カオスで挑む金融市場 ないようで必ずある規則性を探る, 倉都康行, 講談社ブルーバックス B-1103, 1996年
・全6章のうち、カオスが出てくるのは最後の2章のみという構成で、『カオス』の文字にひかれて本書を手に取った私のような読者には少々物足りない内容です。前半の経済分野の話は、かなり噛み砕いて書いてくれているようですが、それでも私のようなド素人には理解が少々厳しいです。
・まだまだ制御するなんて程遠いカオス現象。カオスは『つかえる』という話ではなく、『つかえる か も し れ な い』というまだまだ予測の段階です。おそらく本書の出版から10年経った今でも状況はあまり変わっていないのではないでしょうか。このカオスの分野は、『なにかとんでもないものがでてきそう』という期待感があって、個人的にはとても注目しています。なにかひと山当てられないかな~♪
・「近年、複雑系というシステムの見方が自然科学の間で用いられはじめていますが、この見方を借りて金融の世界を別の角度から見直してみようというのが本書の狙いです。」p.18
・「市場の動きで大切なのは、相場そのものの水準だけでなく、市場が内包する読みのベクトルもそうなのです。」p.55
・「いろいろ悩んだあげく、最も現実的な対応法は、かなり高い確率でこうなりそうだという場合にのみ行動を起こし、そうでないときはまったく何もしないという戦略です。これを遂行できれば、金融市場での成功は間違いないかもしれません。ただ、現実的にこれを完璧に行うことのできる人は、残念ながらそう多くはありません。」p.84
・「このように経済現象は、人間が介在しているという点で物理現象と大きく違いますが、人間の行為に関しては、ひとつ不思議なことがあります。つまり、個性豊かな色々な人たちがいるのにもかかわらず、政治は歴史的に安定方向へ向かい、経済も成長し、文化活動も発展していくという方向性が保たれていることです。」p.99
・「決定論によって、支配されているはずの系での動きが予測できない、という衝撃的な考え方が、いま自然を見る方法論として一般化されつつあります。」p.106
・「こうしてみると、金融政策の変更や金融市場の動向は、生物が生きていくための自己組織化過程と同じです。」p.123
・「つまり、試行回数が比較的少ない場合には確率を用いた期待値の世界の論理は、必ずしも通用しないということです。」p.137
・「データの蓄積が豊富であるのが米国の最大の利点ですが、それに加えて何か新しい動きを掴み取ろうとするチャレンジ精神は猛烈です。我々は、革新的なものや、斬新な見方への取り組みが、少しのんびりすぎるのかもしれません。」p.140
・「極論すると、解析に頼る段階は既に過去のものとなっており、現実にある状況をモデル化する際に、どのように簡素化して近似させるかという作業が最も大変な過程であって、ロケットサイエンティストたちのエネルギーの大部分はこの分野に費やされているようです。」p.148
・「もともとの「カオス」の語源は、ギリシア語で"大きな口を開けること"を意味することから、できた言葉のようですが、その後、"空虚"あるいは"混沌"を表すものとなり、宇宙の秩序が生まれる前の状態を指す表現になりました。ただし、ここで言うカオスは、ほんの20年前に新たに定義づけされたものです。(中略)硬い説明をすると、カオスとは、決定論のなかで、ある値が初期条件に敏感に反応する性質をもっています。その結果として、その値の不規則な動きが、引き起こされるときのその挙動のことだということになります。」p.160
・「生物の脳でのカオス生成は、実際の生物を使用して確認されていますが、人の脳の機能にもカオスが関わっているとすれば、人が寄り集まって形成している金融市場にも何らかの形でカオスが関与していると見るべきでしょう。」p.191
・「もちろん、大多数の学者は、経済や金融に関してカオスが適用できるとは考えていないようですし、化学実験や数値実験などに比べて、カオスの探し方が難しいので、実証研究にもあまり乗り気ではないようです。」p.197
・「極論すれば、ひとりひとりの脳のカオスが金融市場に影響を与えているのですから、やはりマーケットにもカオスが存在すると考えるほうが自然ではないでしょうか。」p.201 ちょっと話が飛躍している感はありますが、『カオスは伝播するか』とは興味深い問題です。
・「予測に関しても、短期間での予測精度を高めるのが現実的ですから、10年とか20年とかの記録を頼りに分析するよりも、1~2年単位の市場を対象に、分析を繰り返していかざるを得ないのではないでしょうか。」p.203
・「以上をまとめてみると、カオスの機能として、金融市場において応用しうるのは、市場価格推移の予測、及び市場収益率推移の予測といった予測問題と、オプション理論への見直しという価格問題、さらには市場でのリスク管理問題といった分野を想定することができるかと考えられます。」p.211
・「迅速に結論が出せるのは、おそらく常に思考回路の神経が揺らいでいるからではないでしょうか。不安定な状態にあるからこそ、論理的な準備作業は、むしろ邪魔だということかもしれませんが、生物学的に言えば、まさに脳の進化がこのような形態を望んだわけです。」p.212
・「金融市場は揺らいだ心が集約されて投影されたものだと言えるでしょう。」p.213
?ポートフォリオ(英portfolio) (紙挟み・折鞄の意) 1.投資信託や金融機関など機関投資家の所有有価証券の一覧表。 2.機関投資家の資産運用に際し、最も有利な分散投資の選択。ポートフォリオ・セレクション。
