意識が作ってます。人間が存在しなかったら霊も天国もありません。この世はすべて人間の都合でできています。」p.306
・「いつだったか、こんなシーンをテレビで観たことがある。キューブラ・ロスの「臨死体験」を扱った番組だった。死んだ人間が自分の人生をスクリーンの映画のように体験するという。」p.317 こんなところでこんな名前が出てくるとは・・・
・「生きている時、肉体は物と魂の中間に位置する不完全なものなのだ。」p.320
・「人は死によって再生する。そう思えた。 死が生と同義であるなら、死者もまた生者と同義なのだ。」p.352
・以下、AKIRAによる解説より「ぼくたちは田口ランディというシャーマンが調合した『アンテナ』という幻覚剤を飲み、現実の向こう側にある広大なパラレルワールドを旅する。」p.359 ムズムズ…ムズカユイ…
・「作者は「人間の全体性」を復権させるという誰もがなしえなかった暴挙に挑んだのだ。」p.60
・名前はよく聞きますが、この著者の著作は初見。なるほどーこういう感じかー。ずいぶんと(怪しげな)勉強をよくされてますね(なんて言うとエラそうだけど)。小説で巻末に『参考文献』がつくなんて珍しい。
・男と女、狂気と正気、なんかの間の『壁』を感じる。『バカの壁』と某氏が名づけた壁。
・文庫版は改訂版。
・「精神科の臨床は哲学とは違うんです。人間の心は刺激してみないとわからない。理屈で予測することはできても、結果まで導き出すことはできない。何が効くのかわからない。」p.32
・「肝臓と腎臓、特に腎臓が疲れてるみたい。腎臓は不安の臓器なの。不安に最も反応する臓器。そして目は腎臓のシグナルなの」p.61
・「鬱の気質って地味だけどとても誠実で奉仕的なの。21世紀は鬱の時代かもね」p.62
・「SMについて哲学したいと思った。そこには人間存在の何かを解き明かす鍵があるのだと思った。」p.74
・「だいたい霊能力というのは、非常に不安定な能力ですので、天候、季節、コンディション、そういうものがすべて揃って、やっと少しだけ発揮される……という類のものです。コントロールできないんですよ、人間には」p.86
・「でも、きっと哲学はこの世界がとても奇怪でグロテスクであることをよりはっきりと、あっけなく見せてくれるように思います。この世界が……というよりも、言葉で表現しえる世界が……というべきかもしれません」p.96
・「哲学するというのは、自分がわからないことを自分なりに考えるということですから、考える時に人のことや世の中のことはこれっぽっちも頭にないに等しいです。もし人のために考えようとしたら、たぶんそれは哲学ではなく思想になってしまうんでしょう」p.97
・「そうかなあ、歪んでるかな。だったら歪んでない愛なんてあるのかしら。あらゆる愛は歪んでいる。だって愛って、しょせんは欲望を美化したものでしょ」p.99
・「苦痛が快感にひっくり返る瞬間、死がとても近くなる。みんなそのことを思い出すのが怖いんだと思う」p.101
・「あたしはフロイトを信じるね。性は生だよ。そして死でもある。人間はその生涯をセックスに支配されてる。生殖機能がスタンバイした時点で人間は発情する。そして、ほぼ死ぬまで発情している。業が深い生き物でしょ。どんなに偉そうにしてても、どんなに清純そうにしてても、実はみんな発情してて鼻血タラタラなの」p.102
・「ウソつきはいい質問者にはなれない。あんたはウソつきだ。なにか隠してる。でも自分が何を隠してるのかもわからないタチの悪いウソつきだ」p.107
・「好奇心という快楽だけが、肉体が退化した僕らに残された快楽なのかもしれない。」p.129
・「完全だ。内的な閉じた世界の中では、人間はパーフェクトになれる。現実感覚を喪失していくと、妄想が生まれる。人は妄想によって自分の内的世界に閉じこもる。そこは完全な世界だ。なぜなら、内的世界の中でなら人は神になれるから」p.170
・「確かに不思議な人物だと思った。彼の立ち居振る舞いは他の人間とどこか違う。 どこが違うのだろうと観察していて、ようやく東堂が両ききであることがわかった。彼は左右の手を同じ配分で使うのだ。だから彼の手の動きは左右均等で、まるで千手観音のような広がりを作り出す。たいがいの人はいつも左手を使っていないのだ。」p.303
・「ええですか。この世界で怪しいことは全部、人間の意識が作ってます。人間が存在しなかったら霊も天国もありません。この世はすべて人間の都合でできています。」p.306
・「いつだったか、こんなシーンをテレビで観たことがある。キューブラ・ロスの「臨死体験」を扱った番組だった。死んだ人間が自分の人生をスクリーンの映画のように体験するという。」p.317 こんなところでこんな名前が出てくるとは・・・
・「生きている時、肉体は物と魂の中間に位置する不完全なものなのだ。」p.320
・「人は死によって再生する。そう思えた。 死が生と同義であるなら、死者もまた生者と同義なのだ。」p.352
・以下、AKIRAによる解説より「ぼくたちは田口ランディというシャーマンが調合した『アンテナ』という幻覚剤を飲み、現実の向こう側にある広大なパラレルワールドを旅する。」p.359 ムズムズ…ムズカユイ…
・「作者は「人間の全体性」を復権させるという誰もがなしえなかった暴挙に挑んだのだ。」p.60