今回のキーワードは,ワクチン接種の劇的な効果と注意点,最も多い神経後遺症Brain fog(脳霧),COVID-19の3つのフェーズ,急性期後COVID-19症候群,神経後遺症の病態と対応,中枢神経感染を防止する治療標的です.
新しい研究の焦点として,①ワクチン接種のリアルワールドでの効果,具体的には医療従事者における検証と,②long COVID,すなわち後遺症をいかに考え対処するか,の2つが挙げられます.①では,ワクチンの劇的な効果が示されましたが,重要なことは「2回の接種後14日経過するまでは感染するリスクがある」ということです.それまでは油断せず,感染防止を継続する必要があります.また医療従事者でもワクチン接種を希望する割合は必ずしも高くないものの,効果と安全性に対する情報を適切に周知すれば,接種率は飛躍的に高まることも示されました.②では発症4週と12週を境界として,急性期,亜急性期,慢性期と分類することが提唱され,後者2つを「急性期後COVID-19症候群」と呼ぶことになりそうです.後遺症に苦しむ患者は増加の一途をたどるものと予想されますが,これに対応できる専門外来の重要性が指摘されています.Nature Medicine誌に発表された後遺症に関する総説は必読ですが,専門外来は,広範な後遺症に対応できる高度な総合診療的スキルが求められる難しい外来になると思いました.
◆医療機関におけるワクチン接種の劇的な効果と注意点.
2020年12月15日,医療者に対し,2種類のmRNAワクチン接種を開始したテキサス大学病院からの報告.この時期は,テキサス州で新規感染者数が急速に増加した時期と重なっている.最初の31日間で,医療者2万3234人のうち59%が1回目の接種を受け,30%が2回目の接種を受けた.開始後,2021年1月28日までの間に,350人(1.5%)が新たにCOVID-19に感染した.感染者の割合はワクチン接種の有無によって異なり,非接種者234/8969人(2.61%),中途接種者112/6144人(1.82%),接種完了者4/8121人(0.05%)であった(P<0.01)(図1A).経時的なPCR陽性者の推移を見ると,1月9日以降,劇的に減少していることが分かる(図1B).また感染により隔離される医療者数を90%以上減少できた.これにより感染者数増加で,最も必要とされるときに労働力が保たれた.→ ワクチン接種の効果は劇的である.接種率を向上させることがいかに重要な課題であることが分かる.
New Engl J Med. March 23, 2021(doi.org/10.1056/NEJMc2102153)
またカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)とロサンゼルス校(UCLA)において,感染のスクリーニングとして定期的にPCR検査を行ったところ,2回目の接種から14日後にPCR陽性反応が出ることは稀であること,逆に14日以内では感染が生じうることが報告された.ワクチン接種率が高い環境であっても,大規模な集団免疫が成立するまでは,公衆衛生上の緩和策(マスク着用,物理的距離,日常的な症状チェック)を継続することが重要である.
New Engl J Med. March 23, 2021(doi.org/10.1056/NEJMc2101927)
◆ワクチン接種を躊躇する理由と接種率向上のための方策.
前述のように医療従事者におけるワクチン接種の結果は,一般市民におけるワクチン接種率向上に貢献することができる.しかし調査によると,医療従事者であっても接種を希望する割合は必ずしも高くない.米国から,医療従事者を対象にワクチン接種の意思を確認し,接種をためらう理由を調査した研究が報告された.対象は1万6292名で,「接種する」が55.3%,「しない」が16.3%,「どちらともいえない」が28.4%であった.患者と接する医療従事者は,しない人よりも「する」と回答する割合が高かった(57.3%対51.4%; P < 0.001).「しない」または「どちらともいえない」と回答した人のほとんど(90.3%)が,ワクチンの未知のリスクに対する懸念を訴え,44.3%が他の人の状況が判明するまで待ちたいと回答し,21.1%が性急なFDAの審査過程を信用していないと回答した.また57.4%が,頭痛や倦怠感など,既知の副作用に対する懸念を挙げていた.一方,調査期間中に接種希望の割合が急激に増加したが,このタイミングは,ワクチンの高い有効性を強調し,接種を推奨するFDA諮問委員会によるライブストリーミングなどのワクチン関連イベントと重なっていた.→ ワクチンに関する正しい情報を,適切に伝えることで接種率を向上することができる.本邦でもさらなる努力が必要である.