・全6章のうち、カオスが出てくるのは最後の2章のみという構成で、『カオス』の文字にひかれて本書を手に取った私のような読者には少々物足りない内容です。前半の経済分野の話は、かなり噛み砕いて書いてくれているようですが、それでも私のようなド素人には理解が少々厳しいです。
・まだまだ制御するなんて程遠いカオス現象。カオスは『つかえる』という話ではなく、『つかえる か も し れ な い』というまだまだ予測の段階です。おそらく本書の出版から10年経った今でも状況はあまり変わっていないのではないでしょうか。このカオスの分野は、『なにかとんでもないものがでてきそう』という期待感があって、個人的にはとても注目しています。なにかひと山当てられないかな~♪
・「近年、複雑系というシステムの見方が自然科学の間で用いられはじめていますが、この見方を借りて金融の世界を別の角度から見直してみようというのが本書の狙いです。」p.18
・「市場の動きで大切なのは、相場そのものの水準だけでなく、市場が内包する読みのベクトルもそうなのです。」p.55
・「いろいろ悩んだあげく、最も現実的な対応法は、かなり高い確率でこうなりそうだという場合にのみ行動を起こし、そうでないときはまったく何もしないという戦略です。これを遂行できれば、金融市場での成功は間違いないかもしれません。ただ、現実的にこれを完璧に行うことのできる人は、残念ながらそう多くはありません。」p.84
・「このように経済現象は、人間が介在しているという点で物理現象と大きく違いますが、人間の行為に関しては、ひとつ不思議なことがあります。つまり、個性豊かな色々な人たちがいるのにもかかわらず、政治は歴史的に安定方向へ向かい、経済も成長し、文化活動も発展していくという方向性が保たれていることです。」p.99
・「決定論によって、支配されているはずの系での動きが予測できない、という衝撃的な考え方が、いま自然を見る方法論として一般化されつつあります。」p.106
・「こうしてみると、金融政策の変更や金融市場の動向は、生物が生きていくための自己組織化過程と同じです。」p.123
・「つまり、試行回数が比較的少ない場合には確率を用いた期待値の世界の論理は、必ずしも通用しないということです。」p.137
・「データの蓄積が豊富であるのが米国の最大の利点ですが、それに加えて何か新しい動きを掴み取ろうとするチャレンジ精神は猛烈です。我々は、革新的なものや、斬新な見方への取り組みが、少しのんびりすぎるのかもしれません。」p.140
・「極論すると、解析に頼る段階は既に過去のものとなっており、現実にある状況をモデル化する際に、どのように簡素化して近似させるかという作業が最も大変な過程であって、ロケットサイエンティストたちのエネルギーの大部分はこの分野に費やされているようです。」p.148
・「もともとの「カオス」の語源は、ギリシア語で"大きな口を開けること"を意味することから、できた言葉のようですが、その後、"空虚"あるいは"混沌"を表すものとなり、宇宙の秩序が生まれる前の状態を指す表現になりました。ただし、ここで言うカオスは、ほんの20年前に新たに定義づけされたものです。(中略)硬い説明をすると、カオスとは、決定論のなかで、ある値が初期条件に敏感に反応する性質をもっています。その結果として、その値の不規則な動きが、引き起こされるときのその挙動のことだということになります。」p.160
・「生物の脳でのカオス生成は、実際の生物を使用して確認されていますが、人の脳の機能にもカオスが関わっているとすれば、人が寄り集まって形成している金融市場にも何らかの形でカオスが関与していると見るべきでしょう。」p.191
・「もちろん、大多数の学者は、経済や金融に関してカオスが適用できるとは考えていないようですし、化学実験や数値実験などに比べて、カオスの探し方が難しいので、実証研究にもあまり乗り気ではないようです。」p.197
・「極論すれば、ひとりひとりの脳のカオスが金融市場に影響を与えているのですから、やはりマーケットにもカオスが存在すると考えるほうが自然ではないでしょうか。」p.201 ちょっと話が飛躍している感はありますが、『カオスは伝播するか』とは興味深い問題です。
・「予測に関しても、短期間での予測精度を高めるのが現実的ですから、10年とか20年とかの記録を頼りに分析するよりも、1~2年単位の市場を対象に、分析を繰り返していかざるを得ないのではないでしょうか。」p.203
・「以上をまとめてみると、カオスの機能として、金融市場において応用しうるのは、市場価格推移の予測、及び市場収益率推移の予測といった予測問題と、オプション理論への見直しという価格問題、さらには市場でのリスク管理問題といった分野を想定することができるかと考えられます。」p.211
・「迅速に結論が出せるのは、おそらく常に思考回路の神経が揺らいでいるからではないでしょうか。不安定な状態にあるからこそ、論理的な準備作業は、むしろ邪魔だということかもしれませんが、生物学的に言えば、まさに脳の進化がこのような形態を望んだわけです。」p.212
・「金融市場は揺らいだ心が集約されて投影されたものだと言えるでしょう。」p.213
?ポートフォリオ(英portfolio) (紙挟み・折鞄の意) 1.投資信託や金融機関など機関投資家の所有有価証券の一覧表。 2.機関投資家の資産運用に際し、最も有利な分散投資の選択。ポートフォリオ・セレクション。