平成18年度の診療報酬改定で,今月から,発症から180日を上限に医療機関でリハビリテーションを受けることができなくなった.これまで医療機関で,保険診療として無期限に受けられたリハビリテーションが,一部の疾患をのぞき,上限期間を過ぎると打ち切られるというわけだ.患者さんがリハビリを続けたいと思ってもそれができなくなり,また,医師が「必要あり,効果あり」と判断しても,そのような裁量が奪われてしまったわけである.この期間を過ぎると,介護保険を使って,自宅で訪問リハビリを受けるとか,自費で整骨院に通うぐらいしかできない.
診療報酬に疎い私でも,さすがに今回のリハビリテーション改革には疑問を持ち,「まず原文を読もう」というポリシーに則って,「平成18年度の診療報酬改定における主要改定項目」を読んでみた(37ページあたりから記載が始まる).
まず,リハビリテーションは「疾患別体系」へ見直しされるそうである.「理学療法,作業療法,言語聴覚療法を再編し,新たに4つの疾患別リハビリテーション科が新設」された.そして,それぞれ疾患群別に算定日数の上限が定められた.
脳血管疾患等リハビリテーション (180日)
運動器リハビリテーション (150日)
呼吸器リハビリテーション (90日)
心大血管リハビリテーション (150日)
そして以下の文章がつづく.
「長期間にわたって効果が明らかでないリハビリテーションが行われているとの指摘があることから,疾患の特性に応じた標準的な治療期間を踏まえ,長期にわたり継続的にリハビリテーションを行うことが医学的に有用であると認められる一部の疾患等を除き,算定日数に上限を設定する」
「リハビリテーション医療の必要度の高い患者に対し重点的にリハビリテーション医療を提供する観点から,集団療法にかかる評価は廃止し,個別療法のみにかかる評価とする」
・・・・はぁ??「長期間にわたって効果が明らかでないリハビリテーションが行われている」って誰が指摘しているのだろう?「疾患の特性に応じた標準的な治療期間」って誰が決めるのだろう?そして「長期にわたり継続的にリハビリテーションを行うことが医学的に有用であると認められる一部の疾患等を除き」とはどういうことだ?これはわれわれが初めて経験するEBMを治療切捨てのための道具として使用する「EBMの悪用」以外のなにものでもない.リハビリテーションが有効であるというエビデンスのない(もしくは,まだ検討できていない)疾患に対しては,リハビリテーションは打ち切らねばいけないと言っているのである(神経難病もこれに含まれてくる危惧さえある).
そして一番大きな変化は,「PT,OT,STによるリハビリ」から,「4つの疾患群に分類したリハビリ」へという大きなパラダイム・シフトをむりやり起こしたことである(プロ意識を持っているPT,OT,STさんはさぞ悔しかろう).「疾病や傷害の特性に応じた評価体系に変える」そうだが,みんな納得できるのであろうか?リハビリをされているひとであれば,もしくは医療に関わっているものであれば,リハビリに要する治療期間や必要性は,疾患の種類によってのみ決まるという単純なものではなく,個々の状況とか意欲とかさまざまな要素によって決まることは知っているはずだ.もちろん,今回定められた上限で,リハビリテーションが十分なひともたくさんいるだろう.でも私が強調したいのは,上限を定めることによって,リハビリテーション医療を本当に必要としているひとから奪ってはいけないということだ.
そのほかにも,回復期リハビリテーション病棟入院料も見直しされ,「脳血管疾患,脊髄損傷等の発症または手術後2ヶ月以内の状態」が算定対象になるそうだ(現行は3ヶ月以内).つまり急性期病院からの転院が発症から2ヶ月を越えてしまったら,回復期リハビリ病棟でのリハビリの機会が奪われてしまうことになった.幸い回復期リハビリ病院に転院できたとしても,発症後180日までしかリハビリは許されない.つまり嚥下障害による誤嚥性肺炎になんてかかっている暇はないのだ.患者・家族にしても,主治医にしても時間との戦いになるわけだ.
医療ミスがどんどん糾弾される昨今だが,こんな医療政策ミスは放っておいていいのだろうか?国家財政が苦しいときほど,本当に医療やリハビリテーションを理解している人に政策の舵取りを取ってもらいたい.今回の改訂により患者,医療現場が受けるダメージはきわめて大きい.
診療報酬に疎い私でも,さすがに今回のリハビリテーション改革には疑問を持ち,「まず原文を読もう」というポリシーに則って,「平成18年度の診療報酬改定における主要改定項目」を読んでみた(37ページあたりから記載が始まる).