JAMA Netw Open. 2021;4(3):e215344.(doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2021.5344)
◆神経後遺症としてBrain fog(脳霧)が多い.
米国ノースウェスタン大学の報告.2020年5月から11月の間に,「Neuro-COVID-19クリニック」に来院した最初の連続100名(PCR陽性50名,陰性で臨床的に診断した50名)を対象とした前方視的研究である.肺炎や低酸素血症による入院歴がないものの,神経症状が6週間以上続いている患者を対象とした.平均年齢は43.2±11.3歳,70%が女性であった.最も頻度の高い併存疾患は,うつ病/不安症(42%)と自己免疫疾患(16%)であった.主な神経学的症状は「Brain fog(脳霧)」(81%),頭痛(68%),しびれ・疼痛(60%),味覚障害(59%),嗅覚障害(55%),筋痛(55%)であった.嗅覚障害のみ,PCR陽性患者において頻度が高かった(74%対36%,p <0.001).頻度の少ないものでは,霧視(30%),耳鳴(29%),運動異常症(5%;ただし自己申告),局所運動/感覚障害(5/2%),構音障害(2%),失調(1%),けいれん発作(1%),嚥下障害(1%),失語症(1%)を認めた.罹病期間と主観的な回復感には相関はなかった(図2.感染前を100%と仮定して,来院時の回復度を評価してもらうと,時間が経過してもほとんど変化がない).QOLに関して認知機能と疲労の領域で低下が認められた.PCR陽性患者は,健常集団と比較して,注意力とワーキングメモリの認知タスクの成績が悪かった(いずれもp<0.01).その他の症候では疲労を85%に認めた.以上より,入院歴のない患者でも,顕著で持続的なbrain fog と疲労を呈し,認知機能とQOLへの障害も生じている.→ テレビのニュースで,患者の80%に脳霧が生じたと報道されていたが,「Neuro-COVID-19クリニック」を受診した患者であることを示さないと誤解を招く.またBrain fogの定義が不明確で,論文では「長引く認知障害を表す口語的な用語」と紹介されている程度であった.
Ann Clin Transl Neurol. Mar 23, 2021 (doi.org/10.1002/acn3.51350)
◆急性期後COVID-19症候群(Post-acute COVID-19 syndrome)の本格的総説.
【急性期後COVID-19症候群の定義】
Nat Med誌に後遺症に関する総説が発表された.まず「急性期後COVID-19症候群」を発症から4週間を経過した状態と定義し,さらに①亜急性期ないし進行中(ongoing);4-12週,②慢性期ないしポストCOVID-19症候群;12週以降の2つに分類している(図3).よってCOVID-19は急性期,亜急性期,慢性期と分類されることになる.また急性期後COVID-19症候群は,呼吸器,血液(凝固異常),心血管,精神神経系,腎,内分泌,消化管・肝胆膵,皮膚科,MIS-Cと症候が多岐に及ぶことから,多職種の協力が不可欠であると強調している.各領域の後遺症の症候,病態,対処について述べられており,自身の専門領域について必読の論文となっている.
【神経後遺症の病態と対応】
神経後遺症の病態としては,ウイルスの直接感染,全身性炎症,神経炎症,微小血管の血栓症,神経変性を推定している.SARS-CoV-2ウイルスの中枢神経感染により後遺症が生じたとする有力な証拠はまだないとしつつも,血液脳関門に影響を与え,神経細胞,グリア細胞,血管系に炎症を引き起こすのではないかと推測している.つまり「慢性的な低レベルの脳内炎症が,持続的な症状に関与している」と考えている.brain fogについては,長期臥床やPTSDなどから発展する可能性や,軽症例では自律神経障害が寄与している可能性を指摘している.最後にICUから退院した患者の20-40%に認知症が発生することを紹介している.
