これまでの遺伝研究から加齢を制御する機序は解明されつつあるが,加齢を遅らせる薬の同定にはほとんど進展がない.今回,神経内科医に馴染みの深い抗痙攣薬であるethosuximide,trimethadioneならびに3,3-diethyl-2-pyrrolidinone(DEABL;この薬はヒトには使用されない)が,線虫(C. elegans)の平均寿命および最長寿命を延長させることが報告された.
まずethosuximideが線虫の寿命を17%延長することが発見された(平均16.7日の寿命が19.6日に延長).この効果には至適濃度があり,高濃度ではむしろ寿命は短縮した.この血中濃度はヒトに使用する濃度とほぼ同程度であった.さらに薬剤は発生初期に有効なのではなく,成虫になってから寿命延長効果をもたらすこと,ならびに線虫のactivityが高い期間(具体的には速く動いたり,飲み込みができたりする期間らしい)が有意に延長することも判明した.
つぎにethosuximideはsmall heterocyclic ring構造をとる化合物であることから,類似の構造式を持つ化合物であるtrimethadione,DEABLならびにsuccinimideが寿命延長効果を持つか検討された.結果として,抗痙攣薬としての作用を持たないsuccinimideを除き,寿命延長効果が確認された.とくにtrimethadioneの寿命延長効果が大きく,平均および最長寿命は,それぞれ47%および57%延長した.以上の結果は,ethosuximide,trimethadione,DEABLの3剤は,抗痙攣作用機序に関連した何らかの作用によって寿命を延長させる可能性が示唆された.抗痙攣薬は脊椎動物では神経活動に影響を及ぼすことから線虫においても同様の効果を持つかの検討が行われたが,結論として,これらの薬剤は体動を制御する神経・筋間のシナプス伝導を促進することも判明した.以上を考え合わせると,これらの化合物の寿命延長作用は抗痙攣活性と関連していること,ならびに,加齢の制御に神経活動が関与していることが示唆された.
ethosuximide はT-型電位依存性Caチャネル抑制作用があるため,その辺に何か機序を解明するヒントが隠れているのかもしれない.欠神発作を呈する患者さんでethosuximideを生涯のみ続けることがあるかは分からないが,実際にヒトでも効果があるのか知りたいものである.もちろん長生きすることが本当に素晴らしいものであるかは分からないが・・・
Science 307; 258-262, 2005
まずethosuximideが線虫の寿命を17%延長することが発見された(平均16.7日の寿命が19.6日に延長).この効果には至適濃度があり,高濃度ではむしろ寿命は短縮した.この血中濃度はヒトに使用する濃度とほぼ同程度であった.さらに薬剤は発生初期に有効なのではなく,成虫になってから寿命延長効果をもたらすこと,ならびに線虫のactivityが高い期間(具体的には速く動いたり,飲み込みができたりする期間らしい)が有意に延長することも判明した.
つぎにethosuximideはsmall heterocyclic ring構造をとる化合物であることから,類似の構造式を持つ化合物であるtrimethadione,DEABLならびにsuccinimideが寿命延長効果を持つか検討された.結果として,抗痙攣薬としての作用を持たないsuccinimideを除き,寿命延長効果が確認された.とくにtrimethadioneの寿命延長効果が大きく,平均および最長寿命は,それぞれ47%および57%延長した.以上の結果は,ethosuximide,trimethadione,DEABLの3剤は,抗痙攣作用機序に関連した何らかの作用によって寿命を延長させる可能性が示唆された.抗痙攣薬は脊椎動物では神経活動に影響を及ぼすことから線虫においても同様の効果を持つかの検討が行われたが,結論として,これらの薬剤は体動を制御する神経・筋間のシナプス伝導を促進することも判明した.以上を考え合わせると,これらの化合物の寿命延長作用は抗痙攣活性と関連していること,ならびに,加齢の制御に神経活動が関与していることが示唆された.
ethosuximide はT-型電位依存性Caチャネル抑制作用があるため,その辺に何か機序を解明するヒントが隠れているのかもしれない.欠神発作を呈する患者さんでethosuximideを生涯のみ続けることがあるかは分からないが,実際にヒトでも効果があるのか知りたいものである.もちろん長生きすることが本当に素晴らしいものであるかは分からないが・・・
Science 307; 258-262, 2005