1週間ほど前から「タミフル服用で行動異常死」という記事が新聞等で取り上げられ話題になっている.オセルタミビル(商品名タミフル)を服用した患者の中高生2人(14歳と17歳)が異常行動を起こした後に事故死した事例を,タミフルによる副作用として日本小児感染症学会でポスター発表したものがニュース・ソースである.これだけ大々的に報道されるとタミフルによる「行動異常死」を恐れ,その内服を避けたいと考える患者さんがたくさん現れるであろう.さてこの報道を受けて各主治医はタミフルの使用をどう判断するのであろうか?
実はこのポスター発表はweb上で読むことができて(http://npojip.org/sokuho/no59-1.html),著者らの考え方のバックボーンを容易に伺い知ることができる.それを討論することは今回の目的から外れるので言及はしない.しかし大切なことは,著者らの発表をどのように判断すべきか,医療者やマスコミにその準備ができているかということだ.個人的な見解を言えば,わずか2例の報告で,かつインフルエンザ脳炎が基礎にあり,他の薬剤も内服している状況下で,タミフルと異常行動の関連を断定するのは科学的に無理があると思う.また,Pub Medを調べればpost-influenzal psychiatric disorderの報告はタミフルが登場するはるか昔からあることも容易に分かる.患者さん自体が今回の報道の是非について判断することは難しいことであるが,その分,マスコミや医療者はきちんとした科学的判断を下す必要があるだろう.
私に研究を教えてくれた恩師は,自分の研究にしても他者の研究にしてもraw data(何も加工していない生のデータ)をきちんと見ることが大切だと繰り返し言っていた.実際,論文を読む際,若かったころはintroductionとかdiscussionの部分ばかり熱心に読んでいたが,だんだんにmethodとかresultの部分をきっちり読むようになってきた.「批判的な読み方」というものはそういうものであって,極論を言えば著者らの考察など間違っているかもしれないので参考程度にして自分で判断すればよいのだ(論文の中で一番,科学的でないのは考察の部分であると言うこと).いずれにしても「科学的なものの見方ができる」ということは重要なことであって,その近道はEBMの概念をきちんと勉強することなのでしょう.ということで,興味のある方は上記web pageのraw dataを見てはいかが?
実はこのポスター発表はweb上で読むことができて(http://npojip.org/sokuho/no59-1.html),著者らの考え方のバックボーンを容易に伺い知ることができる.それを討論することは今回の目的から外れるので言及はしない.しかし大切なことは,著者らの発表をどのように判断すべきか,医療者やマスコミにその準備ができているかということだ.個人的な見解を言えば,わずか2例の報告で,かつインフルエンザ脳炎が基礎にあり,他の薬剤も内服している状況下で,タミフルと異常行動の関連を断定するのは科学的に無理があると思う.また,Pub Medを調べればpost-influenzal psychiatric disorderの報告はタミフルが登場するはるか昔からあることも容易に分かる.患者さん自体が今回の報道の是非について判断することは難しいことであるが,その分,マスコミや医療者はきちんとした科学的判断を下す必要があるだろう.
私に研究を教えてくれた恩師は,自分の研究にしても他者の研究にしてもraw data(何も加工していない生のデータ)をきちんと見ることが大切だと繰り返し言っていた.実際,論文を読む際,若かったころはintroductionとかdiscussionの部分ばかり熱心に読んでいたが,だんだんにmethodとかresultの部分をきっちり読むようになってきた.「批判的な読み方」というものはそういうものであって,極論を言えば著者らの考察など間違っているかもしれないので参考程度にして自分で判断すればよいのだ(論文の中で一番,科学的でないのは考察の部分であると言うこと).いずれにしても「科学的なものの見方ができる」ということは重要なことであって,その近道はEBMの概念をきちんと勉強することなのでしょう.ということで,興味のある方は上記web pageのraw dataを見てはいかが?
しかし、医療関係者ももっと声をあげるべきでは?
今回の出来事は,学会発表のようなほとんど第3者のチェックが働かないような報告をニュース・ソースとして使用してしまうことの怖さと,データを意図的に考察(解釈)することで,多くの人が簡単に踊らされてしまうという怖さを思い知らされた気がします.
この記事を読み、なんら"raw data"の著者と変わらないと反省させられました。
話は少しそれるのですが,この記事を読んでくださった私の先輩が,確かにmethodやresultは大切だけど,discussionほど著者の力量が問われる部分はないので軽視してはいけない,というようなことをおっしゃっていました.確かに論文を書いていていつも苦労するのはdiscussionとintroductionですね.今も四苦八苦しながら論文書いているところです.
今回、学会のポスター発表にすぎないタミフル脳症(ごめんなさい、悪意はありません。)がこんなに社会的に、医学的ではなく、注目されたのは背景があると思いました。
ご存知と思いますが、現在、日本を含むアジアを中心に鳥インフルエンザの大流行がみられ、新型インフルエンザの発生そして爆発的な大流行が心配されています。日本政府の対応としてタミフル1000万人分の備蓄が計画され、すでに薬剤確保が開始されています。
社会の、そしてマスコミの関心の背景には2つあると考えています。1つは副作用があるような薬を、かなりの国家予算をかけて備蓄するのは正当性があるのか。もう一つは、もし実際に新型インフルエンザが発生した場合(大流行じゃなくても)、おそらく日本中がパニックに陥り、備蓄が枯渇するほどタミフルが乱用されるでしょう。もし本当に指摘された率で副作用が生じるなら、いったい何人のタミフル脳症が生じるのか。
これらの疑問に答える義務が、医学者にはあると思います。非科学的な疑問には、科学的な答えを。
そして、どのような人にどの薬を使ったらどういう副作用が出るか、というのは現在の医学では(ごく一部を除き)判断することはできません。
(人間は一部を除いて近交系ではないので)
SNPSやプロテオミクス、さらにテーラーメード医療などがまことしやかに語られる時代になってはいますが。
現実の医療へフィードバックされるには相当の時間がかかるでしょう。
そして、さらに問題となるのは
「欧米」(ここでは<米>)で認可されても「日本」で認可されるとは限らないこと。
MSやてんかんの治療で被我の差を考えると・・・。
癌治療にしても然り。
タミフルの備蓄は、「感染症」という誰でも罹りうる(もちろん他の病気もそうなんですが)病気に対して、「米」の後追いをするような形のパフォーマンスにしかすぎない気も・・・。
これ以上は論点がずれそうなのでやめておきます。