治療は,頭痛などの神経症状に対しては,標準的治療を行う.難治性頭痛には,画像診断や専門医への紹介を行う.認知機能障害を認める場合には神経心理学的評価を行う.不安,うつ,睡眠障害,PTSD,自律神経障害,疲労などの患者を特定するため,スクリーニングツールを用いて評価を行う.
→ 後遺症を持つ患者に対する医療ニーズは今後,増加し続ける.この総説を読むと,COVID-19後遺症外来では,広範な後遺症に対応できる高度な総合診療的スキルが求められることが分かる.
Nat Med. Mar 22, 2021(doi.org/10.1038/s41591-021-01283-z)
◆中枢神経感染を防止する治療標的.
中枢神経への感染は,ウイルス側因子のスパイク蛋白(S)と,宿主側因子の自然免疫によって制御されているが,COVID-19における両者の相互作用については,十分解明されていない.スパイク蛋白は,宿主側のプロテアーゼにより,受容体結合ドメイン(S1)と融合ドメイン(S2)の境界(S1/S2)や,S2内の融合ペプチドに隣接した位置(S2')で蛋白分解が起こる可能性がある.カナダから,神経毒性が強いコロナウイルスHCOV-OC43をSARS-CoV-2ウイルスの代替として用い,中枢神経への感染に関わる因子が報告された.結論としては,S1/S2部位の切断は感染力低下を招くが,S2'部位での切断は感染力増強をもたらす.また1型インターフェロン(IFN1)に関連した自然免疫は,上衣細胞への感染を防御することで,中枢神経への感染防御に重要な役割を果たすことが分かった.つまり中枢神経への感染を防御する治療標的として,スパイク蛋白の切断の制御と,IFN1関連自然免疫の増強が示された.
J Virol. Feb 24, 2021(doi.org/10.1128/JVI.00140-21)
◆切手で見る新型コロナ.
JAMA誌に変わった論文が掲載されていた.フランスの医師による研究で,COVID-19パンデミックに関連して2020年に発行された公式切手を調査した研究である.最も多く描かれていたものは,頻度の高い順に,臨床医(n=21),ウイルス(n=14),科学者(n=12),兵士(n=11),患者(n=7)であった(図4).
JAMA. Mar 22, 2021(doi: 10.1001/jama.2021.2139)
新しい研究の焦点として,①ワクチン接種のリアルワールドでの効果,具体的には医療従事者における検証と,②long COVID,すなわち後遺症をいかに考え対処するか,の2つが挙げられます.①では,ワクチンの劇的な効果が示されましたが,重要なことは「2回の接種後14日経過するまでは感染するリスクがある」ということです.それまでは油断せず,感染防止を継続する必要があります.また医療従事者でもワクチン接種を希望する割合は必ずしも高くないものの,効果と安全性に対する情報を適切に周知すれば,接種率は飛躍的に高まることも示されました.②では発症4週と12週を境界として,急性期,亜急性期,慢性期と分類することが提唱され,後者2つを「急性期後COVID-19症候群」と呼ぶことになりそうです.後遺症に苦しむ患者は増加の一途をたどるものと予想されますが,これに対応できる専門外来の重要性が指摘されています.Nature Medicine誌に発表された後遺症に関する総説は必読ですが,専門外来は,広範な後遺症に対応できる高度な総合診療的スキルが求められる難しい外来になると思いました.
◆医療機関におけるワクチン接種の劇的な効果と注意点.
2020年12月15日,医療者に対し,2種類のmRNAワクチン接種を開始したテキサス大学病院からの報告.この時期は,テキサス州で新規感染者数が急速に増加した時期と重なっている.最初の31日間で,医療者2万3234人のうち59%が1回目の接種を受け,30%が2回目の接種を受けた.開始後,2021年1月28日までの間に,350人(1.5%)が新たにCOVID-19に感染した.感染者の割合はワクチン接種の有無によって異なり,非接種者234/8969人(2.61%),中途接種者112/6144人(1.82%),接種完了者4/8121人(0.05%)であった(P<0.01)(図1A).経時的なPCR陽性者の推移を見ると,1月9日以降,劇的に減少していることが分かる(図1B).また感染により隔離される医療者数を90%以上減少できた.これにより感染者数増加で,最も必要とされるときに労働力が保たれた.→ ワクチン接種の効果は劇的である.接種率を向上させることがいかに重要な課題であることが分かる.