まず,リハビリテーションは「疾患別体系」へ見直しされるそうである.「理学療法,作業療法,言語聴覚療法を再編し,新たに4つの疾患別リハビリテーション科が新設」された.そして,それぞれ疾患群別に算定日数の上限が定められた.
脳血管疾患等リハビリテーション (180日)
運動器リハビリテーション (150日)
呼吸器リハビリテーション (90日)
心大血管リハビリテーション (150日)
そして以下の文章がつづく.
「長期間にわたって効果が明らかでないリハビリテーションが行われているとの指摘があることから,疾患の特性に応じた標準的な治療期間を踏まえ,長期にわたり継続的にリハビリテーションを行うことが医学的に有用であると認められる一部の疾患等を除き,算定日数に上限を設定する」
「リハビリテーション医療の必要度の高い患者に対し重点的にリハビリテーション医療を提供する観点から,集団療法にかかる評価は廃止し,個別療法のみにかかる評価とする」
・・・・はぁ??「長期間にわたって効果が明らかでないリハビリテーションが行われている」って誰が指摘しているのだろう?「疾患の特性に応じた標準的な治療期間」って誰が決めるのだろう?そして「長期にわたり継続的にリハビリテーションを行うことが医学的に有用であると認められる一部の疾患等を除き」とはどういうことだ?これはわれわれが初めて経験するEBMを治療切捨てのための道具として使用する「EBMの悪用」以外のなにものでもない.リハビリテーションが有効であるというエビデンスのない(もしくは,まだ検討できていない)疾患に対しては,リハビリテーションは打ち切らねばいけないと言っているのである(神経難病もこれに含まれてくる危惧さえある).
そして一番大きな変化は,「PT,OT,STによるリハビリ」から,「4つの疾患群に分類したリハビリ」へという大きなパラダイム・シフトをむりやり起こしたことである(プロ意識を持っているPT,OT,STさんはさぞ悔しかろう).「疾病や傷害の特性に応じた評価体系に変える」そうだが,みんな納得できるのであろうか?リハビリをされているひとであれば,もしくは医療に関わっているものであれば,リハビリに要する治療期間や必要性は,疾患の種類によってのみ決まるという単純なものではなく,個々の状況とか意欲とかさまざまな要素によって決まることは知っているはずだ.もちろん,今回定められた上限で,リハビリテーションが十分なひともたくさんいるだろう.でも私が強調したいのは,上限を定めることによって,リハビリテーション医療を本当に必要としているひとから奪ってはいけないということだ.
そのほかにも,回復期リハビリテーション病棟入院料も見直しされ,「脳血管疾患,脊髄損傷等の発症または手術後2ヶ月以内の状態」が算定対象になるそうだ(現行は3ヶ月以内).つまり急性期病院からの転院が発症から2ヶ月を越えてしまったら,回復期リハビリ病棟でのリハビリの機会が奪われてしまうことになった.幸い回復期リハビリ病院に転院できたとしても,発症後180日までしかリハビリは許されない.つまり嚥下障害による誤嚥性肺炎になんてかかっている暇はないのだ.患者・家族にしても,主治医にしても時間との戦いになるわけだ.
医療ミスがどんどん糾弾される昨今だが,こんな医療政策ミスは放っておいていいのだろうか?国家財政が苦しいときほど,本当に医療やリハビリテーションを理解している人に政策の舵取りを取ってもらいたい.今回の改訂により患者,医療現場が受けるダメージはきわめて大きい.
私も今回の疾患群別リハビリはうまく行くような気が全然しません.でも「悪法も法なり」なので,現場はこれから本当に大変だと思います.少しでも早く良い方向に軌道修正できるよう,患者,医療従事者,みんなで声をあげていかねばならないと思います.
(今回のリハビリ改悪に対し,何かムーブメントは始まっているのでしょうか?)
http://blog.goo.ne.jp/craseedblog
ここは情報が豊富です.
CRASEED Rehablog を拝見しましたが,とても勉強になりました.今回のリハビリ打ち切り問題に関して,署名活動も計画中のようですので,私も賛同したいと考えております.
今年3月まで週1回でリハビリを受けていましたが、何の前触れもなく4月に入って突然リハビリをうちきられました。
病院に理由を尋ねましたが、制度が変わったからの一点張りでしまいには今の政治家を選んだ国民が悪い!とあたかも私たちの責任にさせられてしまいリハビリはおろか診察も打ち切られました。
しかたないので別の病院のケースワーカーさんに調べてもらったところ医療ポイントの改正もあり、それが原因ですべて打ち切られたとの事でした。
その後、私の体調はどうなったかはお察しのとうりです。
多分、私のような患者さんは、他にも多くおられるとおもいます。
10月からの自立支援法完全実施で1億の日本国民ほとんどがリハビリ難民になるでしょう。