リベラルアーツ研究会の卒業生にお祝いを贈りました.思案した結果,ハンマー(打腱器)にしました.一般の研修医が使用するTaylor型(1)とは異なるものが良いと思い,Déjerine型(10)の色違いを用意しました.「ハンマーにも種類があるのですか!」と驚いていたので,ここぞとばかりにマイハンマーを披露しました(笑).
Taylor型(1-3)は世界最初のモデルで,フィラデルフィアの神経内科医Jhon Madison Taylorが開発したものです.1-2がよく使われているもので,白いゴムヘッドは一般に柔らかく患者さんに痛みが少ないですが,軽く反射が出しにくい欠点があります.一方,黒いゴムヘッドでも柔らかいものもあります.米国で購入した3がそうなのですが,ヘッドが重く,柄も長いので反射が出しやすいモデルです.
斧のような形をした4はドイツのBernhardt Berlinerが開発したBerliner型です.5はベルリンのシャリテ大学で購入したもので,ヘッドが柔らかく重さも適度で,かつ格好良いので回診で一番使用しています(正確にはBerliner型と次に述べるTrömner型の中間のようです).もうひとつのドイツモデルがTrömner 徴候で知られるErnst LO Trömnerが開発したもの(Trömner型)で,6は米国神経学会で購入しました.適度に重く,ピンポイントで叩けるので反射は出しやすいのですが叩かれると痛いです.別なモデル(7.8)も試しましたがやはり痛いです.
Déjerine型はJoseph Jules Déjerineによるフランスモデルで,ヘッドが円筒型です(9, 10).ゴムも柔らかく扱いやすいです.もうひとつのフランスモデルがJoseph François Félix BabinskiによるBabinski型です.Babinski は2つのタイプを開発していて,タイプ1は円盤の方向が固定され(11,12),タイプ2は円盤の向きが可動式で変えられるものです.タイプ1は柄が硬いものとしなるものがあり,上手い先生はこの「しなり」で反射を引き出すのですが,このタイプに慣れない私が叩くと叩くたびに「しなり」の強さが変わって,左右差が比較できなくなかったりします.またタイプ2には伸縮するタイプがあります.
14は日本製の工藤式で,いわゆるゴールデンハンマーです.ヘッドが重く,しかし柔らかいので愛用する脳神経内科医は多いと思います(工藤先生とはどなたかご存知でしょうか?:慶応義塾大学脳神経外科初代教授の工藤達之教授ご考案という情報をいただきました).15,16は中国製で,見たことのない形で,15は柄の先から触覚検査用の硬い糸が出てきます.17-19は子ども用で,17は前述のシャリテ大学で購入しました.子ども用なのに17-18は素材がとても固く,診察には使えません.
どうしてハンマーに関心を持ったかというと,各教室の先輩医師がどこに留学して神経学を学んだかによって,主に用いられるハンマーの種類が決まってくるのだと先輩に伺って興味を持ったことがきっかけだったように思います.
Lanska DJ. The history of reflex hammers. Neurology. 1989;39:1542-9.
Pinto F. A Short History of the Reflex Hammer. Pract Neurol. 2003;3:366-371.
Taylor型(1-3)は世界最初のモデルで,フィラデルフィアの神経内科医Jhon Madison Taylorが開発したものです.1-2がよく使われているもので,白いゴムヘッドは一般に柔らかく患者さんに痛みが少ないですが,軽く反射が出しにくい欠点があります.一方,黒いゴムヘッドでも柔らかいものもあります.米国で購入した3がそうなのですが,ヘッドが重く,柄も長いので反射が出しやすいモデルです.
斧のような形をした4はドイツのBernhardt Berlinerが開発したBerliner型です.5はベルリンのシャリテ大学で購入したもので,ヘッドが柔らかく重さも適度で,かつ格好良いので回診で一番使用しています(正確にはBerliner型と次に述べるTrömner型の中間のようです).もうひとつのドイツモデルがTrömner 徴候で知られるErnst LO Trömnerが開発したもの(Trömner型)で,6は米国神経学会で購入しました.適度に重く,ピンポイントで叩けるので反射は出しやすいのですが叩かれると痛いです.別なモデル(7.8)も試しましたがやはり痛いです.
Déjerine型はJoseph Jules Déjerineによるフランスモデルで,ヘッドが円筒型です(9, 10).ゴムも柔らかく扱いやすいです.もうひとつのフランスモデルがJoseph François Félix BabinskiによるBabinski型です.Babinski は2つのタイプを開発していて,タイプ1は円盤の方向が固定され(11,12),タイプ2は円盤の向きが可動式で変えられるものです.タイプ1は柄が硬いものとしなるものがあり,上手い先生はこの「しなり」で反射を引き出すのですが,このタイプに慣れない私が叩くと叩くたびに「しなり」の強さが変わって,左右差が比較できなくなかったりします.またタイプ2には伸縮するタイプがあります.
14は日本製の工藤式で,いわゆるゴールデンハンマーです.ヘッドが重く,しかし柔らかいので愛用する脳神経内科医は多いと思います(工藤先生とはどなたかご存知でしょうか?:慶応義塾大学脳神経外科初代教授の工藤達之教授ご考案という情報をいただきました).15,16は中国製で,見たことのない形で,15は柄の先から触覚検査用の硬い糸が出てきます.17-19は子ども用で,17は前述のシャリテ大学で購入しました.子ども用なのに17-18は素材がとても固く,診察には使えません.
どうしてハンマーに関心を持ったかというと,各教室の先輩医師がどこに留学して神経学を学んだかによって,主に用いられるハンマーの種類が決まってくるのだと先輩に伺って興味を持ったことがきっかけだったように思います.
Lanska DJ. The history of reflex hammers. Neurology. 1989;39:1542-9.
Pinto F. A Short History of the Reflex Hammer. Pract Neurol. 2003;3:366-371.