New Engl J Med. March 23, 2021(doi.org/10.1056/NEJMc2102153)
またカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)とロサンゼルス校(UCLA)において,感染のスクリーニングとして定期的にPCR検査を行ったところ,2回目の接種から14日後にPCR陽性反応が出ることは稀であること,逆に14日以内では感染が生じうることが報告された.ワクチン接種率が高い環境であっても,大規模な集団免疫が成立するまでは,公衆衛生上の緩和策(マスク着用,物理的距離,日常的な症状チェック)を継続することが重要である.
New Engl J Med. March 23, 2021(doi.org/10.1056/NEJMc2101927)
◆ワクチン接種を躊躇する理由と接種率向上のための方策.
前述のように医療従事者におけるワクチン接種の結果は,一般市民におけるワクチン接種率向上に貢献することができる.しかし調査によると,医療従事者であっても接種を希望する割合は必ずしも高くない.米国から,医療従事者を対象にワクチン接種の意思を確認し,接種をためらう理由を調査した研究が報告された.対象は1万6292名で,「接種する」が55.3%,「しない」が16.3%,「どちらともいえない」が28.4%であった.患者と接する医療従事者は,しない人よりも「する」と回答する割合が高かった(57.3%対51.4%; P < 0.001).「しない」または「どちらともいえない」と回答した人のほとんど(90.3%)が,ワクチンの未知のリスクに対する懸念を訴え,44.3%が他の人の状況が判明するまで待ちたいと回答し,21.1%が性急なFDAの審査過程を信用していないと回答した.また57.4%が,頭痛や倦怠感など,既知の副作用に対する懸念を挙げていた.一方,調査期間中に接種希望の割合が急激に増加したが,このタイミングは,ワクチンの高い有効性を強調し,接種を推奨するFDA諮問委員会によるライブストリーミングなどのワクチン関連イベントと重なっていた.→ ワクチンに関する正しい情報を,適切に伝えることで接種率を向上することができる.本邦でもさらなる努力が必要である.
JAMA Netw Open. 2021;4(3):e215344.(doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2021.5344)
◆神経後遺症としてBrain fog(脳霧)が多い.
米国ノースウェスタン大学の報告.2020年5月から11月の間に,「Neuro-COVID-19クリニック」に来院した最初の連続100名(PCR陽性50名,陰性で臨床的に診断した50名)を対象とした前方視的研究である.肺炎や低酸素血症による入院歴がないものの,神経症状が6週間以上続いている患者を対象とした.平均年齢は43.2±11.3歳,70%が女性であった.最も頻度の高い併存疾患は,うつ病/不安症(42%)と自己免疫疾患(16%)であった.主な神経学的症状は「Brain fog(脳霧)」(81%),頭痛(68%),しびれ・疼痛(60%),味覚障害(59%),嗅覚障害(55%),筋痛(55%)であった.嗅覚障害のみ,PCR陽性患者において頻度が高かった(74%対36%,p <0.001).頻度の少ないものでは,霧視(30%),耳鳴(29%),運動異常症(5%;ただし自己申告),局所運動/感覚障害(5/2%),構音障害(2%),失調(1%),けいれん発作(1%),嚥下障害(1%),失語症(1%)を認めた.罹病期間と主観的な回復感には相関はなかった(図2.感染前を100%と仮定して,来院時の回復度を評価してもらうと,時間が経過してもほとんど変化がない).QOLに関して認知機能と疲労の領域で低下が認められた.PCR陽性患者は,健常集団と比較して,注意力とワーキングメモリの認知タスクの成績が悪かった(いずれもp<0.01).その他の症候では疲労を85%に認めた.以上より,入院歴のない患者でも,顕著で持続的なbrain fog と疲労を呈し,認知機能とQOLへの障害も生じている.→ テレビのニュースで,患者の80%に脳霧が生じたと報道されていたが,「Neuro-COVID-19クリニック」を受診した患者であることを示さないと誤解を招く.またBrain fogの定義が不明確で,論文では「長引く認知障害を表す口語的な用語」と紹介されている程度であった.
