スウェーデンのルンド大学等のチームがパーキンソン病の発症前診断を可能にするバイオマーカーをNature Aging誌に報告しています.著者らはDOPA脱炭酸酵素(DDC; DOPA Decarboxylase)別名,芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素(aromatic L-amino acid decarboxylase; AADC)の脳脊髄液レベルが,レビー小体病(LBD)患者(パーキンソン病48名,レビー小体型認知症33名)を正確に同定できること(AUC=0.89;PFDR=2.6×10-13;図1左),ならびに認知機能の低下と関連することを示しています(P<0.05).DDCは外因性のL-DOPAからドーパミンを生成するのに必須の酵素です.
また,脳脊髄液DDCは,シード増幅αシヌクレインアッセイ陽性(seed amplification α-synuclein assay)で臨床症状を認めないpreclinical LBD stageを検出できました(AUC=0.81,P=1.0×10-5;図1右).
このDDC値は,preclinical症例の3年間のLBD発症を予測できることも明らかにしました(ハザード比=3.7/s.d.変化;図2).さらにDDC値は非定型パーキンソニズムでも上昇しましたが,アルツハイマー病などのその他の神経変性疾患では上昇しませんでした.これらの結果は,別の独立したコホート(パーキンソン病32名,レビー小体型認知症1名)でも再現されました.
さらに重要な発見として,血漿中のDDC値も健常対照より上昇し(AUC = 0.92,P = 1.3 × 10-14;図3),かつLBDと非定型パーキンソニズムを識別できることが分かりました.
以上の結果は,DDC値が,発症前(preclinical phase)であってもパーキンソン病とその類縁疾患を検出し,臨床症状の出現を予測するためのバイオマーカーとして,今後使用される可能性があることを示しています.著者らはDDC値とseed amplification α-synuclein assayを組み合わせることで,パーキンソン病と非定型パーキンソニズムを鑑別することを提案しています.今後,発症前パーキンソン病に対して,疾患修飾療法の有効性を評価する臨床試験が行われることが容易に予測されます.
またDDCの産生増加は,ドパミン入力を受けている線条体のニューロンなどが,ドパミンレベルの低下を補うための手段であると推測されます(つまり脳内ドーパミンシグナル伝達の低下を示すマーカーと言えます).そうであれば経時的にDDC値がどのように変化するのかに関心が持たれますが,著者らは縦断的なデータがなく,今後の検討が必要と述べています.
Pereira, J.B., Kumar, A., Hall, S. et al. DOPA decarboxylase is an emerging biomarker for Parkinsonian disorders including preclinical Lewy body disease. Nat Aging (2023). https://doi.org/10.1038/s43587-023-00478-y
また,脳脊髄液DDCは,シード増幅αシヌクレインアッセイ陽性(seed amplification α-synuclein assay)で臨床症状を認めないpreclinical LBD stageを検出できました(AUC=0.81,P=1.0×10-5;図1右).
このDDC値は,preclinical症例の3年間のLBD発症を予測できることも明らかにしました(ハザード比=3.7/s.d.変化;図2).さらにDDC値は非定型パーキンソニズムでも上昇しましたが,アルツハイマー病などのその他の神経変性疾患では上昇しませんでした.これらの結果は,別の独立したコホート(パーキンソン病32名,レビー小体型認知症1名)でも再現されました.
さらに重要な発見として,血漿中のDDC値も健常対照より上昇し(AUC = 0.92,P = 1.3 × 10-14;図3),かつLBDと非定型パーキンソニズムを識別できることが分かりました.
以上の結果は,DDC値が,発症前(preclinical phase)であってもパーキンソン病とその類縁疾患を検出し,臨床症状の出現を予測するためのバイオマーカーとして,今後使用される可能性があることを示しています.著者らはDDC値とseed amplification α-synuclein assayを組み合わせることで,パーキンソン病と非定型パーキンソニズムを鑑別することを提案しています.今後,発症前パーキンソン病に対して,疾患修飾療法の有効性を評価する臨床試験が行われることが容易に予測されます.
またDDCの産生増加は,ドパミン入力を受けている線条体のニューロンなどが,ドパミンレベルの低下を補うための手段であると推測されます(つまり脳内ドーパミンシグナル伝達の低下を示すマーカーと言えます).そうであれば経時的にDDC値がどのように変化するのかに関心が持たれますが,著者らは縦断的なデータがなく,今後の検討が必要と述べています.
Pereira, J.B., Kumar, A., Hall, S. et al. DOPA decarboxylase is an emerging biomarker for Parkinsonian disorders including preclinical Lewy body disease. Nat Aging (2023). https://doi.org/10.1038/s43587-023-00478-y