American Academy of Neurology(AAN)において興味をもったトピックスの2つめ.
pathological gambling(病的賭博・ギャンブル依存症)は,日本ではパチンコ店駐車場における乳幼児の「車中死亡事故」が契機となって注目され始めた.当初,「どうして似たような事故が続くのかなあ」とニュースを聞いていたが,昨年,7月13日に取り上げたパーキンソン病における病的賭博の論文(Mayo Clinicの報告)にて,強力なドパミンD3受容体アゴニストであるpramipexoleが,病的賭博を引き起こす可能性が示唆されたことから,親の責任感とかモラルの欠如だけでは説明がつかない,D3受容体の何らかの機能変化を背景にもったひとがそんな事故を引き起こしているのだろうかと考えるようになった.
さて,第58回AANのcontemporary clinical issues and case study plenary sessionにて,NINDSのValerie Voonは,パーキンソン病における「衝動的行動」の頻度について検討している.「3つの衝動的行動」には以下が含まれる.
① 病的賭博
② 性欲亢進
③ 衝動的な買い物
方法はprospective studyで,質問表を用いた調査である(例えば,衝動的買い物なら「Ladouceur’s compulsive shopping questionnaire」というものがあるらしい).297名(dopaminergic medicationを受けているが,過剰投与は否定されている)にscreeningを完了した.その結果,病的賭博,性欲亢進,衝動的な買い物の頻度はそれぞれ3.4%,2.4%,0.7%であった.さらに詳しく検討すると,
病的賭博の危険因子としては,年齢が若いこと,男性,若年発症例,アルコール多飲が挙げられる.
ドパミンアゴニストの種類による病的賭博の頻度に明らかな差は認めない.
病的賭博の頻度は,levodopa単剤治療群と比較し,ドパミンアゴニスト併用群では有意に高い(P<0.001).
性欲亢進も同様にドパミンアゴニスト併用群では有意に高い(P<0.05).
全体をまとめると,パーキンソン病患者全体での衝動的行為の発現率は6%であったが,Levodopaとアゴニストを併用している患者では衝動的行為が16%にも及んだ.
これらの衝動的行為のメカニズムについては不明だが,アゴニストの使用量はその出現に影響を及ぼさなかったことから,何らかの遺伝的素因が関与しているものと予測される.
結論として,ドパミンアゴニストは,今回の「衝動的行為」以外にも,過眠症・睡眠発作,肺線維症・心臓弁膜線維症といった副作用も引き起こすので,開始後は十分な注意が必要ということになろう.もちろん,QOLの改善をもたらす非常によいくすりなので,過剰に副作用を恐れる必要はないが,問診の際,パチンコ,競馬などの賭け事について尋ねてみるといったことも今後必要となろう(日本人での頻度はどうなのでしょう.経験ありますか?).
さて今回のAANでは,最新版のパーキンソン病ガイドラインであるpractice parameterも同時に発表されている.特徴としては臨床的な疑問に答えるかたちで,大きく4つのpractice parameterにまとめられている.次回よりpractice parameterについて勉強してみようと思う.
58th AAN(San Diego)
ところで,今回のAAN meetingは,日本からの発表は少ないような印象でしたが,毎年こんなものでしょうか.
私は,ホノルル以来久しぶりに出席したもので,会終了後,4年前の登録料がカードから引き落とせてなかったから$525を払えなんてメールが着て驚きましたが.そんな昔のこと覚えてませんがな.
来年は,ボストンでちょっと遠いですね.
あとAANはこの数年参加していますが,たしかに日本からの演題は多くはないですね.演題を出す施設もほぼ決まっているような感じです.神経学会総会とはかなり趣きが違って,とくに若い先生は良い影響を受けると思うので,ぜひ一度参加して欲しいと思います.
もしよろしければ参考になるネットでみれる英文でもいいのでなにかありませんでしょうか??
ぶしつけなお願いをおゆるしください