Ann Clin Transl Neurol. Mar 23, 2021 (doi.org/10.1002/acn3.51350)
◆急性期後COVID-19症候群(Post-acute COVID-19 syndrome)の本格的総説.
【急性期後COVID-19症候群の定義】
Nat Med誌に後遺症に関する総説が発表された.まず「急性期後COVID-19症候群」を発症から4週間を経過した状態と定義し,さらに①亜急性期ないし進行中(ongoing);4-12週,②慢性期ないしポストCOVID-19症候群;12週以降の2つに分類している(図3).よってCOVID-19は急性期,亜急性期,慢性期と分類されることになる.また急性期後COVID-19症候群は,呼吸器,血液(凝固異常),心血管,精神神経系,腎,内分泌,消化管・肝胆膵,皮膚科,MIS-Cと症候が多岐に及ぶことから,多職種の協力が不可欠であると強調している.各領域の後遺症の症候,病態,対処について述べられており,自身の専門領域について必読の論文となっている.
【神経後遺症の病態と対応】
神経後遺症の病態としては,ウイルスの直接感染,全身性炎症,神経炎症,微小血管の血栓症,神経変性を推定している.SARS-CoV-2ウイルスの中枢神経感染により後遺症が生じたとする有力な証拠はまだないとしつつも,血液脳関門に影響を与え,神経細胞,グリア細胞,血管系に炎症を引き起こすのではないかと推測している.つまり「慢性的な低レベルの脳内炎症が,持続的な症状に関与している」と考えている.brain fogについては,長期臥床やPTSDなどから発展する可能性や,軽症例では自律神経障害が寄与している可能性を指摘している.最後にICUから退院した患者の20-40%に認知症が発生することを紹介している.
治療は,頭痛などの神経症状に対しては,標準的治療を行う.難治性頭痛には,画像診断や専門医への紹介を行う.認知機能障害を認める場合には神経心理学的評価を行う.不安,うつ,睡眠障害,PTSD,自律神経障害,疲労などの患者を特定するため,スクリーニングツールを用いて評価を行う.
→ 後遺症を持つ患者に対する医療ニーズは今後,増加し続ける.この総説を読むと,COVID-19後遺症外来では,広範な後遺症に対応できる高度な総合診療的スキルが求められることが分かる.
Nat Med. Mar 22, 2021(doi.org/10.1038/s41591-021-01283-z)
◆中枢神経感染を防止する治療標的.
中枢神経への感染は,ウイルス側因子のスパイク蛋白(S)と,宿主側因子の自然免疫によって制御されているが,COVID-19における両者の相互作用については,十分解明されていない.スパイク蛋白は,宿主側のプロテアーゼにより,受容体結合ドメイン(S1)と融合ドメイン(S2)の境界(S1/S2)や,S2内の融合ペプチドに隣接した位置(S2')で蛋白分解が起こる可能性がある.カナダから,神経毒性が強いコロナウイルスHCOV-OC43をSARS-CoV-2ウイルスの代替として用い,中枢神経への感染に関わる因子が報告された.結論としては,S1/S2部位の切断は感染力低下を招くが,S2'部位での切断は感染力増強をもたらす.また1型インターフェロン(IFN1)に関連した自然免疫は,上衣細胞への感染を防御することで,中枢神経への感染防御に重要な役割を果たすことが分かった.つまり中枢神経への感染を防御する治療標的として,スパイク蛋白の切断の制御と,IFN1関連自然免疫の増強が示された.
J Virol. Feb 24, 2021(doi.org/10.1128/JVI.00140-21)
◆切手で見る新型コロナ.
JAMA誌に変わった論文が掲載されていた.フランスの医師による研究で,COVID-19パンデミックに関連して2020年に発行された公式切手を調査した研究である.最も多く描かれていたものは,頻度の高い順に,臨床医(n=21),ウイルス(n=14),科学者(n=12),兵士(n=11),患者(n=7)であった(図4).
JAMA. Mar 22, 2021(doi: 10.1001/jama.2021.2139)