ぴかりんの頭の中味

主に食べ歩きの記録。北海道室蘭市在住。

【本】技術官僚 ―その権力と病理―

2008年01月13日 22時31分00秒 | 読書記録2008
技術官僚 ―その権力と病理―, 新藤宗幸, 岩波新書(新赤版)774, 2002年
・自分の職業に多少なりとも関連した内容を想像していたのですが、全く別世界の中央省庁の話がほとんどでした。一般に広く開かれた内容ではなく、ほとんど "閉じた" 本です。論文調で漢字が多く、「面白く書こう」などとは微塵も考えられていない文章なので、読むのにちょっと疲れます。概要はあとがきの4ページを読めば十分。さらに詳細を知りたい方は本文へどうぞ。
・「この本は、これまでどちらかといえば、ジャーナリストや研究者がみすごしてきた技術官僚集団に焦点をあてることによって、日本の官僚制の深層に迫るとともに、その改革の道筋を提起しようとするものである。」p.v
・「こうして、これまでに述べてきた首相と内閣による統治の弱体さにはじまる行政機構の特性とあいまって、官庁間の割拠制が強まるだけでなく、行政のイノベーションなき権限の増殖がうみだされる。これが日本の官僚制の最大の構造的特質なのである。」p.18
・「以下、本書ではまず日本の官僚制において、技術官僚集団がどのような地位を占めてきたのかを歴史的に振り返ってみる。そのうえで、行政責任が最もきびしく問われる二つの行政分野――公共事業と薬事行政――を対象として、技術官僚集団の活動を中心に行政組織の動態を論じることにする。(中略)そして最後に、「技官の王国」の解体、それはとりもなおさず日本の官僚制の改革なのだが、その道筋を提起することにしよう。」p.38
・「先進国といわれる国々のなかで、日本ほど大規模な薬害事件をくりかえしてきた国もない。」p.124
・「技官を多数かかえる官庁において、事務官=法制官僚と技官のどちらが優位しているかといった「伝統的」論点は、現代日本の官僚制組織の考察にとって、的外れといえる。問われているのは行政組織のあり方であり、もっといえば、そこにおける意思決定の責任の所在が不明であることなのだ。」p.169
・「小泉純一郎政権は、163の特殊法人と認可法人を所轄する各省に廃止・民営化を基本前提として、2001年8月末までに改革案をまとめるように指示した。  しかし、わずかに四法人の廃止・民営化にむけた改革案が政権に提出されただけで、残りはすべてゼロ回答であった。」p.171
・「独立行政法人(2001年1月の行政改革で新たに設けられた法人。独自の法人格を持つが所轄大臣の監督のもとで、中期計画を作成し事業を実施する。企業経営原則をとりいれ貸借対照表や財務諸表の公表を義務づけられる)」p.172
・「特殊法人や許可法人改革の顛末は、2001年1月の鳴り物入りの行政改革見落としてきた問題点を、浮き彫りにしたといえよう。」p.173
・「「技官の王国」の解体にかぎられたことではないのだが、行政組織全体にわたって、事業の継続ではなく事業計画を時代に適合させる弾力的イノベーションを可能とするシステムがつくられねばならない。そのためには、まずなによりも、各省における政治的任命職の範囲を広げることである。」p.175
・「そもそも、「奇妙な免疫不全症」(当時)とはいえ、それが血液を媒介としていることが疑われていたのであり、血液凝固製剤の使用の是非に問題を限定することなく、HIVウイルスによる血液感染症の原因究明にとりくむことが、行政の責任であろう。いかにキャリア組事務官の局長が、血液感染症の学問的研究水準に素人であったとしても、その程度の支持は本来だせるはずである。」p.176
・「「技官の王国」の解体とは、官庁から科学・技術系職員を排除することではない。これまでみてきたような技官と事務官の相互依存関係を打破することである。この意味で、まずは以上に述べたような行政組織法制をあらため、政治的任用の拡大を基本として、ポジションごとの権限と責任を明確にした組織の編制がもとめられるのだ。」p.177
・「しかし、採用試験における細分された職分類(一章二節参照)は、はたして妥当なのだろうか。」p.178
・「伝統的意味での技官は、まさに「技術官僚」として位置づけられてきたゆえに、専門技術分野の職務に従事している。しかし、かれらは個々の専門領域におけるスペシャリストなのではなく、それぞれの領域で技術の衣をまとった行政官にすぎない。」p.182
・「こうしていま、生涯職公務員からなる官僚機構に、大胆な改革のメスが入れられなければならないのである。内閣統治のもとで行政官としての責任が絶えず自覚される行政システムの構築は、依然として未完である。これこそが改革の焦点とされねばなるまい。」p.200
・「私がここで試みたのは、国土交通省や農水省、厚生労働省などに勤務する技術官僚という集団に焦点をおきつつ、日本の官僚制の内部的メカニズムを明らかすることだった。」p.202

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